flumpool、“リアルタイム”で制作過程を見せる挑戦 「スノウゴースト」誕生の裏側を投稿動画と共に振り返る

flumpoolが、12月3日に新曲「スノウゴースト」をデジタルリリースした。「久しぶりに冬ソングを作ってみたいな!!!!」という山村隆太(Vo/Gt)のX投稿を起点とし、曲が完成するまでの日々をTikTokで連続投稿。制作プロセスに密着したドキュメンタリー映像をファンがリアルタイムで見守る中、デモ音源の初視聴リアクションからレコーディングでマイク選びにこだわる姿まで、メンバー全員が包み隠さず素の姿をさらけ出している。
強さと切なさを兼ね備えた“熱いウインターバラード”はどのように生まれ、完成に至ったのか? 山村と阪井一生(Gt)へのインタビューで、投稿された動画をひとつずつ振り返りながら、さらなる裏話を掘り下げていく。(大前多恵)
リアルタイムで裏側を見せていくドキュメンタリー動画
――山村さんが、TikTokで「ウィンターソング制作に向けた日々」と題した連続投稿をされてきました。「スノウゴースト」完成までの裏側をファンの皆さんが見守っていくという、面白い試みですよね。山村さん主導の企画だったんですか?
山村隆太(以下、山村):そうですね。3月にリリースしたオリジナルアルバム『Shape the water』からの流れで、「今年は新曲を冬に出したい」という気持ちがあったんです。アルバムは、自分たちの命であったり、通り過ぎてしまうものだったりを水に譬えて、形のないものを可視化するというのがコンセプトでした。そうやって曲として型取るのも大事だけど、裏側にある温度感もファンの人たちと一緒に感じて、自分たちが今持っている熱量をちゃんと目に見えるようにできたらいいな、とも思っていて。いつも通り普通に曲を作ってもよかったんですけど、そういう流れから考えていった企画でしたね。
――ドキュメンタリー動画は、たとえば曲にダメ出しをされる場面など、「え? こんなところまで見せてしまうんだ!?」と驚く内容でした。戸惑いはありませんでしたか?
阪井一生(以下、阪井):いやあ、面白かったですね。僕もファンなら裏側のほうが見たいと思うし、逆に僕らも見てほしいと思ったぐらいだし。
――そうなんですね。小倉誠司(Dr)さんも尼川元気(Ba)さんも、 レコーディング中の素の姿をさらけ出していて、貴重な映像でした。
山村:パッケージとして曲がリリースされた後にドキュメンタリー映像が公開される、というのはライブとかでもこれまであったんですけど、こうやってリアルタイムで裏側を見せて、ファンの人たちと一緒の時間を刻んでいく、という感じは初めてでしたね。
――早速ですが、投稿動画をep.1から振り返っていきます。「久しぶりに冬ソング作ってみたいな!!!!」いうXでの投稿を受けて、まずは阪井さんが山村さんにデモを聴かせる場面ですね。
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.1 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
山村:Xの投稿から1週間後ぐらいに3曲仕上げてきてくれて、それを僕が聴かせてもらうという回でした。曲を作り始めたのは夏だったので、この滾っているものを形にして、年末に振り返るタイミングで「今年1年、こういうことがあったよね」と思える、そういう痕跡を残したいな、と。そこから、冬をテーマにそういう曲を作れたらいいな、と思い付いて、Xで投稿するのと同時に一生に依頼をしたんです。
――阪井さんに対して、冬ソングというテーマ以外に「こういう感じがいい」という具体的なリクエストはあったんですか?
阪井:当時はなかったです。「冬ソングを作ろう」ぐらいの感じから始まって。
山村:やっぱり僕らには共通認識があるので、そこはそんなに言わんかったよな、言葉として。
――その後、各曲の紹介動画が続いていきます。ep.2は仮タイトル「シグナル」。「切ない系王道バラード」というキャプションが付いております。これ、歌っていらっしゃるのは阪井さんですか?
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.2 - #ウインターソング #デモ ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
阪井:はい、僕ですね。
山村:「エンジェルボイス」(笑)。
――ちょっと山村さんの声に似ていませんか?
