らくガキ、月刊少年アイロニー、おもかげ、ズットユース……ロッキン・ライフの「俺のイベントに出てくれないか!」第4回
まだまだ暑さを覚えながらも、少しずつ秋の風を感じつつあるライブハウスシーン。春から連載を開始した連載コラム「俺のイベントに出てくれないか!」も、ついに第4回へと突入する。今回も、いま自分がライブイベントを開催するならブッキングしたいと考えるバンドたちを選出し、その魅力を余すことなく掘り下げていきたいと思う。
らくガキ
らくガキは、大阪を拠点に活動する5人組のロックバンド。ハイトーンなボーカルと、バンドメンバーに鍵盤がいるからこそのカラフルなサウンドが印象的だ。バンドとしてポップなロックサウンドと正面から向き合いながらも、キャンバスに自由自在な色で絵を描いてみせるような痛快さがある。
実際、彼らの代表曲のひとつである「キャンバス」も、軽快でリズミカルなバンドサウンドをベースにしながら、キャッチーで弾けるようなメロディーで楽曲を展開する点が特徴。sumikaやMrs. GREEN APPLEのように、これまでバンド音楽を聴いてこなかったようなリスナーも巻き込んでみせるようなワクワク感がある。「100年の青春を」に代表されるように、清涼飲料水のCMとしても映えそうな柔らかい歌声、喜怒哀楽を全面に出すようなサウンドの緩急も、このバンドの魅力だろう。
歌詞の目線も絶妙で、らくガキと同世代であればこのバンドが持つ等身大の目線にぐっとくるだろうし、もっと上の世代が聴くと、あの日どこかに置いてきた"青春"を音楽からダイレクトに感じられるはず。ライブも終始朗らかで、明るく展開するのが魅力で、必見のバンドのひとつ。
月刊少年アイロニー
月刊少年アイロニーは、2020年に結成された秋田発スリーピースロックバンド。女性のスリーピースといえば、チャットモンチー、SHISHAMO、Hump Backなど、先人のバンドを想起するリスナーも多いと思うが、月刊少年アイロニーは00年代以降のJ-ROCKをルーツに感じさせつつも、それらのバンドとは異なる趣を放っている印象。
バンドの代表曲である「September」は、どこかノスタルジーを感じさせるギターのアルペジオから楽曲が始まる。ただし、過剰にエモさで押し通すのではなく、凛としたボーカルと素朴ながらも熱のあるバンドアンサンブルで、じっくりと感情に揺さぶりをかける。「リピートコーリング」も、ゴリっとしたギターを響かせているという意味では激しさを感じやすい楽曲だが、豪快なサウンドを響かせるパートと、しっとりと展開させるパートのバランスが上手く、哀愁にも似た何かを歌から感じることができる。
歌の中での感情の描き方が秀逸であるとともに、独自の力加減で機微を表現する繊細さが、前述してきたバンドとはまた異なるように思う。故に、新世代のギターロックバンドとしての空気感がそこに宿る。
おもかげ
おもかげは、2023年11月に誕生した平均年齢19歳、横浜発の4人組ロックバンド。“切ない×ギターロック×刹那=セツナロック”をテーマに掲げているということで、シンプルなギターロックながらも切なさの表現が上手く、フレーズの練り方にもぐっとくる部分が多い。
バンドの代表曲である「ラベンダー」でも、のっけからクリーンなギターサウンドや、丁寧ながらも緩急をつけたビートでリズムを紡ぐベースとドラム、女性目線で切り取った感情を赤裸々に綴る言葉選び、表情豊かなボーカルの存在感など、おもかげが持つ切なさの要素が全開となっている。
ただし、歌詞や歌そのもの一辺倒で勝負するバンドというわけではなく、「ミライ」はギターフレーズや矢継ぎ早に変化するリズムメイクも印象的な曲だし、「星降る夜に」も"夜"というキーワードにぴったりな幻想的なサウンドが魅力的。バンドとしてのアプローチの引き出しの多さも大きな武器になっている。
indigo la EndやSaucy Dogのように、現在も切なさを武器にしたギターロックは人気だが、おもかげは同カテゴリーにおいて次世代の主役になりそうな予感を放っている。ライブパフォーマンスにおいても、情感のある楽曲がリスナーの心を突き刺す。
ズットユース
ズットユースは、2024年春に高円寺を拠点として結成された3人組のロックバンド。中心人物は元SUNNY CAR WASHのフロントマン、岩崎優也(通称アダム)である。バンド名は芸人の阿諏訪泰義が考案し、ファン投票によって決定された。
SUNNY CAR WASH好きはもちろんのこと、andymoriや神聖かまってちゃんのような独自の感性をオリジナリティ溢れるロックサウンドで展開するバンド好きには、きっと刺さるパンチ力を持っている。ボーカルは透明感がある一方で、サウンドは荒削りな衝動が宿っていて、このコントラストがたまらない。
「ドカーン」はシンプルでキャッチーなフレーズが印象的で、音源を聴くだけでもライブでの一体感が想像できる、高揚感のあるストレートなロックナンバーだ。「ドゥードゥードゥー」も繰り返されるフレーズが印象的という意味では「ドカーン」と通ずるものがあるが、口ずさみやすいメロディーが特徴。THE HIGH-LOWSのようなオーセンティックなパンクロックがツボというリスナーもぐっとくるテイストかもしれない。ライブもオーディエンスを巻き込みながら、他を追随させない熱狂を生み出す。
今回取り上げたバンドたちも、それぞれの魅力を持っている。だからこそ、対バンという形式で各々の個性がぶつかると面白いことになるんじゃないかと思い、今回はこの4組を紹介してみた。ぜひ一度、ライブハウスにてその魅力を生でダイレクトに体感してほしい。

























