A.B.C-Z、『CRAZY ROMANTIC!』で示す懐かしさと革新 今を更新し続ける“MIXTURE REVIVAL”という挑戦

A.B.C-Z『CRAZY ROMANTIC!』レビュー

 A.B.C-Zの9枚目のアルバム『CRAZY ROMANTIC!』が、10月29日にリリースされた。昨年の『F.O.R-変わりゆく時代の中で、輝く君と踊りたい。』以来、約1年2カ月ぶり、4人体制では2枚目のアルバムとなる。

 新体制となってからは、昭和・平成リバイバルをコンセプトに楽曲制作を行っている彼らだが、2025年6月25日にリリースした2nd EP『ROMANTIC!』では、「“REVIVAL”をより“ROMANTIC”に」という要素が加わり、本作『CRAZY ROMANTIC!』では、「“REVIVAL”をより“ROMANTIC”に、そして“CRAZY”に表現」した“MIXTURE REVIVAL”なアルバムとなった。

昭和・平成リバイバルから“MIXTURE REVIVAL”へ進化した新章

 前作アルバム『F.O.R-変わりゆく時代の中で、輝く君と踊りたい。』は、昭和・平成リバイバルをコンセプト掲げ、その時代に多く制作されていた事務所伝統の音楽性が取り入れられたこともあり、古の時代からの事務所ファンのDNAをも刺激し、事務所内の他グループファンからの支持も多く集めた。以降新曲が出るたびに、YouTubeのコメント欄に多くの応援書き込みが見られるのもA.B.C-Zならではの光景となっている。

A.B.C-Z / Jigsaw (Music Video)

 「ROMANTIC」をテーマに掲げた2nd EP『ROMANTIC!』では、リード曲「Just Romantic!」のMVが、『F.O.R-変わりゆく時代の中で、輝く君と踊りたい。』の中でも昭和・平成に事務所が最も得意としていたトンチキな世界観のMVで話題となった「Jigsaw」の世界観を引き継いだ。メンバーの戸塚祥太主演のドラマ『極道上司に愛されたら』(TBS/MBS)エンディング主題歌となったこの楽曲。ドラマに出ているイケメン上司のグループの曲だと思ってMVを見た人は、そのぶっ飛んだ世界観に驚いたに違いない。

A.B.C-Z / Just Romantic! (Music Video)

 この2nd EP『ROMANTIC!』リリースの翌月には、初の主催2マンライブ『A.B.C-Z CONNECTION Vol.1』を開催。初日のゲストは、ムード歌謡コーラスグループの純烈。2日目のゲストはDAIGOがボーカルを務めるロックバンド・BREAKERZ。普段交わらないであろう界隈との邂逅に「なぜ?」という謎が芽生えたが、これこそがアルバム『CRAZY ROMANTIC!』へ向かう“MIXTURE REVIVAL”へのイントロダクションだったのかと感じさせられる。

  “MIXTURE REVIVAL”のコンセプトは、グループ初となる8月からの3カ月連続配信リリースシングルで花開いた。さまざまなジャンルのクリエイターたちとコラボから、アルバム『CRAZY ROMANTIC!』への導入となった先行配信3曲を、まずは振り返ってみよう。

 3カ月連続リリースの先陣を切ったのは、「Cocktail」。シンガーソングライター・竹内アンナによる楽曲は、独特の浮遊感漂うミドルテンポが気持ちのいいメロウなダンスナンバー。作者である竹内は「『魔法みたいな夜を飲み干してしまう切なさ』がA.B.C-Zのみなさんの歌声で表現され、とても素晴らしい楽曲になりました」(※1)とコメントしており、アルバムの“ROMANTIC”濃度を上げる1曲となった。また、昔のブラウン管テレビのアスペクト比である4:3サイズで制作されたMVは昭和の夕方の音楽番組感を醸し出し、楽曲の世界観を太極拳を模したダンスでお洒落に彩った。『行け!稲中卓球部』のパンダ1号的な乗り物にメンバーが真面目な顔で乗っているのも面白い。

A.B.C-Z / Cocktail (Music Video)

 9月にリリースされた「すれ違う笑顔 さよならのキスを」は、これまでにも「灯」、「終電を超えて~Christmas Night」などA.B.C-Zの人気曲を手掛けてきたロックバンド・LEGO BIG MORLとのタッグだ。ミドルテンポの切ない系ラブソングには、ちょっとKinKi Kids(現DOMOTO)など、事務所歴代の系譜も感じられる。MVは無駄な装飾を抑えた構成の中に、メンバーたちの苦悩、葛藤、恋心など、内面からにじみ出る表情を映し出し、切なさや余白を感じさせている。前半は表情を見せ、クライマックスで流れるように踊る4人それぞれの姿も印象的。このようなラブソングこそ、“ROMANTIC”を掲げる大人なアイドル・A.B.C-Zの真骨頂と言える気がする。

A.B.C-Z / すれ違う笑顔 さよならのキスを (Music Video)

 そして10月にリリースされた「鈍学塁功・DONGAKU-RUIKO」は、爆風スランプより作詞をサンプラザ中野くん、作曲をパッパラー河合というコンビの楽曲を亀田誠治がアレンジ。力強くもROMANTICなロックを奏でている。MVは「Cocktail」同様に4:3のサイズで、なんだか昔、カラオケボックスで見たような質感の映像だ。ダンスパフォーマンスなしで、積み上げたスピーカーを前に、爆風にもまれながらマイクスタンドで4人が熱唱する姿はスタイリッシュ。踊らないA.B.C-Zも絵になる。タイトルは「鈍根の人間でも努力を重ねていけば、土塁の如く積み上がり大成する」に由来するが、「鈍学塁功」という言葉が、最後にワンフレーズだけ登場するのも洒落ている。

A.B.C-Z / 鈍学塁功・DONGAKU-RUIKO (Music Video)

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