『温泉むすめ』唐沢美帆がVUCCAと繋ぐ過去と未来 プロデューサー陣との対談で振り返る9年前の“千本ノック”

『温泉むすめ』唐沢美帆&スタッフ座談会

愛すべき“ふざけ文化”を継承した「オーバーフロー!」

【試聴動画】温泉むすめ VUCCA「Volatility」【#温泉むすめ】

――今回作詞された「オーバーフロー!」と「ユメハナビ」の歌詞は、どのように着想されたか教えてください。

唐沢:VUCCAのコンセプトを聞いて、今の人に刺さるような憂いや、それがあるからこそ際立つ前向きさや強さをイメージしました。また以前からそうですが、『温泉むすめ』の曲に触れることで、温泉に浸かった時みたいに心が少しぽかぽかしてほしいと思っていて、「オーバーフロー!」はそうした側面が強いです。逆に「ユメハナビ」は憂いの成分がたくさん含まれていて。この2曲でVUCCAが持つ両極を表現できたのではないでしょうか。

――「オーバーフロー!」は“フロー”と“風呂”がかかっているところや、〈フロア沸かしに行こう〉辺りはさすがの言葉遊びだと唸らされました。

唐沢:ふざけてますよねえ(笑)。以前から『温泉むすめ』に関しては「真剣にふざけたものが勝ち」と考えていましたが、今回久々に参加するにあたって、私が不在だった時期の曲もいっぱい聴いたんです。そうすると、畑さんとかもすごく楽しんで書いてらっしゃるのがわかって。この愛すべき“ふざけ文化”は継承していこうと考えて今回も作りました。〈フロア沸かしに行こう〉なんかは「ワンマンだけでなく、フェスでも勝てる曲にしたい」と考えて書きましたが、全体的にはニマニマしながら言葉遊びをして、両曲ともすごく早く仕上がりました。

吉村:どちらの曲の歌詞も素晴らしい内容でした。詰め込んでいただいた歌詞への想いを真正面から受け止め、1カ所も直しナシで受け取りました。

――「ユメハナビ」は艶やかな表現が多く、これまでの『温泉むすめ』にはない珍しい雰囲気の世界観でした。

唐沢:VUCCAらしい憂いと、大人っぽさはすごく意識しました。ただ、悲しい恋というより、温泉地にまた帰ってきたくなるような曲にしたいという側面も強かったです。あと〈ゆらゆらり〉とか〈とおりゃんせ〉といった日本語の面白さが伝わると海外の人にも楽しんでもらえるかなと。

吉村:「ユメハナビ」を聴いたSPRiNGSのメンバーは歌詞を考察していましたよ。「この曲の主人公はどういう状況なんだ」って。ファンも初披露されたライブ後に盛り上がっていましたし。

橋本 「〈くるぶしが燃えている〉って何なんだ」とか、X(旧Twitter)で言及している方もいましたね。

唐沢:わかりませんか? 男子だったらわからないのかな。好きな人に触れられたところって、ずっとじんわりと熱くなったりしません?

橋本:なるほど。SPRiNGSの日岡なつみさんが「すごく好きな歌詞」と言っていたそうです。

唐沢:わかってくれてよかったです。わからない人は……いい恋をしてください(笑)。

「青春サイダー」誕生秘話

唐沢美帆

――唐沢さんが初期に作詞されたものでお気に入りの曲はありますか?

唐沢:まずはAdharaの「イプシロン進化論」です。この曲あたりから歌詞としては温泉に囚われないものになった記憶がありますが、それとは関係なくとにかく曲が好きで。自分で歌うなら間違いなくこれで、もう、歌うイメージが湧いているくらいです。

橋本:いつかコラボとかできたらいいですね。

唐沢:いいですね! ユニットとしてはpetit corollaが大好きです。彼女たちが歌う「Petit Etoile」は電波な曲なのに、彼女たちらしいかわいい歌詞が全然合っていなくて、それが秀逸だったなと。

吉村:「Petit Etoile」は声優の皆さんから「息切れ曲」と言われています(笑)。どちらもファンに大人気の曲で、12月のライブでもやる予定です。

唐沢:あとは「おんくり」かな。あまりクリスマスソングを書いた経験がない中で、温泉とクリスマスという一見交わらない2つのエッセンスで作詞するというのが結構難題でした。石畳で「カランコロン」と鳴る下駄の音を、ベルの音につなげて……みたいな。そんな風に五感を振り絞って書きました。

――2番の〈湯上がりの牛乳〉で白いイメージも演出されてますね(笑)。『温泉むすめ』で一般的に一番知られてる曲は「青春サイダー」だと思いますが、どんな思いを込められたか覚えてますか?

唐沢:まさに千本ノック中に書いたので、あまり覚えてない……「温泉と言えばコーヒー牛乳かラムネでしょ」くらいの発想で書いたんでしょうけど(笑)。

吉村:青春サイダーという語感が爽やかで、SPRiNGSのイメージの礎になっているんですよね。9人のメンバーも当時若手で、キラキラの塊みたいだったし。

橋本:SPRiNGSの最初の衣装も「青春サイダー」に合わせて泡感を出しました。

唐沢:作曲された磯崎健史さんはこういう曲が大得意で、日本人なら誰が聴いても好きな、王道アイドルソングですよね。当時はそんな風に断トツの人気曲になると思ってなかったので、少しびっくりしてます。ただ「青春サイダー」に限らず、歌詞は置いておいても温泉むすめの楽曲はすべて曲自体のクオリティがすごく高いですよね。それはいまだに聴いても感じます。

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