後藤真希、Negicco、東京女子流……『TOKYO IDOL FESTIVAL』時を超えてつながる、リスペクトの輪

東京アイドル衣装コレクション2025 summer

 衣装については、ウエストの細さを強調したガーターデザインスタイルが大流行。数年前にボディスーツやガーターシルエットがファッション界に登場した時は、「これ超絶スタイル良くて自信のある人しか着られないじゃん!」と思ったが、その自信と美しさを日々磨き上げている人たちによるアイドルの世界で流行るのは必然だった。こんなにもはっきりとアイドル衣装界に一つブームの存在を感じたのは、すっかり定番となった2010年代のカラフルチュールパニエや、2020年代のバレエコア以来。ガーターデザインやコルセットスタイルも、一時的流行を越えてアイドル衣装として定着してくれたらと夢見る。

ambitious:KURUMI (左)、フィロソフィーのダンス:奥津マリリ (中央)、ukka:芹澤もあ (右)

■ambitious:KURUMI

 浮島ステージで心射抜かれ、一目惚れした札幌を拠点に活動しているambitious。KURUMIさんの月まで飛んでいきそうなティンカーベル・ヘアスタイル、けれど妖精の儚さとは真逆のグイグイ引き寄せる力強いパフォーマンスのギャップに惹かれた。熱帯魚的質感のマーメイドブルーを基調とした衣装が、北国から来た女の子たちの陽光を透かす夏雲ほどに真っ白な肌に映えて、背景は茫洋とした青空、あまりにも完璧な夏の思い出。

■フィロソフィーのダンス:奥津マリリ (中央)

 DOLL FACTORYで新曲「迷っちゃうわ」衣装を披露。マカロンカラーを基調にレースとフリル溢れる、夢の世界のお姫さま。ソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』を彷彿とさせるドレス。

■ukka:芹澤もあ 

 キラキラ輝く無限大∞マークにも見えるドデカリボンの端が、スカートのフリルに連なる複雑な形と、和菓子のような薄桜色が組み合わさった、桜エビ〜ずからukkaに繋がる10周年イヤーを象徴するような衣装。ヘアアクセサリーも、輝く祝福のロゼッタ。夜のSKY STAGEで芹澤もあさんのちら見せウエストが夜景に縁取られキラキラ輝いていた瞬間、どんなに暑くてもこのステージでよかった……と痛感した。

SITUATION

増田葵奈(8月24日、SITUATIONを卒業)

 暗闇に浮かぶ女の子たち、ゴス全開メイクと全身漆黒に覆われた衣装、目元だけがギラギラと光って、耳に襲いかかる強烈な重低音と共に空間を切り裂く叫び声のような〈I WANNA BE,I WANNA!〉(「ME AGAIN」)、血飛沫も幽霊も出てこないホラー映画。怖すぎるのに、絶対に目が離せない。メンバーたち自身がトランス状態に入っているように見える振付、何かを降臨させ発現させているような空気、その何かは人によって神にも悪魔にもなる。

 増田さんのクールな佇まいと、その眼の放つ閃光が忘れられなくなった。

竹越くるみ(Devil.Anthem)/minan(lyrical school)

竹越くるみ(Devil ANTHEM.)(左) 、minan(lyrical school)(右)

■竹越くるみ(Devil ANTHEM.)

 Devil ANTHEM.といえばちっちゃな女の子たち・キュートな小悪魔という印象だったけれど、皆もうすっかり綺麗なお姉さんに。

 積み上げてきた経験と確かなスキルによる盛り上げ力。豪雨に襲われたHOT STAGEでは、どんどん強くなる雨足とエモーショナルな歌声が完全シンクロして、デビアンがこの曲のために嵐を呼んできたかのようだった。翌日は炎天下の浮島ステージ、Tシャツの襟元をちょくちょく引っ張り顔の汗を拭く竹越くるみさん。華やかでカッコイイ佇まいの竹越さんが突然見せる子供っぽい仕草を目撃して、キュンとした。

■minan(lyrical school)

 『TIF』通算13回出場のminanさん、そのお姿を筆者が初めて拝見したのは、リリスク加入お披露目前の『TIF』物販会場だった。ショートヘアのとっても綺麗なあの人がリリスクの新メンなんだ……と印象的だった。日中のSMILE GARDENは暑さが体に堪え、リリスク最新EPの最高爽快青春讃歌「4EVER YOUNG」で踊りたい欲が高まりながらも「でも自分、ヤングじゃないしな……」と落ち込みかけていたところに、minanさんのMC「今この場所で、性別とか年齢とか関係なく、この瞬間を一緒に過ごせていること、とても誇らしく思います」という言葉で、そうだ! 関係ないじゃん! lyrical schoolでしか味わえない楽しさが確かにある!!! と救われた、感情ジェットコースターの20分間。

