flumpool、“リアルタイム”で制作過程を見せる挑戦 「スノウゴースト」誕生の裏側を投稿動画と共に振り返る

「ファンの人たちの温度も取り入れられているような」制作に
――ep.8はメンバー全員でのミーティング風景でした。3曲に対するファンの方たちからの感想を受けて、和気藹々と話し合っていましたね。
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.8 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
阪井:皆からもらったコメントを読みながらね。
山村:ファンの人たちの声を3曲並べて、デモ段階で聴けるのがすごく新鮮でした。初めての試みですし、一緒に作っているというか、ファンの人たちの温度も取り入れられているような気がして。
――アーティストとしては、途中段階のものを世に出すのは嫌だな、という感覚もあるんじゃないかな? と思うんです。躊躇いはなかったですか?
山村:たしかに、基本的にはあまり皆やらないですね。本来ならflumpoolという自分たちの“部屋”の中で、4人で作り上げていくのが音楽で、別にそこに対して5人目のメンバーとしてファンの人がいる、というわけでもないんですけど。やっぱり最終的には自分たちの決定、意志、選択が大事だなとは思うので。ただ、やっぱりファンの皆が“部屋”の中にちゃんといてくれるというか、見守っていてくれる呼吸感を感じながら、というか。
――オブザーバー的な感じですかね?
山村:そうですね、そういう気配みたいなものがあったので、作り方としてはまたいつもとは違いましたね。
――心強いところもありましたか?
山村:うん、楽しかったですね、そういう気配がありながら作るのは。(制作は)孤独な作業だったりするので。
阪井:僕はこういうの結構好きなので、むしろ皆にデモ段階でも聴いてもらいたいぐらいなんです。反応をいち早く知りたい。
山村:珍しいパターンだよね、普通は皆嫌がるやん?
阪井:そうだね。でも、過程を見てもらうと、「より曲も入ってきやすいかな?」と。僕自身そういうのはやっていて楽しいし、好きではあります。
――へぇ! 意外でした。ep.9では、レコーディング現場へ。小倉さんに「ここはスネアよりもキックのほうがいい」みたいな細かいディレクションをされていました。お二人がやり取りを重ね、小倉さんは受けた指示を譜面に鉛筆で書き込むなど、なかなか見られない貴重な場面が満載でしたね。
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.9 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
阪井:そうですね。アレンジがしっかりまとまっている時もあるんですけど、「現場でやってみよう」みたいな時は、いろいろとレコーディングの中で試して、「ちょっとこういうパターンで試してみよう」というやり取りをすることもあります。
――阪井さんのアコースティックギターレコーディングと、ストリングスのレコーディングも。予定外のヴァイオリンソロをサポートメンバーの吉田翔平さんが弾き始める、というハプニングもありました。
阪井:急にレコーディングでイントロを弾き出したから「どういうこと?!」って。多分ほんまに間違っただけだと思います(笑)。
山村:照れ隠しでな。翔平ちゃんは面白い。いつもお世話になってます。
――長いお付き合いですもんね。サポートメンバーの方との距離感も伝わってくる動画でした。ではep.10ですが、山村さんがマイク選びにこだわるレコーディングシーンです。マイク選びはいつもあのような感じなんですか?
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.10 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
山村:そうですね、いつもいろんなマイクを試しています。
阪井:曲によって、という感じですかね。
――この曲ではMANLEYを初めてチョイスしたんですよね。
阪井:はい、レコーディングで使うのは初でしたね。
山村:半年前ぐらいに楽器屋さんに皆でマイク選びに行った時に、「MANLEYいいな」となって、今回試してみました。良い悪いではなくて、この曲により合うという意味で選んだんです。こういうバラードには、声の温かい部分がより押し出されてくれるMANLEYがいいな、とか。もうひとつのPelusoというマイクは言葉の切れがよくなったりするので、アップテンポだったり言葉数の多い曲とかで使ったりするといいな、とか考えたりしますね。
――Pelusoのほうがキラキラした感じで、MANLEYのほうがちょっと音が太い、と。
山村:声にもよりますけどね。僕の声の中ではこの部分を引き出してくれる、みたいなことはあります。これが一生になると全然違う印象になる、とかいうのもあるんですよ。
――歌い手の個性によってどこが際立つかも変わってくる、と。相性を見定めて選んでいくわけですね。現時点(※11月中旬)での最新動画、ep.11はベースレコーディングをされている尼川さん、そして阪井さんがエレキギターをレコーディングされています。尼川さんのレコーディングは、こういう感じでディレクションを?
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.11 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
阪井:いつもこんな感じです。
――ブースには入らないんですか?
