s**t kingz、全ダンサーの夢を背負った2度目の日本武道館公演 〈ここで踊る〉――4人の使命とは何だったのか?

s**t kingz、2度目の日本武道館公演完遂

 10月31日、11月1日に行われた『s**t kingz Dance Live 2025 in 日本武道館「LANDING」』。s**t kingzにとって、2023年開催の『s**t kingz Dance Live in 日本武道館 「THE s**t」』以来約2年ぶり、自身2度目の日本武道館単独ライブである。初の2日間開催と、前回よりパワーアップして届けられた今回の武道館公演は、“歌わないダンサー”として道を切り拓いていくという4人が担う使命、ダンスが持つ力と可能性をあらためて示すものだった。本稿では、11月1日公演の模様をレポートする。

s**t kingz

 本番直前、メンバー全員がメディアの前で心境を語ってくれた。shojiは「(ダンサーが)こういう大きいステージに立つのが当たり前だと皆さんに思ってもらえるような機会をたくさん作っていけたらいいなと思っているので、今すごく嬉しいです」と、2度目の武道館公演への喜びを露わにした。初日公演を終えた2日目ではあるが、Oguriは「ここにくると、朝からずっとソワソワしている」と緊張を明かし、「何年経っても武道館はすごく特別な場所なんだと、あらためて感じました」と語った。

s**t kingz
shoji

 ライブの演出を担当したkazukiは、「今回は『LANDING』ということで、s**t kingzの島にある一本の木を軸に表現したライブになっている」と語り、ライブ後半のあるシーンが「もともと、それをやりたくてこのライブの構成組んだっていうぐらい、すごく大事なシーンになっている」と強調。今年、s**t kingzは“色気”=“生命の巡り”というテーマのもとで、“色気3部作”とした3カ月連続リリースを行った。3作を通じて、植物の“芽吹き”、“生い茂る衝動”、“枯れゆく美”という3段階を人生と照らし合わせて表現していたが、今回のライブもそういった部分を感じられるものになっているという。さらに、「2年前は明確に何かを表現したいというより、『ダンサーというものを見せてやるんだ!』みたいな気持ちのほうが強かった」と振り返り、「僕らが経験してきたことから感じる素直な想いだからこそ、『ダンスを通してでも表現したい、できる!』と思えるようになったのは、成長だと思っています」と、前回からの変化を語った。

s**t kingz
kazuki

 事前に発表されていた通り、この日の公演には三浦大知、SKY-HI、claquepotがゲスト出演。Oguriは「年も近いですし、昔からみんなそれぞれ頑張ってきた戦友であり、仲間であり、ライバルであり、兄弟というか。会うと家族みたいにリラックスできる」と関係性を説明したうえで、「でも、ステージに立つと、3人ともエネルギーがすごいんですよ」「そういう人たちと肩を並べて、一緒にステージでパフォーマンスできていることが本当に幸せだなと思いました」と、3組への想いを語った。NOPPOも「3人とも、時代を切り拓いてきたアーティスト」と表現し、「それに、昔から僕らのことを知っているなかで歌うっていうドラマがプラスされていて。格闘技で言うと、頑張っている背景があるからすごく燃えるじゃないですけど、自分たちのドラマや背景、軌跡がしっかり伝わるような楽曲を一緒に作っていただきました。素敵な歌詞や音楽になっていて、それをこの広い武道館で届けられるのは、本当に幸せだと思います」と共演への期待を込めた。

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NOPPO

 最後にshojiは、「パフォーマンスのクオリティを大切にしたいという想いはありますけど、よりダンスが広がっていくことを考えた時に、みんなが夢を見られるような、『まだこの先にステップアップあるんだ!』と感じてもらえるような機会は、これからも絶対作っていきたい」と展望を語り、「皆さんに『ダンスって楽しいな』と思えるような機会をたくさん届けていきますので、これからも楽しみにしていてください!」――そんなファンへのメッセージを送った。

s**t kingz
Oguri

 ライブ本編でパフォーマンスされた曲数は、メドレー含めて29曲。それも、すべてがオリジナル曲で構成されていた。1曲目の「Get on the floor feat. MaL, ACHARU & DREAD MC」からフルスロットルのパフォーマンスで会場のテンションを上げると、随所にメンバーのソロも挟みながら、ほぼノンストップでライブは進行していく。ダイナミックな動きから、指先や足先まで神経を研ぎ澄ませた繊細でしなやかなダンスまで、コロコロと表情が変わるステージに目が離せない。

 一方で、ただ自分たちのパフォーマンスで魅了させるのではなく、「みんなで一緒に踊って楽しもう」と、観客を巻き込んでいくのがs**t kingzのライブの魅力だ。メンバーと観客が手拍子でリズムを刻み、バンドメンバーとも息を合わせて軽快に届けられたパートに加え、「衝動DO feat. 在日ファンク」ではメンバーが発する言葉にあわせて即興で踊る、恒例の“衝動ズビズバゲーム”も繰り広げられる。誰もが笑顔で、音に身を委ねる光景が広がっていた。

