『温泉むすめ』唐沢美帆がVUCCAと繋ぐ過去と未来 プロデューサー陣との対談で振り返る9年前の“千本ノック”

温泉地をモチーフにした地域活性化プロジェクト『温泉むすめ』のライブ「温泉むすめ 5th LIVE Five 温☆Sparkle!!!!!!!!!」が、2025年12月28日に東京・ところざわサクラタウンで開催される。
このライブには、念願揃ってメンバー全員が約6年ぶりに揃うSPRiNGSのほか、7年ぶりの集結で、そのライバルユニットであるAKATSUKI、今年3月にデビューした新ユニットVUCCA、そして、一期一会のステージが魅力のゆのはな選抜と20名ものキャストが集合。プロジェクト開始から9周年を走る『温泉むすめ』のこれまでの歩みを振り返ることができる公演となるだろう。
今回、ライブの開催を記念して、『温泉むすめ』で初期の楽曲とVUCCAの楽曲を合わせ、計22曲に歌詞を提供している唐沢美帆へインタビューを実施。『温泉むすめ』総合プロデューサーの橋本竜氏、キャスティングプロデューサー兼VUCCAの音楽プロデューサーを務める吉村尚紀氏との会話から、このプロジェクトが世に送り出してきた楽曲に込められた思いの一端を感じてほしい。(はるのおと)【最終ページに読者プレゼントあり】
座談会メンバー
・唐沢美帆(Miho Karasawa)

作詞家。所属事務所はF.M.F。長野県出身。温泉むすめでは、述べ24曲の作詞を担当。アニソン歌手としては「TRUE(トゥルー)」名義で活動している。
X(旧Twitter):https://x.com/miho_karasawa
・橋本竜 (Ryo Hashimoto)

実業家、社会事業家、コンテンツプロデューサー。福島県出身。『温泉むすめ』では、総合プロデューサーを務める。フランスから帰国後にKADOKAWAとサイバーエージェントグループでアニメビジネスに関わる。
X(旧Twitter):https://x.com/ryohsmt
・吉村尚紀(Hisanori Yoshimura)

キャスティング·音響監督および音楽プロデューサー。千葉県出身。音響制作・キャスティング会社を経営する傍ら、『温泉むすめ』の立ち上げ時からエンバウンドにもジョインし、本プロジェクトにおいてもイベント構成や音楽制作、音響監督、声優キャスティング、MCなど幅広く担当。
X(旧Twitter):https://x.com/noriStand_
『温泉むすめ』と一緒に骨を埋めるくらいの覚悟で
――唐沢さんは『温泉むすめ』の最初期から関わられていました。オファーをもらった際のことは覚えていますか?
唐沢美帆(以下、唐沢):オファーをいただいたのは2016年だったと思います。当時はまだ作詞家としてのキャリアが4、5年くらいで、ひとつのコンテンツに深く関わるのは『温泉むすめ』が初めてでした。なので、当時の担当マネージャー話をもらった「生半可な気持ちではなく、やるからには『温泉むすめ』が代表作になるように、一緒に骨を埋めるくらいの気持ちで取り組もう」と決意したのを覚えています。私なりに強い覚悟を持って担当させていただきました。
吉村尚紀(以下、吉村):当時、音楽制作会社のスコップ・ミュージックさんに相談し、唐沢さんを紹介していただきました。私自身、元々歌手活動している唐沢さんのことは知っていましたが、スコップさんにとっても成長させたい有望な才能だったんでしょうね。我々としても、ゼロイチの企画だから一蓮托生のような気持ちで付き合ってくれる人は大歓迎で、「ぜひお願いします」とお伝えしました。それから、メインユニットのSPRiNGSだけでなくライバルユニットも展開が決まり、たくさん作詞をお願いしましたよね。
唐沢:本当に短いスパンで、バーっと曲が送られてくるし、ユニットごとに差別化しないといけないしで苦労しました(笑)。しかも、先ほどお話ししたマネージャーが、私を作詞家として育ててくれたのですが、『温泉むすめ』サイドに提出する前にダメ出しされることが多かったんです。出したらすぐに「駄目!」と言われ、「発注書ちゃんと読んだ!?
」ってなることも(笑)。そんな“千本ノック”状態だったおかげで、すごく鍛えられました。
橋本竜(以下、橋本):あの頃はユニットごとに制作会社もバラバラ、作曲者もバラバラにし各ユニットの個性を際立たせようとしていて。でも、作詞はすべて唐沢さんにお願いしていました。
――そのおかげで『温泉むすめ』の曲はバラエティに富んでいながら、世界観の統一が保たれたんでしょうね。
唐沢:当時のアイドルコンテンツと言えば、喩えば『ラブライブ!シリーズ』の畑亜貴さんのようにひとりの作詞家が深く関わってコンテンツの色を作っていく流れがあったんです。私がそのような関わり方をさせていただけるなんて当時は思っていなかったので、『温泉むすめ』にはとても感謝しています。

――楽曲以外で『温泉むすめ』というコンテンツ自体にはどんな思いがありますか?
唐沢:私はキャンプが趣味で、行く先々で温泉に入ってから帰るんですが、最近は行く先々に温泉むすめがいるなと(笑)。河口湖に行った時に「大西沙織さんみたいな声するな」と思い、調べたら「本当に『温泉むすめ』だったんだ!」みたいな。そんなことがしょっちゅうで、私が『温泉むすめ』に関わっていたころから、どんどん各地域に根付き、愛されていったんだなと実感しています。
『ナガノアニエラフェスタ』での運命的な再会
――唐沢さんはSPRiNGSのシングル『Hop Step Jump!』でしばらく『温泉むすめ』から離れていましたが、3月にデビューしたVUCCAの曲で再び参加されました。そのきっかけは2024年に開催されたイベント『ナガノアニエラフェスタ』だと伺いましたが、詳細を教えてください。
吉村:そのイベントは2日間の開催だったのですが、唐沢さんが出演(TRUE名義での出演)する日に『温泉むすめ』からイベント限定ユニット「ゆのはな選抜」も出ることになりまして。かつてたくさん作詞してくださった方と同じ日にイベントに出られるということに勝手にエモくなってしまい、ステージのMCにもその話題を盛り込みました(笑)。イベント当日、また温泉むすめに関わってもらいたいと思い楽屋の挨拶に伺ったんです。その頃、2025年3月に開催するライブで新ユニットをデビューさせようという計画もあったので、その場で「また歌詞を書いてください」とお話ししました。
唐沢:私も『温泉むすめ』と離れてから気になっていたし、またどこかで交われたらいいなと思っていたので嬉しかったです。その日は私が作詞した曲もたくさん歌ってくださったみたいで。
橋本:はい、リスペクトを込めまして、唐沢さんに作詞していただいたものを軸にしセットリストを作りました。
――そして唐沢さんのもとにVUCCAの新曲2曲の作詞がオファーされました。そもそもVUCCAはどんな経緯で生まれたユニットなのでしょうか?
橋本:SPRiNGSがデビューしたのが9年前で、それから声優さんも成長されました。一方で温泉むすめがどんどん増えており、新しい人たちにも『温泉むすめ』として活動をしてほしいと思い作った新ユニットがVUCCAです。ただ、固定化されたメンバーで決まった曲を歌い続けるのも前時代的なので、ユニットの人数が可変しつつ、ユニットの枠に縛られない後輩ポジションという設定で、幅広い楽曲を歌えるというのがVUCCAの最大の特徴です。
吉村:VUCCAの曲については、2025年に完成したメンバーソロ曲も私がプロデュースしていますが、ロックシーンで活躍している人やアニソンシーン以外の人に作っていただこうと考えていました。アニソンシーンの有名クリエイターにお願いすることでファンが喜んでくださることはわかっていましたが、今回は可変型ユニットにすることや既成概念を飛び越えるコンセプトのユニットだったので新鮮さや驚きを重視したんです。そのなかで、“らしさ”を残し、加えて根強い支持がある曲を生み出したことも大切にし、原点回帰の要素でファンに驚いてもらおうと考えて作詞は唐沢さんにお願いしたのもあります。
唐沢:私は久々に『温泉むすめ』の楽曲制作に関われることがすごく嬉しかったし、楽しかった一方で、別の思いもありました。私と同じように、ファンの方でも一時的に『温泉むすめ』から離れた人もいたと思うんですね。今回の曲が、そういった人がまた『温泉むすめ』に戻ってくるための架け橋になるよう、“あの頃の『温泉むすめ』”みたいな色が乗った楽曲にしたいと考えていました。




















