SUPER BEAVERは伸びやかに飛翔し続けるーー『Acoustic Album 1』に刻んだ“産み直す”挑戦と進化の証明

SUPER BEAVERが12月3日、バンドにとって初めてとなるアコースティックアルバム『Acoustic Album 1』をリリースした。先行配信された「人として(AA1)」をはじめ、彼らのライブでも欠かせない名曲たちを中心にセレクトされた全14曲が、新たなアレンジとともに響いてくる。歌詞やメロディも含めて、彼らの楽曲が持つ力が真っ直ぐに伝わってくるような、とても新鮮で、しかしある意味でとても“SUPER BEAVERらしい”アルバムである。
結成20周年イヤーとなった2025年を締めくくる上でも、また、SUPER BEAVERというバンドがここまでどのように音楽と向き合い、鳴らし続けてきたのかを改めて知る上でも、このアルバムが持つ意味はとても大きいと思う。
“今の自分たち”を産み直した『Acoustic Album 1』の核心
アニバーサリーイヤーに出す1枚としては、それこそ“普通”のベストアルバムを作るという選択肢もあり得ただろうし、もしかするとそういう方法のほうが定石かもしれない。だが、SUPER BEAVERはそれをよしとしなかった。というよりも、そうやって過去の音源をコンパイルしただけでは伝えられない何かが、そこにはあったのではないかと思う。これまで作り続けてきた楽曲たちを、今の自分たちだからこそできるやり方でもう一度“産み直す”ということ。その行為に真っ直ぐに向かっていくという姿勢こそが、SUPER BEAVERの生き様を象徴しているように思える。
その証拠に、この『Acoustic Album 1』はいわゆるアコースティックアルバムという言葉から想像される、アンプラグドでオーガニックで落ち着いた、という印象からはかけ離れたものになっている。もちろん、「ひたむき」や「値千金」のようにアコースティックギターやピアノなどでメロウにアレンジされた楽曲もたくさんあるし、全体としていつものライブでドカンと爆音をぶちかましているロックバンドとしてのSUPER BEAVERとは違う、柔らかな音像が中心となっているのは間違いない。だが一方で、グルーヴィーなファンクナンバーと化した「Q&A」や、今やバンドにとって重要なパートナーとなったアレンジャー/キーボーディストの河野圭の手によって大胆にリニューアルされた「それでも世界が目を覚ますのなら」など、ここに収められた曲たちはどれもとても自由に作り直され、それぞれの描く風景を大きく広げているのだ。
「ひたむき」や「グラデーション」、「美しい日」といった曲たちは今回のリアレンジによって楽曲の持つ温度やメッセージがより引き出されて胸に迫るものになっているし、最後に収められた「アイラヴユー」に至っては、もしかするとオリジナルよりもライブバンドとしてのSUPER BEAVERをよく表しているようにすら感じる。つまり、オリジナルがあってそれを“作り変える”というよりも、歌詞とメロディという楽曲の根幹に再度真正面から向き合って、現時点で最も正しいと思える形でクリエイトすることによって、このアルバムは作られているのである。先ほど筆者が“産み直す”という言葉を使ったのはそのためだ。これは決して過去の楽曲を掘り起こすような作品でも、単に新たな切り口で提示するだけの作品でもない。今、2025年のSUPER BEAVERの姿形を、慣れ親しんだ楽曲たちを素材にしながらイチから形作っていくという、極めて現在進行形のアルバムなのだ。
ではその、「今のSUPER BEAVERの姿形」とは何か。それを考える上で、改めて今年の彼らの活動を振り返ってみよう。
年明けのアコースティックツアー『アコースティックのラクダ 2025 ~突然トッツゼン~』から始まったアニバーサリーイヤーは、さまざまなイベントに彩られていた。たとえば、4月5日と6日にさいたまスーパーアリーナで行われた自主企画対バンイベント『現場至上主義 2025』では、それぞれの日でTHE YELLOW MONKEYとUVERworldという百戦錬磨のバンドたちを前に、堂々と自分たちのライブを見せつけてみせた。また、ライブハウスツアーを挟んで5月には東京・国立代々木競技場 第一体育館で2日間のライブを開催。1日目はかつて近隣の代々木公園野外ステージで行おうとしていたフリーライブ(新型コロナウィルスの影響で中止)のリベンジとしての意味合いももった無料ライブ、2日目はFC会員限定ライブとして、バンドを支え続けてきた人たちと歓びを分かち合った。


そうしたライブと並行しながら、もちろんリリースも精力的に展開。ドラマ『バニラな毎日』(NHK総合)の主題歌と挿入歌として書かれた「涙の正体」「片想い」を皮切りに、映画『金子差入店』の主題歌となった「まなざし」、そして『めざましテレビ』(フジテレビ系)のテーマソングとなった「主人公」と、それぞれの番組や作品にこれまで以上に深く根ざしながら生み出した楽曲を世に送り出してきた。
特に「主人公」について言えば、柳沢亮太(Gt)の書いた歌詞は“朝の番組のテーマソング”というお題と、自分自身が日々生きる中で感じる思いを闘わせながら大きく一歩踏み込んだ、とても重要で感動的な1曲となった。現在のライブにおいてこの曲が放つ存在感を見ても、その意味合いのほどはわかるだろう。























