未完成ブレイブ、15歳の少女が切実に届ける思春期の孤独と葛藤 生身の姿で臨んだ初ワンマンを観て
大人と子どもの狭間に生きるクリエイターの感性を、音楽を通して届けるプロジェクト・MIKANSEI Project。その第二弾アーティストが、ボーカルのYU率いる未完成ブレイブである。
YUは、中学3年生の15歳。公式サイトのプロフィールでは、“歌を通して言葉を伝えることに絶対的な意義を持つ。歌うべくして生まれた少女。”と紹介されていることからも、歌に強い思いを抱きながら活動していることが窺える。
彼女の歌には、10代だからこそ表現できる痛みや繊細さが溢れている。例えば、2023年にリリースされた1stデジタルシングル「DOKU」は、社会に対する不信感や自身の未来を憂う繊細な感情を、切なくキャッチーに歌い上げたデビュー曲。心の奥に燃える強い意思を乗せた低音から始まり、サビの盛り上がりにかけて巧みに操る高音はどこかあどけなさも感じられるイノセントな印象。まさに大人と子どもの間で揺れ動いている“今”しか聞けない歌声だ。〈大人になって背中を向け合うことが 正しさと呼べるのかな〉と、YUの真っすぐな声で投げかけられる疑問は、私たち大人の胸をチクリと刺す。
彼女のそんな魅力は徐々に広がりを見せているようで、6thシングル「生きて、愛して」は、Nintendo Switch用ソフト『泡沫のユークロニア』のエンディングテーマに起用された。ドラマティックなメロディに乗せて、健気な愛の形を命の美しさと共に歌い上げるYUの声には透明感があり、純真無垢な美しさに満ちている。さらに8thシングル「ヨウカイ」では、自らの心の弱さを化け物にたとえ、“変わりたい”と願いながらも孤独感に苛まれる複雑な心情を、中毒性の高いリズムとダンサブルなサウンドに乗せて届ける。MVで表現された、部屋で一人膝を抱えていたパジャマ姿の少女が、化け物のメイクを施してイキイキと踊りだすというストーリーは爽快で、未完成の彼女に対する愛おしさをも覚えるものだった。
デビューしてから約1年。インターネットを中心にリアルな姿を出さずにこれまで活動してきた未完成ブレイブが、初めてファンの目の前に姿を現したのが、9月28日に原宿RUIDOで開催した1stワンマンライブ『Crescent Moon』である。同世代の女の子たちが行き交う竹下通りのすぐ傍にあるライブハウスの地下で、彼女は多くの観客の心に魂の歌を届けた。
記念すべき初ステージは、「心像」のポエトリーリーディングで静かに幕を開けた。薄暗いステージで客席に背を向け、深くフードを被ったまま世を憂う詩を呟く姿は、まるで世界の全てを拒絶しているようだ。しかし、「心像」のイントロが始まると勢いよく振り向き、華奢な身体で力強く拳を突き上げながらエネルギッシュな歌声を会場いっぱいに響かせる。そのまま「黒い砂浜」へ突入。疾走感溢れるサウンドに、瑞々しく張りのある歌声を乗せていく。たった一人でライブハウスを掌握する勇ましい15歳の少女から、観客は一瞬で目が離せなくなっていた。
初めてのMCでは、「今日はみんなに会えるのをすごく楽しみにしていました。200%の力で最高の一日にしたいです」と、すこし緊張しつつも素直な気持ちを伝えるYU。等身大のどこかあどけない雰囲気は、パフォーマンス中とは別人のようだ。続いて、最新曲「ヨウカイ」へ。YUが「一緒に踊ろう!」と元気よく煽ると、フロアからハンドクラップが沸き起こり、観客の熱量もアップ。YUはステージを縦横無尽に動き回り、飛び跳ね、サビではTikTokでも人気の“ヨウカイダンス”をキュートに披露。フロアで一緒に踊るファンの姿もあり、これまで個々の部屋で楽しんでいた曲が、この日初めて同じ空間で楽しめる曲に変わった瞬間となった。