未完成ブレイブ、未知なる可能性を感じさせた2ndワンマン 16歳のYUがステージ上で示す進化の道程

未完成ブレイブ、2ndワンマンレポ

 未完成ブレイブが10月25日に原宿RUIDOにて2ndワンマンライブ『Crescent Moon #2』を開催。同ライブのオフィシャルライブレポートを掲載する。

2年間で磨き上げてきた実力を発揮した未完成ブレイブ

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

 大人でも子供でもない年代を生きる未完成なクリエイターの、今この時にしか生み出せない感情をそのままに届けるプロジェクト『MIKANSEI Project』の第2弾アーティスト、未完成ブレイブが『2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』を原宿RUIDOで開催した。今年の春には、プロジェクトの中核を担うYUが高校に進学し、新たな世界へ一歩踏み出した未完成ブレイブ。ティーンエイジャーならではの瑞々しさと新境地で得た想いを煌めかせるだけに飽き足らず、デビューからの2年間で磨き上げてきた実力を発揮し、フレッシュかつ成熟したステージを作り上げた。

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

 暗闇に姿を現したYUは、今にも泣きだしそうな声で「Dawn」をポエトリーリーディング。喪失も希望も葛藤も内包した声が、儚くも力強く場内にこだましていく。オーディエンスの心を掌握しきると、『泡沫のユークロニア』のオープニングテーマである「Dawn」を導いた。未完成ブレイブの神秘的な世界観を反映した逆光の照明は、パフォーマンスにこめられる情報を削ってしまうので、ともすれば不完全な表現になりかねない。だがしかし、彼女は計算し尽くされたモーションと感情を捕まえた歌声で、器用に楽曲を魅せていく。そして、本来であれば大きな役割を果たす“表情”を、想像力を掻き立てるエッセンスのひとつにしてしまう。YUの表現力と観客の感性が常に交差しながら、新たな色を見つけていくのが未完成ブレイブのライブなのだ。

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

 「心像」でノリのいいビートに乗せてクールなオーラを放ったかと思えば、「花と嘘」ではストーリーテーラーに情景を描きあげる。どんな曲でもテーマや心情、色に合わせて、即座にチューニングしてしまう技量は圧巻だ。その後も透き通る声質が印象的な「青く染める」、軽やかなステップで魅了する「黒い砂浜」と持ち前のパフォーマンス力を輝かせていった。

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

 「変わっていくもののなかで、変わらない想いを思い出させてくれる、そんな楽曲です」と告げ、デビュー曲の「DOKU」へ。ポエムを読み上げるときの抑揚も声色も温度も、おそらくこの2年間で変化してきたのだろう。かつての情緒を反芻するかのように言葉を編み上げると、その熱を引き連れたまま、歌とダンスで「DOKU」を披露していった。〈DOKU DOKU〉とリズミカルに体を揺らし、余裕たっぷりに展開されていくステージングは、しっかりと着実に進み続けてきたYUの軌跡を感じさせる。そればかりか、現在のYUが過去のYUを再演するような、不思議な空気を生み出していた。「輪郭線」でブルーのペンライトが左右に揺れると、いよいよライブも折り返しだ。

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

 ここで『泡沫のユークロニア -trail-』のタイアップゾーンへ突入。オープニングテーマとなった「deep blue」では、一段と語り部のように物語が紡がれていった。〈君がいる〉と差し伸ばされた手の、なんと精悍なことか。華奢な体格からは想像のつかないエネルギッシュな歌唱が、会場を温かく抱きしめていく。エンディングテーマとなった「ありふれた夜に」では、祈りのように歌詞が刻まれていった。清廉で凛々しいトーンは、これでもかというほどの慈愛に溢れている。だからこそ、〈何気ない今日も愛していこう〉というメッセージが、寄り道することなく真っすぐに飛んできたのだろう。

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

 続くMCでは、本番前の楽屋でのエピソードを語るYU。「モニターで会場の様子を見ていたら、みなさんが来てくれていることに感動しちゃって。本番前に、めちゃめちゃひとりで号泣してました」と、照れくさそうに明かす。そして、渋谷ファッション&アート専門学校の学生に制作してもらったという衣装についても触れていった。前回のクールでかっこいいスタイリングとは打って変わって、今回はまるでファンタジーから抜け出てきた魔法使い。最近のリリース曲がインスピレーション源となっているようで、緑とピンクのタータンチェックに紫のフリルがあしらわれたワンピースには、三日月のモチーフが取り入れられていたり、大ぶりのリボンがついていたりと、レトロポップな作風が反映されている。

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

 「未完成ブレイブの曲って、YUの心の変化とか成長の姿を描いているんですけど、衣装も想いと合わせてコンセプトを変えていて、次の楽曲は今の衣装と合っているんじゃないかなと思います」との言葉を受け、誘われたのは「月を歩けば」だ。吐息たっぷりに聴かせてみたり、起伏をつけて遊んでみたり、音楽と楽しそうに戯れていく。飛び跳ねながら自身を解放する姿は、〈ナンセンスな世界〉で削られていた少女が〈大きな一歩〉を経て、自分なりに楽しむ術を見つけたことを謳うよう。抜群のグルーヴで「夜の隅で」「迷いgirl」と乗りこなし、ラストスパートをかけていった。

『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』ライブ写真

 ダンスがキャッチーな「ヨウカイ」で熱狂を巻き起こし、未完成ブレイブの前身である未完成モノローグ「カルメン」を抒情的にセルフカバー。この期に及んで、まだまだ余力を残しているのだから、YUの底力は計り知れない。最後には未発表曲の「Hold on」をドロップし、重めのロックサウンドで華々しくフィナーレを飾ったのだった。

 アンコールで舞い戻ってきたYUは、いきなり『泡沫のユークロニア』のエンディングテーマである「生きて、愛して」を投入。ファンに対する感謝の気持ちをたっぷりと詰めこみ、豊かに歌い上げていく。ラストでは、舞台上に用意された椅子に腰かけながら、羊文学「more than words」とASA「もう頑張らないで」をアコースティックギターの弾き語りでカバー。言葉以上の想いを手渡すと共に温かな優しさで包みこみ、じんわりと愛が染みるハッピーエンドで結んだのだった。

 表現者として、人として、絶えず進化しながらも、いまだ未知なる可能性を感じさせるアーティスト、未完成ブレイブ。パフォーマンスが洗練されてきている一方で、活動2周年を迎えたばかりの高校1年生なのも、また事実。未知数のポテンシャルを秘めている彼女が、どのような物事に心を揺らし音楽へと昇華していくのか、引き続き目が離せない。

■セットリスト
『未完成ブレイブ 2nd ONE MAN LIVE ~Crescent Moon #2~』
SETLIST@原宿RUIDO  DAY:2025.10.25(sat)

M01_ Dawn
M02_心像
M03_花と嘘
M04_青く染める
M05_黒い砂浜
M06_DOKU
M07_輪郭線
M08_deep blue
M09_ありふれた夜に
M10_月を歩けば
M11_夜の隅で
M12_迷いgirl
M13_ヨウカイ
M14_カルメン
M15_Hold on
EN01_生きて、愛して
EN02_ more than words
EN03_もう頑張らないで

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