Nikoん、音楽で焚きつけていく本音 生きづらい世界のヒリついたロックーーその“真意”に迫る

Nikoん、ヒリついたロックの“真意”に迫る

 「言葉のパワーはその人が発さないと生まれてこない」

 さて、これは本来最初に言うべきだったことかもしれない。Nikoんを語る上で欠かせないのがライブである。まず、なんと言ってもその数が尋常ではない。7月には16日間で13公演を行う「九州シリーズ」をやり遂げ、8月にも関西を拠点に連続13公演を行う「関西シリーズ」を決行。無尽蔵のスタミナで今年の夏を駆け抜けた彼らは、10月から来年2月にかけても47都道府県を巡るツアーを行うことを発表したばかり(その間、単発の企画などもこなしている)。これはもうさながら飢えた獣だろう。では、何に飢えているのか? それは血の通ったコミュニケーションではないだろうか。

「単純にライブが好きでやっているだけなんです。ただ、47都道府県アウトストアライブに関して言うと、『各地を知りに行きたい』からですね。そこのライブハウスは誰がどういう風に運営していて、各地にそれぞれどういう違いがあって、どんな人たちが遊びに来るのかを知りたい。そのツアーはCDを買った人は(無料で)入れるライブなので、逆に言うと全国のCDを買ってくれた人のことは大体わかるというか」(オオスカ)

Nikoん 撮り下ろし写真

 九州、関西とひとつの地域に滞在して連続ライブを開催した夏のツアーも、「知りたい」という欲求からきているのは想像に難くないはずだ。

「人に会いにいくというのはエネルギーが必要じゃないですか。連絡を取って、約束してーーでも、ライブハウスはそういうことをしなくても人に会えるんです。そこに行ったら友達がいたり、もちろん知らない人もいるし、知らないバンドが出てたりもしていて、人と出会うことができる。それはすごくいいことだと思います。今の若い世代の子たちってそれを知らないじゃないですか。コロナ禍でライブハウスが運営できない時代、下手したらライブというものに行くのが良くないこととされる時に高校生とか大学生の時期を迎えてしまっているのでわかんないと思うんです。じゃあ俺らを面白がってくれる人にライブハウスに来てもらって、その楽しみをその人なりに獲得してくれたらいいなと。それで性に合わないのならそれはそれでいいし、そこで面白さを感じてくれたならそれもいいから。とりあえず1回足を運んでもらいたいと思う」(オオスカ)

 ライブだけではない。Nikoんは熱心に企画を展開している。Xのプロフィール欄には「アンチコメントは→」という文言と共にNikoんを語る掲示板のリンクが貼られ、その他メディア「Qetic」を通して「インタビューを受けてくれる人」(!?)を募集。本人たちが作品を語るのではなく、Nikoんについて話したいことがある人を募っているのだ。8月に行われたツアーファイナルでも、『fragile Report』を予約購入した人にその場で白盤をプレゼントするという大盤振る舞いが行われたが、それも上記インタビューと同様の意図があってのことだろう。白盤を受け取った人には、その代わり作品レビューを書いてもらうという条件が課されていたのだ(そのレビューは現在特設サイトにて公開中/※)。「批判も大歓迎」と再三公言していることからも、狙いは明らかだろう。つまり「本音を聞かせてくれよ」とNikoんは言っているのだ。そう思うと尋常ならざるライブの本数も得心がいく。Nikoんは自分たちの足でリスナーに会いに行き、心の通ったコミュニケーションを取ろうとしている。「自分の人生を生きづらいこの世界」で、しかしだからこそ、音楽を通してアクションを起こし続けているのではないだろうか。

Nikoん 撮り下ろし写真

「言葉のパワーってちゃんとあるじゃないですか。でも、それってその人が発さないと生まれてこない。心の内にあったとしても、他人には届かないですよね。だからレビューの企画に関しても、47都道府県アウトストアライブにしてもそうなんですけど、焚きつけたい気持ちがちょっとある。で、そこでもし火がついたとしたら、その火を燃やしたのはぶっちゃけ俺じゃないんですよ。そこに種火があったから燃えたわけで、俺はその種火をすごくカッコいいと思うし、お客さんのことをより密に思える。たとえば『お前らのために歌います』って言うのは簡単だけど、顔も知らない、話したこともない、内にある思いも知らないヤツのために一期一会で歌えるのかって言われたらそんな人間なんていない。でも、知るための努力をすればできると思う」(オオスカ)

