Billyrromが目指すポップミュージックとは “素直さ”から生まれたEP『Jupiter=』と海外公演での刺激を語る

Billyrromが目指すポップミュージック

海外公演での“気づき”がバンドにもたらした影響

――では、バンドの状況面の話も聞かせてください。先日、『TOKYO ALTER MUSIC AWARD '25』で青葉市子さん、betcover!!と並んで「Best Alter Artists」に選ばれていましたよね。この並びって、すごくいいなと思ったんです。ただ単に海外で活動している、ライブ動員が増えているというだけでなく、独自のオルタナティブな音楽性を追求しているうちにそれが国境を越えて広がっていったという括りだと思うので。みなさんとしては、ここ最近を振り返って、アジアでのリスナーやアーティストとのコラボが増えてきたことに、どういう実感がありますか?

Mol:海外って、オーディエンスのライブの楽しみ方だけじゃなく、そもそもの人と人との関わり方みたいなところから、文化が全然違うので。そういうところに僕個人はすごく刺激を受けました。ずっと日本で生まれ育って、Billyrromというバンドを始めて、仲間と同じ目標に向かってずっとがむしゃらにやってると、自然と自分の中で見失ってしまっていた選択肢とか、勝手に排除されていったものが浮かんできて。そういうのって、たぶん1つの世界で生きてると誰でもあると思うんですよ。でも、海外に行って、新しい経験をして、新しい文化を体験して、いろんな新しい人と会話していく中で、「もともと持っていたけれど、知らない間に排除してたな」とか、そういう気づきがすごく多かった。新しい知識とか勉強になったこともあるんですけど、僕が海外に行って一番感じたのは、そういう自分と向き合えるきっかけになったということでしたね。

――自分らしさに気づくようなことがあったと。

Mol:日本にいる時の自分を外から見れたというか。「日本にいる時はこういうことを考えているんだ。でも海外に来て自分がこう思うってことは、こういう気持ちがあるんだ」「でも、それをあまり日本で出してないのはなんでなんだろう」とか。それが実際にライブや制作に活きたりすることはすごくありました。

Billyrrom ライブ写真

――Rinさんはどうですか?

Rin:3〜4年前ぐらいに、フランスの美術館に行ったんです。フランス語だったので、書いてある説明も情報も何もわからなくて。それを見た時に自由をより感じたんです。言葉の意味合いが入ってこないからこそ、「これはきっとこうなのかな」みたいな感覚が自分の中でどんどん出てきて。自由を再確認するみたいな感じだったんです。海外でライブをしたり、海外のアーティストと一緒にやっていると、その時と同じ感覚があるんですよね。Wendy Wanderとコラボした時もそうで。

――台湾のWendy Wanderとは何度もコラボをしてますよね。

Rin:日本で音楽をやってると、なんとなく、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビとか、定型化された形があって。もっと他に選択肢があるけど、自分たちも無意識にその形をとっていたりするんですよね。でもWendy Wanderと一緒にやってると、デモを持ってきた時に「これ、J-POPじゃあんまりないよな」みたいな構成だったりして。もともと音楽を始めた時にあった自由みたいなものを再確認してるような感覚があるなって思います。

Wendy Wanderとシンパシーを感じる“バンドの原動力”

――Wendy Wanderとこんなに深い関係になっていくっていうのは、きっと最初はそんなに思っていなかったですよね。

Mol:そうですね。やっぱり、最初会った時にもかっこいいバンドだなと思って声はかけたんですけど。その次のジャパンツアー(『Wendy Wander溫蒂漫步 2024 tour [MIDNIGHT WANDERING]』)で彼らが来た時に呼んでもらって。大阪、京都、東京で3カ所一緒に巡っていく中で、言葉と文化が違っても、こんなに仲良くなれるヤツらっているんだという衝撃がみんなの中にあって。日本人ですら、ここまで仲がいいバンドはいないのに。この縁はこれから先もずっと生きていくものなんだろうなっていうのは、そのタイミングでみんなの中で芽生えました。

Wendy Wander 溫蒂漫步, Billyrrom - "Nightglow Dreamer" Live from "WiND" Tour 2025 in Taipei

――なんでこんなに仲良くなったんだと思いますか?

Mol:境遇が似てるというのはありますね。彼らも友達同士でやっているし、僕らもそうで。あと、Wendy WanderもBillyrromも、バンドの原動力っていうものが、お金とか、人からの評価とかじゃないんですよ。もっと言葉にできないものが原動力になっている実感がある。そこが彼らとシンパシーを一番感じるところですね。

――なるほど。深いところでわかり合えると。

Mol:「今こう見られたい」といった目の前のことよりも、もっとディープなところで、お互いを感じている部分が近いのかなって思います。

――それはすごく大きいですよね。言葉がすべて通じなくても、何をやろうとしているか、何を表現しようとしてるのか、アートとして伝わるものがある。それを共有できたという感覚があったら、それは仲良くなるわけですよね。単に海外でライブをやりましたっていうだけじゃない。自分たちが大事にしているものを届けられたし、コラボでそれを持ち寄ることができたという実感がある。

Mol:本当にそんな気がします。

Billyrrom ライブ写真

――そうなると喫茶店で話すのってやっぱりすごく大事ですよね。曲を作る時に、何の曲を作るのか、何のためにこの曲を作っているのか、この曲でどこに行きたいのか、みたいなイメージを共有していないといけない。それがなく、いい感じのコード感といい感じのグルーヴだけ鳴らしても、ただの”いい感じ”にしかならない。それだけじゃないところが共有できている。

Mol:そうですね。「これはイケてない」みたいな感覚は、5年も一緒にいる中で自然と近くなりますし。「これっていいよね」っていう領域も大きくなってるし、広がってる感じもある。でも、それは喫茶店とかの話し合いもそうなんですけれど、やっぱり日常を共にしてる中での他愛もない一言だったりとか、例えばドライブでそいつが車で流してる曲だったりとか、そういうものから感じ取れるものだと思うんですよ。だから、あんまり会議みたいなことはしてなくて。どちらかっていうと日頃の会話だったり、日常の中で感じ取るものだったりとか、そういうものでバンドのムードが形成されているのは大きいです。

――ツアーの時はメンバーみんな一緒の車で回ります?

Mol:はい。

ーーそこで何の曲をかけるかも大事ですね。

Mol:そうですね。だいたいは運転してる人が曲をかけます。特に言葉は交わさなくても、「今こういうの聴いてるんだ」みたいなことを思ったりする。車移動はキツいとか言ってたんですけれど、意外とそこが大事なんじゃないかという説がありますね。

■リリース情報
EP『Jupiter=』
2025年11月5日(水)リリース
配信:https://nex-tone.lnk.to/jupiter

■ツアー情報
『Billyrrom Asia Tour 2026 “Jupiter=”』
<日程>
2026年2月21日(土)大阪 BIG CAT
2026年2月27日(金) 東京 Zepp Diver City (TOKYO) 
2026年3月14日(土)ソウル KT&G Sangsangmadang
2026年3月17日(火)香港 PORTAL
2026年3月20日(金)上海 ※後日発表
2026年3月21日(土)北京 ※後日発表
2026年4月18日(土)台北 Legacy Taipei

Billyrrom オフィシャルサイト

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