なぜ「愛♡スクリ~ム!」は脅威の広がりを見せたのか? ファン視点から見た“異様”なバズの背景

垣根を越え、誰もが“愛を叫べる”楽曲が示した『ラブライブ!』の新しい在り方

 先述した通り、AiScReamは『ラブライブ!』初のシリーズの垣根を越えたユニット。だが、数年前までシリーズの垣根を越えることはおろか、シリーズ混合で同じステージに立つことすら考えられなかった。特に、μ'sがファイナルライブを行い、Aqoursが本格的に活動を始めた頃は、μ'sを思うがゆえにそれ以外の存在を認められないファンの声は大きかった。そんな当時の空気を思えば、シリーズの境界を軽々と飛び越えて、μ'sすら気軽に巻き込んでしまった本楽曲の存在は、ファンが夢見ていた『ラブライブ!』シリーズの姿を投影した楽曲であるようにも感じられる。

 また、本楽曲の持つコンセプトも、現在の『ラブライブ!』のあり方と親和性が高い。もともとAiScReamという名前には、メンバーそれぞれに愛=“Ai”を叫ぶ=“Scream”対象がいるという意味も込められている。そんなユニットのコンセプトを体現する楽曲が「愛♡スクリ~ム!」なのだ。改めてコンセプトを振り返ってみると、いかに「愛♡スクリ~ム!」で普遍的なことを歌われているのかがわかる。本楽曲は、アニメの挿入歌やナンバリングシングルほど『ラブライブ!』らしい文脈を含んだ楽曲ではない。だからこそ、本楽曲は歌う人を選ばないのだ。

AiScReam『愛♡スクリ~ム!』Music Video

 実際、『EXPO 2025 大阪・関西万博』のライブでは上原歩夢役の大西亜玖璃も、若菜四季役の大熊和奏も出演していない中で本楽曲は披露された。何にもとらわれることなく、それぞれ“愛を叫びたい対象”さえいれば、歌うに値すると肯定してもらえる寛容さ。それは、スクールアイドルの「なりたいと思えば誰にでもなれる」という概念と非常に親和性が高いと言えるだろう。同時に、どのようなスクールアイドルであっても、『ラブライブ!』という看板の元では等しくファミリーなのだと教えてくれているようだ。

 かつて“愛を叫ぶ”のを躊躇ってしまうような時代があった。だが、『ラブライブ!』シリーズごとの棲み分けが進んでいる今は、それぞれが愛を貫くことのできる環境は着実に整いつつある。何を好きでも、どんな愛を持っていても構わないし、その愛を叫ぶことは誰に阻害されるものでもない。そんな『ラブライブ!』シリーズの在り方を体現するように、“愛を叫ぶ”楽曲が現れ、コンテンツ内で最たる知名度を獲得したと言っても過言ではない。それは、『ラブライブ!』シリーズが力あるコンテンツという証明だけでなく、後輩へと想いを繋ぎ続けてきた意味が肯定されたようにも思えた。

 これからもシリーズが続く限り、新たなスクールアイドルは現れ続けるだろう。だが、どれほど時や流行が過ぎようとも、『ラブライブ!』が“愛を叫べる”場所であり続けてほしいと願っている。

AiScReam「愛♡スクリ~ム!」バイラル首位獲得 『ラブライブ!』ファン以外にも伝わるキュートな魅力

Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spot…

Liella! 1期生が届けた不変の輝きと新たな思い出 声なき“あの日”と今を繋いだ5人のステージを観て 

『ラブライブ!シリーズ』4作目にあたる『ラブライブ!スーパースター!!』から生まれたグループ・、Liella!の1期生による『ラ…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる