水平線が見せたロックスターの片鱗――おとぎ話と繰り広げた夢のような一夜、自主企画『潮の目 -む-』東京公演を振り返る

水平線×おとぎ話、対バンレポ

 京都を中心に活動するバンド・水平線の自主企画ライブ『潮の目 -む-』の東京公演が、7月30日にSpotify O-nestにて行われた。今回で6回目の自主企画には、彼らがリスペクトするおとぎ話をゲストに開催。今年25周年を迎えるベテランと気鋭の若手バンドの音楽的邂逅は、どこまでもあたたかく、そして互いのリスペクトを鳴る音から感じ取れる、非常に幸せなライブだった。本稿では、そんなスペシャルな一日についてレポートしていく。

 多くのオーディエンスが詰め掛けたO-nest。この日最初に音を鳴らしたのは、おとぎ話だ。The Beatlesの「Good Night」が会場に流れるとステージに姿を現した4人。彼らのライブは「VIOLET」で幕を開けた。有馬和樹(Vo/Gt)が小気味好いギターを鳴らすと広がっていく極上のバンドアンサンブル。そんな鳴り音にオーディエンスは心地好さそうに体を揺らしている。「よくぞ地獄のような喧騒を抜けてお越しいただきました。ありがとう」と言葉にすると、間髪を入れずに「恋は水色」を投下。アグレッシブなサウンドとは裏腹にオーディエンスに語りかけるように歌唱する有馬。「ギターを紹介してもいいかな?」と牛尾健太(Gt)の気持ちよさそうなギターソロ。そんな姿を見ていると、こちらまで気持ちよくなってしまう。徐々にあたたまっていくフロアで、彼らは「BLUE BLUE」、「セレナーデ」、「美」と間髪を入れずに楽曲を連投していく。随所に「ありがとう!」と感謝を伝えながら進行していくおとぎ話のライブ。笑顔の有馬と冷静な牛尾、そして、おとぎ話のサウンドの背骨を支える風間洋隆(Ba)と前越啓輔(Dr)の阿吽のリズム隊。〈意味の無い世界で笑おうぜ〉と力強く「ピカピカ」を歌い奏でると、有馬が口を開いた。

おとぎ話(撮影=南風子)

おとぎ話(撮影=南風子)
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 「水平線って、えらいバンドだよね。こんな年上のお兄ちゃんたちを誘ってくれて!」「なかなかいいバンドなんだよ!」と、水平線に対する愛のあるMCにフロアは拍手喝采。そんなリスペクトを感じ取れる言葉のあと、有馬は「特別な気持ちで渋谷に来てる。水平線とツーマンできてよかったぜ」とリズムに乗せて歌うと、「『SMILE』って曲やります!」と演奏をスタート。有馬とともに歌うオーディエンスの姿、その姿は本当に幸せそうで、フロアにはあたたかい空気と幸福感に溢れている。有馬があまりにも笑顔で歌うものだから、こちらもつられて笑う。笑顔は伝染していくのだ。彼らはここからギアをさらに上げてラストまで駆け抜ける。ステージを縦横無尽に動き回りながらスキルフルな演奏を見せた「FUNCLUB」も、「オジー・オズボーンに捧げます!」と始まった「正義の味方」も、すべてがアグレッシブ。おとぎ話の鳴らす音にオーディエンスは踊らされてしまっている。最後の最後まで笑顔で音楽を楽しんだおとぎ話の4人は、「COSMOS」をラストに投下し、有馬と牛尾がギターをステージの中心でクロスさせ、クールにライブを締め括った。

おとぎ話(撮影=南風子)

おとぎ話(撮影=南風子)

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