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 中盤に設けられたのは、“せが家”のコントコーナー。メンバーが、お父さん(Oguri)、お母さん(shoji)、息子のたかし(NOPPO)、愛犬のカズー(kazuki)に扮して展開される寸劇で、今回は一家のもとにゲストが訪れるというストーリーだ。1日目の公演ではSKY-HIとシークレットゲストのSTARGLOWがこの場に出演したが、2日目に姿を現したのはDa-iCEの工藤大輝。カズーは自分をDa-iCEのメンバーに加えてほしいと熱望し、お父さんの「ダンスを見て判断してもらえば?」という提案によって、一家は工藤が見守るなかでダンスを披露することに。何を踊るのかと思えば、流れ出した楽曲は、shojiが振り付けをしたDa-iCEの「スターマイン」だ。それぞれの役に成りきりながらキレキレに踊る4人を見て、工藤も観客も笑いが止まらない。

s**t kingz
せが家・カズー&工藤大輝&せが家・お父さん
s**t kingz
せが家・お母さん&工藤大輝

 せが家のオリジナル曲「familia」を経て始まった後半戦は、事前に発表されていたゲストとのコラボレーションステージも続いていった。“色気3部作”の第1弾「Spinship feat. VivaOla」の後、ピアノの音色に誘われるようにステージに登場したのはclaquepot。披露されたのはもちろん、3部作第2弾の「Biotope feat. claquepot」だ。claquepotの優しい歌声とともに、4人はキメのフレーズで停止したり、手足を大きく動かしたりといった、緩急のあるダンスで植物が成長していく様子を表現していく。

claquepot&s**t kingz

claquepot&s**t kingz
claquepot&s**t kingz

 その流れで第3弾楽曲「Ignite feat. Doul」が披露されると、一度暗転。再び明るくなったステージの中央に立っていたのは、三浦大知だ。「No End feat. 三浦大知」が披露され、最後には三浦も交えてダンスを繰り広げる。5人の熱いパフォーマンスが、会場を大きく揺らす。

 今年、結成18年を迎えたs**t kingz。メンバーがステージの四方に散らばると、18年間を振り返っての想いが彼らの口から語られた。“歌わないダンサー”としての活動は、決して幸せなことばかりではなかったという。前例がないという高い壁に阻まれ、悩んだり苦しんだりした日々は、少しずつ自分たちに傷やシワとして刻まれていった。しかし、その傷やシワは経験や挑戦から生まれたものであって、自分たちがs**t kingzとして生きてきた証でもある――。そうメンバーは口にすると、ステージにゆっくりと大きな木がそびえ立った。本公演のなかで、kazukiがいちばんこだわったという演出だ。その木は幹が太くしっかりとしていて、葉が生い茂り、あたり一面を照らすようにキラキラと美しく輝いている。まるで、幾度の困難を乗り越えて強くなり、今、武道館という華々しいステージに立って私たちを笑顔にさせているs**t kingzそのものでもある。木の前に立った4人は、「Believe In My Soul feat. 笠原瑠斗」を力強くパフォーマンスする。〈何処へでも行こう/Believe in my soul〉と、自分たちの可能性はいくらでも広げられることを教えられるようだった。

三浦大知&s**t kingz

三浦大知&s**t kingz
三浦大知&s**t kingz

 光に満ちたステージに、再び三浦と、そしてSKY-HIが登場。届けられたのは、10月15日にリリースされ新曲「愛が呆れ果てるまで feat.三浦大知, SKY-HI」だ。伸びやかな歌声を披露する三浦に、〈こんな夜をありがとう〉を強く歌い上げるSKY-HI。6人が楽しそうに、自由にパフォーマンスを繰り広げる光景は、〈愛が尽きて果てるまで/ここで踊るよ〉というフレーズを体現していた。

 claquepotも再びステージに登場し、ゲストが勢揃いしたところで、7人で「Popping」が届けられる。7人はステージを端から端まで移動しながら、会場をひとつにしていった。「ここを日本一、いや、世界一のダンスフロアにしようぜ!」とshojiが熱く呼びかけ、「WINNING feat. Serocee」では客席を半分に分けてのダンスバトルが始まり、「KID feat. LEO(ALI)」では会場中のタオルが一斉に回される。

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三浦大知&SKY-HI&s**t kingz

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 ラスト一曲というところで、来年7月25日、26日に神奈川・ぴあアリーナMMで『s**t kingz FES』が開催されることを発表。次に会う約束も交わした後で、再度ステージに登場したSKY-HIと「Oh s**t!! feat. SKY-HI」をパフォーマンス。アグレッシブなラップで場を沸かすSKY-HIに、彼と共鳴しながらエネルギッシュにダンスする4人。SKY-HIを見送り、すべてのエネルギーをぶつけるように踊り倒した4人は、最後に会場を大きくジャンプさせて2度目の武道館公演を締めくくった。

SKY-HI&s**t kingz

SKY-HI&s**t kingz
SKY-HI&s**t kingz

 2日間で約1万2000人のオーディエン スを動員した、グループ2度目の武道館公演。これからもs**t kingzは、ダンスや表現の楽しさを伝えながら、ダンサーとしての可能性を広げ続けていく――。ステージに立つ4人の姿が、それを物語っていた。

s**t kingz

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