水平線が目指す場所、鳴らすべき音楽、なるべき姿 変化と決意の夏――新曲「エンドレスサマー」を語る

水平線、変化と決意の夏

水平線が目指すところ「国民的バンドではなく、国民的ロックバンドでありたい」

――田嶋さんが「探り中」と言葉にしていたけど、2025年は“らしさ”を追求するフェーズなのかなと思ったんですよね。それは水平線らしさであり、ソングライターである“田嶋らしさ”、“安東らしさ”の追求というか。情感や叙情性のある歌詞と評されるふたりのリリックが、「たまらないね!」では安東さんの根のポジティブさにフォーカスされて外に視線が向いた気がしたし、「エンドレスサマー」では田嶋さんのストレートな言葉が前に出てきた気がしたんです。水平線の表現が拡張した気がするんですけど、そう言われるとどうですか?

安東:今まで「こういうことを言いたいな」と思っても、直接的に言うことを避けていた部分があったんです。オブラートを何重にも重ねてふわっとした言葉にしていたんですけど、「たまらないね!」でオブラートの枚数は減ったかもしれないです。

――それはなぜ?

安東:包みすぎて何を言ってのるかわからへんかも、って。僕は書き手やから意味を理解できるけど、もっとわかりやすくてもいいんじゃないかという考え方になったのかもしれないです。やっぱり、多くの人に聴いてもらいたいですもんね。

田嶋:フェスを経験して感じた外向きの意識に繋がっている気がしますね。「たまらないね!」をリリースして夏フェスシーズンに突入したんですけど、あの曲の雰囲気や歌詞のハッピーさも相まって、フェスでいい空間を作り出せるなという実感があったんです。外向きの意識を持ったことで、ライブや音源に反映されていってるのかもしれないです。

――よりポップに表現して、大衆性を持ちたいという考えも芽生えた。

田嶋:はい。それこそ「たまらないね!」はタイアップだったし、ドラマの内容もただただ気持ちいいというか、生きてたらツラいこともあるけど、食事の時間だけは幸せが漂うようなドラマだったから。それってライブとも通ずるよなと(バンドで)話したりもしてて、それが上手いバランスで表現できた気がしますね。

――フェスでも評判がいい曲でしたか。

田嶋:ライブの2曲目でやることが多かったんですけど、そこでお客さんを盛り上げることができたし、自分たちのライブでは、これまで手拍子とかもあまりやったことがなかったんですけど、「たまらないね!」では工夫しながら空間を作るのがハマった感じがありました。

安東:今までだったらあまり見られなかった景色やな。

田嶋:うん。今年経験したいろんなことが繋がっている気がします。

――素晴らしいですね。本当にいい経験を積んでいる。「エンドレスサマー」についてはどうですか?

田嶋:僕が書いた「シリウス」(今年1月リリース)は、恋模様というか、今まで挑戦してこなかった気持ちを言葉にして、曲もコンパクトにサビで強く聴かせるのを意識して作ったんですけど、「エンドレスサマー」はそういう挑戦は一旦外して、イントロもアウトロもめちゃくちゃ長くして(サウンド面において)好きにやろうと思ってました。でも、「シリウス」で挑戦した別れ模様とか情けの部分は残しつつ、サビはポップに。挑戦して得たものと今までの自分との折衷を意識して作った曲だと思います。

水平線 - シリウス (Official Music Video)

――ちなみに「エンドレスサマー」はいつ頃作った曲ですか?