阪井:そうですか? あんまり言われないですけどね。
山村:初めて言われました。
阪井:王道の曲は1曲欲しいな、と思って作ったのがこの曲でした。動画がアップされるのがわかっていたから、デモだけど本気を出して、実際のボーカルレコーディングぐらい何回も歌い直しました(笑)。
――山村さんは「シグナル」を聴かれてどんな印象を受けましたか?
山村:めっちゃいい曲だなと思いました。冬というテーマの中でも、この曲からは、ひとりでいるような、心の中で抱えているような切なさとか寂しさが曲の中から感じられて。でも、ちゃんと熱量もある。それもまたひとつの冬の景色だなと思いました。
――ep.3の仮タイトル「100 mile」は、「あったかいポップメロディー」。
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.3 - #ウインターソング #デモ ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
阪井:切ないというよりは、この曲はもう少し軽快な、暖かい感じというか。これまで、そういうバラードはシングルとしてはあまりなかったので、こういうパターンもテイストとしてはありかな、と。これも何回も歌い直しました(笑)。
山村:この曲はかわいらしいメロディで、アットホームな印象でしたね。クリスマスであったり、寒いからこそ人の体温に愛着が湧いてくる、みたいなイメージが湧いてきて。これも冬の一面だなと。あと、flumpoolっぽいというか、flumpoolの陽の部分を感じる曲だなとも思いましたね。
――ep.4は仮タイトル「風」、「エモめロックバラード」と表現されています。阪井さんとしては、この曲は変化球だったんでしょうか?
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.4 - #ウインターソング #デモ ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
阪井:マイナー調のバラードで、明るいというよりは暗め。「風」が陽だったらこれは陰の部分というか。そういうバラードで冬の曲を歌うことは今までなかったので、僕としては「こういうのもありかな?」と思いつつ書いてみた曲でしたね。
山村:「シグナル」の切なさとはまた違って、スケール感が大きいな、と。この大都会の中にいても感じる孤独というか、そういった冬の寂しさみたいなものがあるなと思いました。
――デモ曲の仮タイトルは、いつも阪井さんが付けていらっしゃるんですか?
阪井:はい。いつもめっちゃ適当です(笑)。その時に目の前にあるものの名前とかを付けていて、曲に寄り添ってるタイトルとかではまったくないです。
山村:もうちょっとコンセプトというか、テーマみたいなものを正直乗せてほしいじゃないですか?
阪井:その時にコールスロー食べてたら、仮タイトル「コールスロー」とかね。
山村:そんなタイトルつけるくらいなら「仮歌何番」にしろよ(笑)!
阪井:でも、これでもまともになったほうです。今はまだちょっとカッコつけてるほう。
――(笑)。今回は動画投稿されるのを意識した、他所行きの仮タイトルだった?
阪井:それはちょっとありますね。いつも通りだったら多分もっと変なタイトルになっています。
――山村さんは歌詞を書かれる時に、阪井さんの付けた仮タイトルからインスピレーションを受けることってあるんですか?
山村:ないですね。受けないっていうか、受けたくない(笑)。そこから影響を受けても何の建設的な面もないので、「誰も喜ばないだろうな」って。それぐらい適当に付けていると思っていたので。ただ意外と、歌詞を書いていったら似てくるみたいなことがあるんですよ。『Shape the water』の時にもあったんだよな、「仮タイトルとめっちゃ世界観が似てる」みたいな。どの曲やったかな?
阪井:あの辺は結構カッコいい仮タイトルを付けてたからなあ。大体英語だけど、自分は意味わかってなくて、とりあえずカッコよさそうな英単語を載せるだけで。
山村:そういえば「シグナル」も意味わかってなかったよな。それはわかれよ! っていう(笑)。ただ、無意識にメロディにハマる音の響きを選んだら「意外と(仮タイトルと)似てるんかな?」という、面白い現象はありましたね。
――実は深層心理の部分で影響を受けているんでしょうかね? あるいは、阪井さんが「適当」と言いつつも、実は音が内包しているものを仮タイトルで表現しているのか。
阪井:それが感覚でできてたなら、すごいじゃないですか!
山村:天才(笑)!