 彼の姿勢に対して「愚直だ」「不器用だ」と言ってしまうのは簡単だ。でも、私はとてもそんな気にはなれない。本音を分かち合う活動をしたいという願いは、やっぱりヒリヒリと焼けつくような、ささくれ立ったサウンドの裏返しだと思うから。「知りたい」「焚きつけたい」という言葉の奥にあるのは、心を殺すようにして生きている人に対して、あなたはあなただけの意見を持っていていいんだ、という投げかけだろう。

「世界がそうなれなんて大仰なことは思わないです。でも、俺らがライブをする場とか、特設サイトで公開しているレビューとか、俺らが管理して関わっている場所ではみんなが素直でいられたらいいなと。今はSNSが社会に出過ぎちゃっているけど、人と意見が違うことを許容すればいいだけなんですよね。自分と違う存在を許容しないようにするのは、自分という存在が変わっちゃうのが怖いからだと思うんですけど。勝手に否定されているような気持ちになってしまうというか、まあ、俺もそういう時ありますけどね。でも、『自分はこうなんだよね』ということをみんなが言いやすくなれば、その人の世界が広がるかもしれないし、いろんな意見が交流できるし、生きやすくなるよねと。要は俺が生きやすくなるよ、というだけなんですけど(笑)」(オオスカ)

Nikoん 撮り下ろし写真

 インタビューもそろそろお開き、という頃合いになったところで「Nikoんの音楽からは反抗心を感じる」と伝えてみた。「(その反抗心が何の表れかと言うと)『放っといてくれ』ということ。『俺たちは好きにやりたいだけだから、放っといてくれよ』と。その気持ちがすごくあります」(オオスカ)とのこと。

 さて、前半でサラッと書いて進んでしまった気もするので、改めて記しておく。Nikoんはサブスクリプションサービスを含めデジタル配信をしていない。だからライブ以外の場所で彼らの音源を聴こうと思ったら、現状はCDを買うのみである(最近YouTubeの更新が増えてきたので、せっかちな人はそちらへ)。Apple MusicやSpotifyで音楽を聴くことが日常となった今の感覚では、もしかしたら閉鎖的に思う人もいるかもしれない。でも、ここまで散々書いてきた通り、彼らはどこまでも能動的で、そして新しいリスナーと出会うことに貪欲だ。まあ、こうした閉じながらにして開かれているというか、頑固さと柔軟さを兼ね備えたスタンスこそ、Nikoんらしさなのかもしれない。

Nikoん - さまpake(Official Music Video)

 9月になっても暑い日が続いている。だらっとした日々を過ごしている。時々自分は「生きている」というよりも、「退屈を紛らわしている」だけなのではないかと思うことがある。でも、この音楽を聴いていると沸き上がってくるものがある。

なんにも無い街飛び出し
なんにも無い街飛び込んだ
空気が変わってく瞬間に
ギリギリで追いつけそうだよ
(「グバマイ!!」)

Nikoん 撮り下ろし写真

※特設サイト「バンドって、なあに?」:https://fragilereport47.jp/

◾️リリース情報
2nd Album『fragile Report』
1st Album『public melodies(メジャー盤)』
2025年9月24日(水)リリース(いずれもCD ONLY)
価格:2,750円(税込)
各EC販売:https://nikon.lnk.to/fragile_report
※ 2nd Album『fragile Report』は初回限定封入特典「47都道府県ツアー招待券」付き

◾️ツアー情報
『2nd Album「fragile Report」購入者特典LIVEツアー「アウトストアで47」』(全49公演)
インフォ&申し込み:https://fragilereport47.jp/

【関東/甲信シリーズ】
2025年10月15日(水)東京都 / 下北沢 SPREAD
2025年10月16日(木)神奈川県 / 横浜 B.B.street
2025年10月18日(土)栃木県 / 足利 SOUNDHOUSE PICO
2025年10月19日(日)長野県 / 伊那 GRAMHOUSE
2025年10月20日(月)山梨県 / 甲府 KAZOO HALL
2025年10月24日(金)群馬県 / 前橋 DYVER
2025年10月26日(日)茨城県 / 取手 Dandelion Cafe
2025年10月27日(月)千葉県 / 千葉 LOOK
2025年10月31日(金)埼玉県 / 熊谷 MORTAR RECORD

