大橋ちっぽけは誰のために歌い、何のために音を奏でるのか ワンマンツアー『New Perspective』を観て

毎年、年末の恒例企画としてワンマンライブを開催している大橋ちっぽけ。今年は、『大橋ちっぽけワンマンツアー2025「New Perspective」』として開催された。本稿では、11月7日に行われた渋谷CLUB QUATTRO公演の模様をレポートしていく。

幕開けを飾ったのは、今回のツアーのタイトルを冠した「New Perspective」。大胆にオートチューンを施したデジタルクワイア調の歌だ。その切実な響きに冒頭からグッと引き込まれる。「こんばんは、大橋ちっぽけです。よろしくお願いします!」という挨拶を挟み、「Getting Over You」へ。快活に弾けるバンドサウンド、伸びやかに響き渡る歌によって、一気に会場に晴れやかな景色が広がっていき、観客は手を左右にウェーブさせながら大橋のライブパフォーマンスに彩りを添えていく。

続いて、「言えない」へ。大橋は、「渋谷、いけますか!」「まだまだいけますか!」と何度も力強く呼びかけ、観客は高く手を上げたり、歓声を重ねたりしながら彼の熱い想いに応える。まだ序盤に過ぎないが、会場にはすでにライブハウスならではの高揚感と一体感が満ち溢れていた。大橋は、“新しい視点”という意味を持つツアータイトル『New Perspective』の話題を挙げつつ、今まで見せたことのない新しい一面を今回のライブを通して見せると宣言する。そして、「誰かのとなり」へ繋ぐ。イントロが始まるタイミングで、大橋は「次の曲、みんなでクラップしたいです」と告げたが、その言葉を言い終わる前から自然とクラップが巻き起こり、彼はすかさず「ありがとう」と感謝を伝えた。会場全体に熱く温かなバイブスがどんどん高まっていくなか、「人間ですから」、そして昨年デモを発表した「自己犠牲」を披露する。この曲を歌い終えた大橋は、「そう遠くないうちにリリースできたらと思っている」と告げた。

会場のあまりの熱さを受け、このタイミングで大橋は予定より早めにジャケットを脱いだ。そして、9月にリリースしたアコースティックEP『Youth』から「嫌でもね (Acoustic ver.)」を披露。通常のアレンジよりもグッと音数が絞られていて、大橋の歌声が、よりダイレクトに、より親密に響く。続く、清 竜人のカバー「痛いよ」も同様で、この曲が体現する切実な感傷が深く胸を締め付ける。

ここで、スペシャルゲストとしてとたが登場し、ふたりで一緒に「寂しくなるよ feat.とた (Acoustic ver.)」を披露。サビにおけるふたりの歌声のハーモニーがとても美しく、中盤からの転調を経て、さらに歌の熱がグッと高まっていく。ラストのロングトーンも圧巻だった。大橋はとたに向けて「いい声でいらっしゃる」と伝え、彼女は「こちらの台詞です」「ずっと前から観させていただいていたので、こうやって一緒にステージに立てて嬉しいです」と返した。それに対して大橋は、先ほど披露したコラボ曲について、「とたさんが歌ってくれて、(もとの曲に)新しい視点を入れてくれた」「(もとの曲の)新しい魅力に気づけた」と語っていた。まさに、『New Perspective』を象徴する一幕だったように思う。


続けて、&TEAMに歌詞を提供した楽曲「雪明かり」のセルフカバーを、エレキギターをかき鳴らしながら披露する。この大きなサプライズを受け、並々ならぬ熱気が会場を満たしていく。大橋は、&TEAMの物語に寄り添えるように書いた歌詞ではありつつ、自分の人生にもリンクするものがあると前置きしたうえで、「今、この景色を見ながらこの曲を歌えてよかった」と感慨深げに告げた。そして、時に自分の強みやアイデンティティが何かわからなくなることがあると赤裸々に打ち明け、「今日、この光景を見たらいろいろ頑張ってきたことは無駄じゃなかったと思えます」「みんなの視点があって、初めて大橋ちっぽけとして音楽活動ができている」「みんなの視線を逸させないように、目を逸らす暇がないくらい、これからもやっていけたら」と語り、「みんなのために歌います」という言葉を添えて「言ってよ」を披露した。まっすぐフロアを指差しながら〈君のためなら〉と力強く歌い上げたシーンが特に忘れられない。ここから一気にクライマックスへと続いていく。
「みんな、まだまだいけますか!」「まだまだ盛り上がっていきましょう」と呼びかけながら「ソリスト」「アイラブユーにはアイラブユー」へ。そして、アコギに持ち替え「常緑」を披露。「みんな、歌える?」という大橋の問いかけを受けて、この日いちばんのシンガロングが巻き起こる。本編ラストは、「この曲が一歩踏み出せずに悩んでいる人の背中を押す曲になったらいいな」という言葉を添えて届けられた「Goodbye My Youth」。アンコールでは「鏡写し」を歌い、「大橋ちっぽけとこれからも一緒に歩んでいってください。」と呼びかけて、真のラストナンバーとして「主人公」を披露した。あまりにも感動的な大団円。最後に大橋は、「みんながいるから頑張れる。みんなのためなら何だってできる」「また会いましょう」と告げて、ステージを去っていった。


































