ポップミュージックの新たな王道――harha、ライブに渦巻く熱狂 今という時代に鳴らすべき音楽と歌声

harha、ライブで見せる圧倒的な存在感

 クリエイター/プロデューサーであるハルハとボーカリスト・ヨナベによる音楽ユニットharhaが、8月29日、渋谷・Spotify O-WESTで『2nd ONEMAN LIVE オトナタイコウ』を開催した。フロアを埋め尽くしたオーディエンスが熱視線を送るなか、harhaのふたりは全19曲をパフォーマンス。ライブ終了後には来年2026年3月8日にユニット初のZeppワンマンを行うことも発表された。

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

 harhaがデビューを果たしたのは、今から遡ること3年前、2022年10月のことだった。SDRが主催するクリエイター同士のコラボを促すマッチング型コンテスト『クリエイターズマッチングプロジェクト』をきっかけに誕生したこのユニットは、デビューシングル『争奪最前戦 / ヘロー』を皮切りに次々と楽曲を発表。2023年5月にリリースした「人生オーバー」は、YouTubeで500万回を超える再生回数を記録するなど、harhaの名前を一躍知らしめる大きなターニングポイントに。今年7月には初の連続ドラマタイアップとして、「マスカレード」が『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』(フジテレビ系)のオープニング曲に抜擢されるなど、活躍の場を広げ続けている。

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])
ハルハ
harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])
ヨナベ

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

 そんなharhaによる、今年3月以来となるワンマンライブ。積み重ねてきた楽曲をキャリアを縦断するようにピックアップしながら構成されたそのステージは、このユニットの個性と魅力を存分に見せつけるものとなった。スモークが大量に立ちこめる会場。そこにバンドメンバーとともに登場したヨナベが「harhaです、よろしくお願いします!」と元気よく挨拶すると、フロアからは大きな歓声が巻き起こった。そしてその歓声は、ライブのスタートを飾った「おはよう人類」が始まると大合唱に変わっていく。おそらく初見の観客もたくさんいたはずだが、そんなことはお構いなし。のっけからぐいぐい全員を巻き込んで一体感を作り出していく彼女のパワフルで眩しいステージングがこのユニットの魅力の大きな一端なのだと、あらためて実感させる見事なオープニングだった。

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

 ハルハの「最高の掛け声聞かせてください!」という呼びかけから突入した「made in 君」も、「跳びたいやつは一緒に跳んでくれ!」というヨナベの声に応えたオーディエンスの手拍子とジャンプがO-WESTが揺らしたデビュー曲「争奪最前線」も、とにかくどの曲でもharhaのふたりはガンガンオーディエンスを引き込んで一緒になって盛り上がっていく。

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

 歌詞では輪郭のはっきりした物語やテーマを歌っている彼らだが、少なくともライブでのふたりはまったく“閉じない”。「今日はここにいるみんなのために全力で音楽を届ける」――。ヨナベは鳴らす音楽のなかにちゃんとみんなの居場所を作り、そこに両手を広げて人々を迎え入れていく。その根本思想がブレないから、HIPHOPからギターロックまで幅広い音楽性を取り込んだバラエティ豊かな楽曲たちがどれもちゃんと“harhaの音楽”として届いてくるのだ。フロントを担うヨナベのみならず、サウンド面を司るユニットの“頭脳”であるハルハも、隙あらばフロアを煽り、一緒になって音を楽しんでいる様子が見える。そのあたりは、単にトラックメイカーというだけでなく、自身も曲によってラッパーとして最前線に立つこの人ならではのあり方かもしれない。

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

harha - LIVE「人生オーバー」2025.08.29 2nd ONE MAN LIVE "オトナタイコウ"

