King Gnuが射抜く物語の本質 『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変」×「死滅回游」』から歴代主題歌を“再解釈”
乙骨の再登場で深まる「逆夢」「一途」の意味
それぞれがどんな大罪を抱えようと、呪霊を祓い、人々を救う者として戦い続けることこそが自身の存在意義となる。それが呪術師である。虎杖の盟友・東堂葵のそんな言葉は、虎杖だけでなく“特別”な異能を持つ者=呪術師全員が背負う命題だ。
『呪術廻戦』の物語には、この命題が大きく作用する人物が虎杖以外にも複数いる。呪術師の中でも“特別”な存在である乙骨もまたその内の1人だろう。この作品で初公開となるTVアニメ第3期の1話、2話にあたる箇所は、“特別”な存在の先輩/後輩として、虎杖と乙骨の対話が非常に印象的に描かれていた。乙骨というキャラクターの“特別”さは『劇場版 呪術廻戦 0』で描かれた通り。内容はもちろんのこと、物語を彩るKing Gnuの主題歌「一途」とエンディング「逆夢」からも、彼の成長と活躍を存分に窺うことができるはずだ。
今回の先行上映作品でも、登場早々に特級呪術師としての圧倒的な強さを示した乙骨。だが、以前の彼は冷静さや達観からは程遠く、思わぬ形で背負った自らの大罪に長年悩み苦しんできた青年だった。〈頼りの無い僕もいつか/何者かに成れたなら〉〈意気地の無い僕もいつか/生きる意味を見つけたなら〉と歌われる「逆夢」には、過去の弱気な乙骨の姿が如実に反映されているようにも思う。
一方の「一途」は、『劇場版 呪術廻戦 0』の中心人物である乙骨と怨霊・祈本里香の関係性に大きくスポットが当てられているが、乙骨がもともと宿す周囲の人々への愛情深さを知ることで、2人の関係性以上に“乙骨憂太”というキャラクターそのものの人柄や性質を描くニュアンスを強く感じられるだろう。中でも〈汚れ役だろうと/厭わないよ〉という一節は、TVアニメ版から先の展開を知る者にとっては、乙骨の価値観を示す言葉として思い当たる節も大いにあるはず。こうして両曲は今回の先行上映作品を経ることで、『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌/エンディングとしての意味をも超越して、物語本編への新たな視点を得られる曲としても機能するようになるのである。
『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』を通して、改めてKing Gnuによる『呪術廻戦』楽曲を聴き直すと、ストーリーやキャラクターの再解釈、魅力の再発見にも繋がってくる。そこからは、King Gnu、もといソングライティングを担う常田大希(Gt/Vo)が、いかに作品の大局や本質を捉え、そして細部までをも描いた楽曲を作り上げているのかがわかると言っていい。彼の持つ優れた作家性、そしてバンドがタイアップをもって発揮する大きな強みを改めて実感するのだ。King Gnuと『呪術廻戦』が紡ぐ物語がこれから続いていくのか、期待したい。

