阪井:スタジオへ行って普通に録る時もありますし、その曲によりけりですね。
――阪井さんから弾き直しを指示されて、尼川さんが泣いている姿も(笑)。
阪井:(笑)。ダメ出ししてますね。
山村:元気はどちらかと言うと衝動的な、ライブとか一発録りが好きなんです。こうやって細かいところを繊細に作り込んでいくのが、あんまり好きじゃないんですよ。
阪井:生モノを大事にしたい、みたいな。多少のズレ、ヨレがあっても「これがライブ」というか、勢いを大事にしたいというタイプで。
山村:元気と一生は真逆なんですよ。
阪井:そう、真逆。僕はめっちゃちゃんと整えて弾きたい。そういうところの違いは感じますけどね。
――阪井さんのギターレコーディングに対してスタッフさんの声が入っていますが、ディレクションをしてもらうんですか?
阪井:それも場合によりけりですね。ひとりで淡々と録ることも多いですし、スタジオに入るとディレクションしてくれる方がいることもあるし、いろんなパターンがあります。
―― ep.12では、ボーカルレコーディングのDAY2を紹介。細かい修正や、阪井さんのコーラス録りなどをドキュメント。そして、11月24日公開のep.finalで完結しましたね。完成版の音源を聴かせていただきましたが、“雪”が儚なさをイメージさせながらも、消えずに残るものがある、というメッセージが素敵でした。「スノウゴースト」というタイトルは山村さんが決められたんでしょうか?
@yamamuraryuta #flumpool #wip ep.12 - #ウインターソング ♬ オリジナル楽曲 - 山村隆太(flumpool)
山村:そうですね。
――ちなみに、仮タイトルは何だったんですか?
山村:「タイム」でしたね。今年1年の痕跡、生きている足跡みたいなものをちゃんと刻みたいな、と。コロナ禍ぐらいからそういう想いが僕にはずっとあって。人に会えない、生きている実感がないという、あの時に誰もが味わった虚無感、喪失感というものが自分の中にすごく刻まれていて。それを救ってくれたのは、人との触れ合いだったんですよね。誰かの温度に触れるから自分が“生きている”と気付く、というので「いきづく」という曲をつくったり、『Shape the water』というアルバムでいろいろな曲ができたりしてきて。自分たちの命であったり、誰かとの出会いであったり、一緒にいた記憶であったり、形はないけれどもちゃんとそこに温度や熱みたいなものがあるなと思ったんです。それが一番形になるのが、実は冬なんじゃないかな? と。
――寒さが熱さを浮き彫りにする、と。
山村:寒い冬に呼吸をしたら、それは白い息として可視化されて、目に見える痕跡になるんですよね。落ち込んで出た溜め息だったとしても、それが生きている証のようにも見える。当たり前ですけど、死んでいたら息を吐かないので、残せないものですよね。
――たしかに、そうですね。
山村:自分たちが生きているからこそ残る痕跡があって、痛みなのか喜びなのかわからないけど、そういったものが目に見えるのが実は“冬”なんじゃないかな、と思って書いていった曲です。
――美しい情景が思い浮かぶ歌詞でした。もう今は目の前にいない、会えない人が“会いたい相手”として想定されているのが伝わってきて、より切なさも募ります。
山村:そうですね、冬と言えばこういう寂しさ、恋しさかなと僕は思っていて。それは消えるものではないですけど、丸ごと包み込むことができるような音楽にしたいな、と。たとえば今、もう触れられない人がいる、もう会えない人がいる寂しさであったりとか。だけど心の中には、ちゃんとその人と過ごした時間、温度みたいなものが残っている。そんな寂しい思いをしている人が冬の中にいるとしたら、その人の溜め息なのか、呼吸をちょっと温められるような曲になればいいなと思っています。
――素晴らしい曲がまたひとつ増えたな、と思います。阪井さんは、曲が完成した今、改めてどう振り返りますか?
阪井:久しぶりに弾き語りで作ったんですよ、この曲。今まではアレンジも同時進行しながらイメージを膨らませていく、みたいな作り方が多かったんですけど、急に「もう1曲つくれ」と山村に言われたので、弾き語りで作り始めたのが逆によかったというか。色付けがされていないぶん、良い悪いがハッキリする側面もありますし、アレンジでカバーされていないからこそ、サビの抑揚や弾き語りならではの強さが出たメロディになったし。あとは、2コーラス目はAメロのメロディが違ったりするんですけど、そういう、時間が流れていくような、“淡々と動く”というよりは“ずっと流れていっている”ような、物語のような曲ができたらな、と。そういうイメージをしながら作っていった曲ですね。
――時の流れが曲に映し込まれているんですね、とても素敵です。ギター1本弾き語りという、阪井さんにとって原点とも言える曲作りの仕方によって、自分自身がより克明に、濃厚に出ているという感じもありますか?
阪井:たしかにそうだと思います。改めて、弾き語りで作るっていいなと思いました。特にバラードとなると、やっぱりそれだけ聴かせる曲である必要があるし、こういう原点に戻った作り方をもっとやっていくべきだな、と思いました。



