田嶋:デモを作ったのは、7月末とかですね。

――やっぱりそうですよね。タイムリー感が出ているなと。

田嶋:今年の夏はいろいろ重なったんですよ。それこそ、フェスに出演したこともそうですし、タイアップもそうですし。プライベートで言うと、父親が急逝したりして。いろいろ考えることが多かった。その最中に『フジロック』(『FUJI ROCK FESTIVAL '25』)も行かせていただいて、いろんなことがあった夏、父親の死とライブで楽しむお客さんがすごく対照的に見えたんですよ。死と生というか。今年の自分の気持ちを刻みつつも、来年やその先のライブやフェスでいい空間を生み出せる曲を作りたいなと思って、制作してました。

――本当にいろんなことがあった夏でしたね。

田嶋:出発点は今年の夏でしたけど、制作を進めていくなかで――外向きの意識の話にも繋がってくるんですけど――自分だけの話を書いても仕方ないということに気づいたんですよね。夏という感傷的な季節になぞって、ストレートに自分たちの夏のことは書きすぎず、誰しもがちょっとノスタルジックで、思い浮かべる景色みたいなところにたどり着けそうなイメージを音像も含めて表現できたかなと思うし、これは今までだったらできなかった着地だと思います。ロックでありながらポップス、という意識はブレずありましたね。

――お話を聞いてると、水平線として目指すべき場所が明確になったような気がしますね。

田嶋:当初自分たちが持っていた動機と今やろうとしていることが繋がって、いかに広くしていけるか。やっぱりそこが連動していないとやっていて意味がないと思うし。

安東:うん。僕らなら、あのステージをどうできるのか。そんなことを考えさせられる夏でしたね。

田嶋:でも、その連動の難しさも理解できるんですよ。音楽を続けていくためには聴かれる必要があるし、かといって根幹をブラしてまでやることに意味はないし……。そのバランスをずっと探っていますね。

――現段階で迷うことはないですか? ここまでポップに振り切ることができるけど、それだと水平線じゃない、という葛藤みたいな。

安東:それはあるかもしれないです。自分は、ずっとポップスを聴いていたので、耳馴染みのいいものが作りやすいんですよ。でも、そうすると「水平線だとやりすぎかも」と思うこともある。だから、削る作業を繰り返してきたりしたんですけど。今思ってるのは、そのままいってもいいんじゃないかな、って。

――というと?

安東:音像や鳴り音で水平線らしさを表現できれば、思い描くバンド像に近づくと思うんです。メロディに関しては振り切ってもいいのかも、って。アレンジでどうにかできるかなと思っています。

田嶋:結局、僕たちはそこをいいバランスでやっているバンドが好きだし、やっぱり多くの人に聴いてもらいたいという思いがどんどん強まっていますね。

――今後が楽しみですね。そのうえで今考えていることはありますか?

田嶋:いつになるかわからないですけど、今悩んだり、感じたり、チャレンジしたりしているものが、「これが水平線だ!」とどこかのタイミングで表現できると思うんですよ。だからこそ、これからも頑張るし、前回出したアルバムから次に出すアルバムまでの期間の集大成は作りたいですね。それと同時に、ライブをする会場の大きさを着実に大きくしていきたいです。音源とライブと2軸で探しているものを集めた結果を見せたいです。

安東:お茶の間に届けたいとずっと思っていて、国民的ロックバンドって言うんですかね? 国民的バンドではなく、国民的ロックバンドでありたいなと思います。そこを目指します。

水平線(撮影=林直幸)

■リリース情報
Digital Single『エンドレスサマー』
配信中

配信URL:https://suiheisen.lnk.to/endlesssummer

■公演情報
自主企画『潮の目-なな-』
2025年11月9日(日)大阪・梅田シャングリラ
OPEN 16:30/START 17:00

<GUEST>171/Sundae May Club

<チケット>一般発売中:イープラスチケットぴあローソンチケット
一般 3,500円(税込)/学割 2,500円(税込)
※入場時別途ドリンク代要
※学割は入場時に学生証の提示が必要となります。
※電子チケットのみ取り扱いになります。

水平線 オフィシャルサイト:https://suisuisuiheisen.jimdofree.com/
X(旧Twitter):https://x.com/suisuisuiheisen
Instagram:https://www.instagram.com/suisuisuiheisen/
YouTube:https://www.youtube.com/@suisuisuiheisen
TikTok:https://www.tiktok.com/@suisuisuiheisen

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