プー・ルイ(PIGGS)/滝沢ひなの(NEO JAPONISM)・冨樫優花(タイトル未定)

プー・ルイ(PIGGS)(左) 、滝沢ひなの(NEO JAPONISM) (右-左)、冨樫優花(タイトル未定)(右-右)

■プー・ルイ(PIGGS) 

 プー・ルイさんの歌の中には、彼女のアイドル人生ーーかわいくてキラキラしているだけじゃない濁り澱み汚れ、それでもアイドルとして輝きたいと熱望する葛藤が詰まっている。グループ脱退を発表した直後で、台風が接近する中、PIGGSとして最後の『TIF』出演となった。SMILE GARDENで歌われた「とらえる」と同時に、豪雨後の灰色の空がぐちゃぐちゃの薄紫になり、風が雲をかき回し、夕暮れのピンク色に染まっていった、アイドルヲタクの複雑な心情をも乗せてたくさんの偶然が重なってできる光景。

■滝沢ひなの(NEO JAPONISM) 、冨樫優花(タイトル未定)

 生演奏と生歌で、各ユニットから選ばれたアイドルたちが様々なカバー曲を演奏する『TIF』恒例の企画『IDOL SUMMER JAMBOREE ACOUSTIC & ROCK』。二人は「ファイト!」(中島みゆき/1983年)を披露。

 「初めてこの曲を聴いた時はカバーすることが辛かった、けれど今は、この曲に乗せて皆さんにエールを送りたいと思う」と語った滝沢ひなのさん。『TIF』で披露するには重すぎる曲なのでは……と心配した私は浅はかだった。アゲる激励だけではなく、心の深いところに沁み入って届くエールもある。北海道出身の冨樫優花さんの真っ直ぐに届くピュアな歌声が、曲中の主人公の辛く苦しい道をもがきながら生きる姿に重なり、高知出身の滝沢さんの暑苦しいまでに情熱的な歌声が、その主人公を希望に向かって引き上げる。2人が歌いながらしっかり手を繋いでいることに気づいた瞬間、涙溢れた。

Nao・Megu(Negicco)/新井ひとみ(東京女子流)

Nao(左-左)、Megu(左-右)(Negicco)、新井ひとみ(右)

■「タイムマシーン~TIF Classic~ 15周年特別企画」

 『TIF』が始まるきっかけとなったアイドリング!!!をはじめ、過去から現在に至るまで『TIF』に多数出演してきたアイドルたち8組が、デビュー曲や代表曲を1曲ずつ立て続けに披露。楽曲とアイドルの笑顔とともに脳裏に蘇る美しい思い出(と暑すぎる暑さ)……アイドルヲタクの走馬灯のような企画だった。

 LinQの「ハジメマシテ」は発売から13年経っても全く色褪せない踊り出したくなる瑞々しさ、Negiccoの「圧倒的なスタイル」は私が人生で初めて全く知らない他人と肩を組んだ曲、トリの東京女子流はもちろん「おんなじキモチ」のはず……と思いきやデビュー曲の「キラリ☆」で、久々に聴くこちらも沁みるな~としみじみ観ていたら、最後にもう1曲「おんなじキモチ」を披露し、イントロが流れた瞬間聴きたかった曲が「キタ!」と胸が高鳴った。そして2番が始まると同時に、これまでの出演アイドル7組がステージに再登場して全員で一緒に歌い踊った、夢の光景。最後に新井ひとみさんのキュートな声で「みんなで、おんなじ気持ち!」。

 来年3月での解散を発表した東京女子流の、『TIF』出演を観ることができるのは今年が最後。そんな寂しさやしんみり感を全く感じさせない、新井さんのブレない安定の笑顔と明るい歌声、その側で感極まってウワーンと泣き出すNegiccoのNao☆さんの姿に、こちらももらい泣きした。

 私は『TIF』に通いはじめて今年で13年目、リアルサウンドでレポートを書かせていただくのは8回目。初期の数々の失敗(熱中症になりかけSMILE GARDENの木陰でダウン、酷暑の屋外と冷房ガンガン室内の温度差と大声コールの出しすぎで喉を痛める、ガラス窓に激突し流血・救護室のお世話になり今も残る顔の傷…等々)経験を活かし、現在は万全の対策で平和に落ち着いてフェスを観られるようになった。けれど、年齢を重ねてあの頃のように思いきり暴れられなくなってしまった寂しさもある。『TIF』で踊り狂う若者たちが眩しく見え(迷惑行為は絶対NG)、羨ましさが年々高まっていくし、毎年「今年が最後かな」と思い続けている。

 ただ立っているだけでも決死の覚悟が要る暑さのなかで、全力で歌い踊るアイドルたちの超人的生命力を浴びて、また今年も生き延びた。毎年必ず絵に描かずにはいられないアイドルに出会える『TIF』、いのちが続く限りは見届けてゆきたい。

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