【東北シリーズ】
2025年11月1日(土)宮城県 / 仙台 FLYING SON(昼公演)
2025年11月3日(月・祝)山形県 / 酒田 hope
2025年11月5日(水)岩手県 /盛岡 ましまし04
2025年11月6日(木)福島県 / 郡山 Peak Action
2025年11月11日(火)秋田県 / 秋田 Club SWINDLE
2025年11月12日(水)青森県 / 八戸 ROXX

【北海道シリーズ】
2025年11月14日(金)北海道 / 札幌 VyPass
2025年11月20日(木)北海道 / 旭川 MOSQUITO

【北陸シリーズ】
2025年12月2日(火)石川県 / 金沢 vanvanV4
2025年12月3日(水)福井県 / 福井 HALL BEE
2025年12月4日(木)新潟県 / 新潟 WOODY
2025年12月5日(金)富山県 / 富山 SoulPower

【関西/東海シリーズ】
2025年12月7日(日)滋賀県 / 彦根 ダンスホール紅花
2025年12月12日(金)三重県 / 伊勢 LIVE SPACE BARRET
2025年12月13日(土)愛知県 / 名古屋 stiff slack
2025年12月14日(日)静岡県 / 三島 ROJI
2025年12月17日(水)岐阜県 / 柳ヶ瀬 ANTS
2025年12月18日(木)大阪府 / 心斎橋 火影
2025年12月19日(金)京都府 / 二条 nano
2025年12月23日(火)和歌山県 / 和歌山 OLDTIME
2025年12月24日(水)奈良県 / 生駒 RHEBGATE
2025年12月25日(木)兵庫県 / 神戸 BLUEPORT

【四国シリーズ】
2026年1月15日(木)徳島県 / 徳島 bar txalaparta
2026年1月16日(金)高知県 / 高知 Cab's
2026年1月17日(土)愛媛県 / 松山 Bar Caezar
2026年1月18日(日)香川県 / 高松 TOONICE(昼公演)

【中国シリーズ】
2026年1月19日(月)岡山県 / 岡山 CRAZYMAMA 2ndRoom
2026年1月21日(水)広島県 / 広島 4.14
2026年1月22日(木)鳥取県 / 米子 AZTiC laughs
2026年1月23日(金)島根県 / 出雲 APOLLO
2026年1月24日(土)山口県 / 湯田温泉 Organ's Melody

【九州シリーズ】
2026年1月25日(日)長崎県 / 長崎 STUDIO DO!
2026年1月26日(月)佐賀県 / 佐賀 RIDE
2026年1月28日(水)福岡県 / 福岡 public space 四次元
2026年1月29日(木)熊本県 / 熊本 NAVARO
2026年1月30日(金)大分県 / 大分 AT HALL
2026年1月31日(土)宮崎県 / 宮崎 LAZARUS
2026年2月1日(日)鹿児島県 / 鹿児島 WORD UP STUDIO

【東京ファイナル & 沖縄】
2026年2月15日(日)東京都 / 渋谷 WWW
2026年2月20日(金)沖縄県 / 那覇 AZAT FANFARE

◾️ライブ情報
『Nikoん × Apes presents『Risorgimento』Nikoん Re:TOUR -チッタ360 -』
日時:2025年10月30日(木)開場18:00 / 開演19:00
会場:神奈川・川崎 CLUB CITTA’
出演:Nikoん / Apes
先行チケット販売URL : https://eplus.jp/nikonxapes/


10月11日(土)正午~:東京・下北沢駅周辺、10月19日(日)正午~:東京・渋谷駅周辺で配布されるフライヤーを持参した入場者全員に、両バンドの楽曲が収録されたデモCDをプレゼント
<収録内容 / 全2曲>
Nikoん「modern times(新曲)」
Apes「Imaginary Flight(alternative ver.)」 

Nikoん X:https://x.com/Niko_n_band

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