 とはいえ、やはりharhaのイメージと空気感を決定づけているのは、やはりセンターでマイクを握るヨナベというシンガーの存在だ。歌のスキルはもとより、ちょっとした仕草や表情にまで、彼女が果たすharhaの音楽の“発信装置”としての役割が表れている。たとえば、彼女の要求にフロアが全力の合いの手で応えた「ラブハイプマン」やトラメガをもってパワフルにパフォーマンスする「ベイカーベイカー」のようなアッパーな曲では、終始笑顔でオーディエンスの気分を盛り立てたかと思うと、「恋はずみ」や「ステレオタイプライター」、椅子に座ってのパフォーマンスを披露した「アンデルセン」では心の内側を曝け出すような歌声が、受け取るこちら側の心を突き刺すように響く。おそらく楽曲に対する解像度がとても高いのだろう。そこに、ライブでは照明やレーザーといった演出効果も乗っかっていく。ハルハの内面から生み出される、時にダークな心象もまざまざと描き出されるharhaの楽曲にあって、彼女の歌声はそのなかに潜む希望のかけらを丁寧に拾い集めるように美しく広がっていく。

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

 そんなボーカリスト・ヨナベの凄みを感じさせる一幕が、この日のライブにもあった。中盤、ピアノが不安定なコードを奏でるなか、スタンドマイクで「えくぼ」を歌い出した時のことだ。この時、トラブルでマイクがオフになっており、演奏が一度ストップしたのだが、オフマイクで「ごめーん!」とオーディエンスに笑いかけたヨナベは、その後仕切り直して曲に入った瞬間、それまでのちょっと弛緩した空気を一気に塗り替えるようにして、圧巻の歌声を披露したのだ。アッパーチューンならいざ知らず、「えくぼ」はとてもシリアスな心情を壮大に歌い上げる楽曲だ。その前の「アンデルセン」「すてきなぼくら」からの流れも含めてすごく難しいシチュエーションだったはずだが、彼女は声一発でトラブルを乗り越えてみせた。きっと考えに考えた末でのことではないだろう。おそらく歌うことが何よりも好きなヨナベという人の天性の感覚、歌や楽曲に対する思いの大きさがそうさせたのだと思う。

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

 彼女という抜群のシンガーがいるからこそ、harhaの音楽はどこまでも自由に飛翔できる。終盤に披露された「マスカレード」はこれまでの彼らの楽曲のなかでも一際キャッチーさが光る曲となっているが、そんな曲でのポップ王道ど真ん中のような堂々たる佇まいから、ハルハの音楽的出自が顔を覗かせるようなエッジの立った楽曲まで、あらゆる曲を軽やかに乗りこなし、そこにオーディエンスも同乗させて、ライブはクライマックスに向けてぐんぐん高揚感と一体感を高めていった。

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 「マスカレード」を終えての最後のMC。ヨナベはフロアに「楽しい?」と尋ね、自らも「楽しいね」と顔を綻ばせた。もちろんハルハも満面の笑みでとても楽しそうだった。「みんなが日々私たちを応援してくれるからこういう場が叶って……本当に感謝の気持ちでいっぱいです。これからもみんなの日々にじんわり寄り添うような曲を出していけたらなと思うので、よろしくお願いします」。最後まで彼女は「みんなのために」という姿勢を崩さなかった。ポップミュージシャンである以上当然だろうと言えばそのとおりだが、非常に内省的な側面も持ったharhaの音楽がポップミュージックとして成立するには、メロディやリズムのキャッチーさ以上に、そうしたアティテュードこそが重要なのだろうと思う。

harha(撮影=Victor Nomoto[Metacraft])

 その後ラストの「草縁」まで盛り上げ切って、『オトナタイコウ』は幕を下ろした。冒頭にも書いたとおり、すでに次のワンマンライブも決定。ユニットとして過去最大の規模となるZepp Shinjuku公演には『キボウカクメイ』という力強いタイトルがつけられた。ここから約半年、そのあいだにもharhaからはたくさんの新しい音楽が届けられるだろう。そうやって曲を重ねながらファンとの絆を作り上げて、彼らはさらにパワーアップした姿でZeppのステージに立つはずだ。

harha - 2nd ONE MAN LIVE「オトナタイコウ」【YouTubeMusicWeekend】

■公演情報
『キボウカクメイ』
2026年3月8日(日)Zepp Shinjuku (TOKYO)
OPEN 18:00/START 19:00

<チケット>
スタンディング:7,200円+1drink
チケット最速先行受付:9月15日(月)23時59分まで
イープラス詳細:https://eplus.jp/sf/detail/4200710001-P0030004?P6=001&P1=0402&P59=1

アーティストページ:https://www.stardust.co.jp/talent/sdr/harha/
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