――3曲とも聴かれて、山村さんは全部いいと絶賛されていましたね。
山村:めっちゃいい。どれもシングル級だと思うし、さすがだなと思いました。
――阪井さんは、それを聞いていかがでしたか? 後に覆されるわけですが……。
阪井:僕もここで決まると思ってたんですけどねえ……さすがに3曲も書いたので。僕自身「どれでもいいかな」と思ったから、逆に皆が好きなのを選んでもらえたらって。
山村:たしかに、めちゃくちゃいいですよ。切ないメロディとか、こういうバラード系は一生はほんまに昔から得意だったよね。本当に美しいメロディ。
――3曲のデモが出揃って、ep.5では尼川さんと小倉さんが各曲を初聴きされている様子が紹介されていました。尼川さんは送ったデモを「聴いてない」と。
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.5 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
山村&阪井:そういうやつなんです(笑)。
阪井:でも、カメラが回ってるからそう言っただけで、ちゃんと聴いてたと思いますよ。本当は誰よりも聴いていたと思います。
――照れ隠しか、そのほうが面白くなる、というサービス精神ですかね。
阪井:ちゃんと聴いてくれていただけに、的確にコメントしてくれていましたね。
――いつもこういうふうにメンバーの皆さんにデモを聴かせるんですか?
阪井:そうですね。曲をデータで送ったりもしますし。
――バンドの良好な雰囲気が伝わってくる動画でした。ではep.6へ。山村さんが阪井さんに電話をされて、なんと3曲をボツにして「もうワントライしてほしい」と。
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.6 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
山村:ほんまに、僕はそんなこと言いたくなかったんですけど。
阪井:いや! 動画用のネタっぽい感じに取られるかもしれないですけど、これが毎回ですからね。「ええやん、ええやん!」って言ってたのに、「ちょっと、もう1曲」って。最近特に言うようになりました。
山村:いやいや。でもすごいよ、一生は言えば言うほどいい曲が出てくる。
阪井:このパターン、よくないですよ。「これもええけど、もう1回言っとこう」みたいな。毎回絶対言うやん? これから1曲目は駄作みたいなデモを出そう(笑)。
山村:あはは! デモは3曲ともよかったんですよ。でも、『Shape the water』で始まった今年の流れの最後を締め括るとしたら、この中にはないなって。冬って、雪もそうですけどパッと消えちゃうじゃないですか? 僕たちの命もそうだし、消えちゃうからこそ今を一生懸命生きたい、みたいな。消えちゃうからこそ輝く瞬間があるとしたら、燃え尽きてしまうぐらいの、もっと高い熱量があったほうが実は冬曲には似合うんじゃないかな? と、僕は心の中でどこかで思っていて。3曲ともものすごく美しいんですけど、もう少し荒さというか、雑さというか……。
――パッションが欲しい、という?
山村:そうですね。そういうものがもっと前に出ている感じがあればいいな、と思ったんですよね。「もしそのパターンならどうなるか?」っていうのを「お願いします」と。
阪井:だったら初めからそう言ってくれたらよかったのに。でも、「冬の曲作って」みたいな言い方で。こんなん後出しやわ(笑)。
――デモを聴くことによって、山村さんの中でもイメージが明確になっていくんでしょうね。
山村:そうなんです。一生は僕の中から心を引き出してくれるんですよ。心が型取られていくんです(笑)。
――“Shape”されていく、と(笑)。その追加オファーを受けて、ep.7では阪井さんが「スノウゴースト」の元となる仮歌を弾き語りで披露。「4曲目を作った」とは言わずに突如披露する、という感じだったんですね。
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.7 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
山村:一生あるあるだよね、自信がある時の。こういうふうにサラッと歌って新曲とは言わないパターン。
阪井:皆に早く聴いてほしい、という。
山村:「星に願いを」もそうでした。サラッと歌っていて、それを聴いて皆が「ええやん」ってなる。
阪井:「ええ曲やん!」って言われる待ちのヤツね(笑)。
山村:それで、僕らはまんまと食いつかされるんです。一生はメンバーの第一印象を意外と探る時あるよな。
阪井:割と僕は個々に聴かせますね。全員に一気に聴かせるよりも、そのほうが本音を聞けるので。こっそり個人に送って「こんな曲できてんけど」って。それが楽しいです。



















