横山裕「俺とあなたで最高な人生歩んでいこう!」ーーまっすぐな生き様、愛と感謝を届けた『ROCK TO YOU』

横山裕『ROCK TO YOU』レポ

「オニギシ」に込めた母への想い 「全部オカンなんです、オカンが繋いでくれた」

 ラストナンバーは「オニギシ」。15年前、ソロツアーを行っていた横山。大阪城ホールにひとりで立った姿を母が観てくれたこと、照れて嬉しさが表現できなかったこと、この曲が大好きだったという最愛の亡き母とのエピソードを語る。そして青森公演本番1時間前に知らされた訃報、公演ラストの「オニギシ」では号泣してしまったことを申し訳なく思うと語り、今回のソロプロジェクトはこの「オニギシ」をアルバムに入れ、青森で歌いきるという決意の下スタートしたと明かした。「この間の青森公演、泣いて歌われへんかった」と笑いつつ「でもそれでええんやな、それが俺やし、しゃーないよ」と満足した表情を見せる。そして『24時間テレビ』でこの楽曲をメンバーが歌唱したことについても「めちゃくちゃ嬉しかったのよ。最高の親孝行できてるってメンバーに本当に感謝してます」と喜びを表し、「オカンはいなくなったけど、いたことが大事なんです。いてくれたから俺が生まれて、弟たちが生まれて。素敵なメンバー、SUPER EIGHT、後輩、あなた、スタッフ、たくさんの方に出会えてます。全部オカンなんです、オカンが繋いでくれた」と愛情たっぷりに話した。

 客席からの優しい拍手とともに音楽が始まり、バックスクリーンには幼少期の家族写真が次々と映し出される。ここまでのハードなサウンドとは打って変わって、キーボードやアコースティックギターといったあたたかみのある音色が横山のボーカルを包み込み、引き立たせる。言葉の一つひとつを丁寧に歌い上げる横山の瞳は、真っ直ぐに前を見据えていた。曲も終わりに近づきアウトロが鳴り響く中、「これもオカンが教えてくれたこと」として「ありがとうっていつでも言われへんから、言える時に言ったほうがいいと思うねん。だから俺、言うな。ありがとう」と大きな感謝を観客に届け、ステージから去っていった。

『ROCK TO YOU LIVE TOUR』

 本編終了後すぐに始まったアンコールの拍手に応えた横山は、パステルイエローのライブTシャツに着替え再登場。「曲がない、玉切れ」と笑いを交えながらも「でもわかってるんですよ。アンコールなしじゃ生きられない……そんな体にしたのは俺たちだって」と笑いを誘い、再び「ロックスター」を披露。会場中が彼の奏でるロックに馴染み、熱さと一体感は冒頭の同曲よりもさらに加速していった。「俺、まだあなたを帰しませんよ!」「まだ生きてる実感、感情、俺にぶつけられるよな? それが俺とあなたの存在意義!」と叫ぶと、この日のラストナンバー「存在意義」へ。2回目の「存在意義」は、ここまで真っ直ぐな想いを受け取ってきたこともあって、歌詞のすべてがよりリアルな感触で伝わってきた。そんな彼の高い温度に負けないほど、観客のハンドクラップは徐々に増幅していく。そんな熱さを伴ったエネルギーの交換こそ、ファンと横山のコミュニケーションの真髄だとわかる感動的なシーンだった。

 閉幕の時。ユーモアと愛情たっぷりにバンドメンバーを紹介し、スタッフ、オーディエンスにも拍手を送る。そしてマイクを外し、生の声で「ありがとう」と感謝を届け、客席の隅々にまで手を振り、最後は小さくピースサインを残しステージを後にした。

 アルバムの楽曲だけで構成されたぶん、彼自身の言葉で多くのメッセージが届けられたライブだったが、その熱い想いのほとんどは披露された楽曲にもしっかり編み込まれており、横山の作詞家としての才能と熱量をあらためて実感させられた。グループで積み上げてきた音楽的な信頼があるからこそ、“あなた”に響くメッセージをストレートに届けられるのだろう。

 ライブ中、幾度となく「感情をぶつけ合おうや!」と観客に本気のコミュニケーションを求め、『ROCK TO YOU』というタイトル通り、オーディエンスの一人ひとりと真剣に対峙していた。その姿は一貫して聴き手にその在り方を問うていて、彼の真っ直ぐな生き方を突き付けられた。まさに“ロックスター”の姿勢そのものだ。かっこいい、楽しい、美しいといった感動だけでなく、ロックならではのざらつきと生の温度を観客の心に刻んだ横山裕。少々大袈裟かもしれないが、誰かの人生を変えうるような、大きなエネルギーのうねりを感じたライブだったと思う。

■セットリスト
『ROCK TO YOU LIVE TOUR』
9月17日 東京・Zepp Haneda(TOKYO)

M01.ロックスター
M02.HERO
M03.存在意義
M04.Kicyu
M05.cHocoレート
M06.ど真ん中
M07.黄金期
M08.ポインセチア
M09.繋がる
M10.神様のバカヤロー
M11.プライド
M12.オニギシ
EN1.ロックスター
EN2.存在意義

SUPER EIGHT 横山裕・村上信五“ヨコヒナ”の揺るぎない信頼 29年隣を歩き続けて目指す国立の舞台

SUPER EIGHTの横山裕と村上信五が、9月8日に放送されたトーク番組『あの頃からわたしたちは』(日本テレビ系)に登場。長年…

SUPER EIGHT 横山裕の止まらぬ快進撃! 『24時間テレビ』チャリティーランナーや渋谷すばる対バンなど、多岐にわたる才能に光

2025年、SUPER EIGHT 横山裕の快進撃が続いている。5月に自身の1年間限定ソロプロジェクト「ROCK TO YOU」…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる