地雷系だった日々と音楽に救われた人生――Яu-a、偽りの自分との決別を刻む1stアルバム『HYPERTEEN.』

Яu-a、音楽に救われた人生

言葉の責任についても考えるようになりました

Яu-a(撮影=三橋優美子)

――今回の1stアルバム『HYPERTEEN.』は、どんな作品を目指したんですか?

Яu-a:10代の自分に何があったかとか、10代の出来事をテーマにしました。10代の日記みたいな感じです。8曲作ることになって、とりあえずコンセプトを8個決めて全部アルバム用に書き下ろしました。

――それぞれのコンセプトを教えてください。

Яu-a:1曲目の「Kill You, Love You」は思春期の話です。「SCANDAL」は共依存と痛みというテーマで書きました。「BLACK DOLL」は見た目に対する醜形恐怖症と摂食障害の話。「花火」は別れ際のカップルの切ないラブストーリー。「Ruby Chocolate」は純粋だったあの頃にはもう戻れないというコンセプトで書きました。

――6曲目の「最近削除したはずの項目」は?

Яu-a:サビでは元カレに対する「もうお前なんていらない」っていう気持ちを歌ってるんですけど、最後は「ヨリを戻したい」とか「復縁したい」という気持ちはもう消したはずなのに、まだ少し未練があるのかもしれない、っていう。そんな気持ちがあることに気づいたことを書きました。「Messy」はいろんな感情が頭のなかにありすぎて、自分で自分がわからなくなってしまったというカオスな感情の曲。「Still 20? Already 20?」はハタチを迎えることに対する歌です。「まだハタチなのか? もうハタチなのか?」っていう。

――先行カットの「SCANDAL」はクールなハウス調の曲ですね。

Яu-a:もともと共依存と痛みというテーマは決めていて、そこから何曲かトラックをもらった時にこのビートがテーマにぴったりだと思って。ビートを聴いた時に、大人っぽい、落ち着いた印象を受けたんです。“かわいい”とは違うトラックだったし、こういうちょっとドロッとした恋愛ソングを書く時は大人っぽいビートを使いたくって。

――「SCANDAL」で自分なりにポイントだなと思う歌詞は?

Яu-a:〈足りていないのならば/確かめ合えないのなら/生きている事を/もっとリアルに感じてみよう〉という部分です。自分自身、生きていることをリアルと思えないような時期があったんですよね。ふわふわな状態でただ日々が過ぎていく、みたいな。そんな自分を変えたくて。〈痛みだけがあたし達を救ってた〉という歌詞があるんですけど、リアルに生きていることを実感する術が〈痛みだけ〉だったふたりを書いたんです。でも、そんなことをしなくても、「自分はちゃんと生きてるんだ」ということをもっとリアルに感じたいと思って書きました。

――アルバムリード曲の「Ruby Chocolate」はどのように作っていったんですか?

Яu-a:ビートを最初に聴いた時、「これは絶対にチョコレートだ!」ってひらめいたんです。で、チョコレートの種類を調べたらルビーチョコレートという種類があることを知って。ルビーには“純愛”っていう宝石言葉があって、チョコレートは甘いから、「甘くて純粋だった私たちに戻りたいけどもう戻れない」というテーマで作ろうと思ったんです。

Яu-a - "Ruby Chocolate - SCANDAL" Music Video

――「Ruby Chocolate」もそうですが、Яu-aさんは歌詞の一人称に〈僕〉を使うことが多くありますよね。

Яu-a:一人称は曲の世界観で決めています。かわいい世界観の場合は〈僕〉って言いたくなるし、強い世界観だったり、強気なテーマの曲は〈わたし〉とか〈あたし〉って言いたいんです。それは自分のなかで明確に区分けがあります。

――今回の1stアルバムは、以前よりサウンドが洗練されて曲調も幅が広がったし、歌詞の書き方も変わったように思います。歌い方も歌詞が聴き取りやすくなっている。

Яu-a:今までの曲には、「矛盾してるな」とか「ちょっと違和感があるな」とか、自分のなかで思うことがあったんです。今回のアルバムではそういう違和感をなくそうと思って、ひとつの物語みたいに書いていくことを意識しました。あと、歌詞に責任感が足りていないなと思っていたので、言葉の責任についても考えるようになりました。

――Яu-aさんは今年7月15日でハタチを迎えました。ハタチを迎えることについて歌った「Still 20? Already 20?」では、〈僕の心臓の中は憎悪と後悔でいっぱい/そろそろそんな自分が嫌にならないか?〉とか〈この世界が大嫌いだった〉などと歌っています。自分のまわりは全部敵だと思っていたんですか?

Яu-a:思ってました。音楽を始める前は、周囲の人への嫌悪感が拭えなかったり、どのような意図であっても自分に関心を向けてくれる人が現れたら相手の人生に踏み込んで、結果的に相手を傷つけてしまうというループでした。そういう自分が怖かった。でも、音楽を始めてから自分を分析する機会がどんどん増えていって、冷静になって自分が自分として生きる方法を探ったり、周囲の人の存在を正面から受け止めながら誠実に自分自身と闘い続けていこう、という感情が芽生えてきたんです。

――「Still 20? Already 20?」には、〈世界は暖かいのかも〉という歌詞も出てきます。これはどんな体験から書いた言葉なんですか?

Яu-a:今までは偽りの自分で生きていないと、一個人として尊重されないんじゃないかっていう不安があったんです。だから、強気なキャラクターを演じてみたり、不自然なほどに好感を狙った態度を見せたり、「尊重されるキャラクターはどれなんだ?」と探し続けていたら、本当の私がわからなくなりかけてしまって。そんななかで音楽を始めて、「誰も私のことを知らないんだ」という安心感から、それまで偽ってきたキャラクターを取っ払ってみたんです。そしたら、共感してくださるリスナーの方やまわりで支えてくれる方がいて。「自分自身のまま生きていても受け入れてくれる人はいるんだ」「自分は今素敵な環境で生きているんだ」って気づかせてくれたんですよね。

――音楽を始めてからの2年間で大きな内的変化があったんですね。

Яu-a:特に趣味もなかったし、それこそ学校もあまり行っていなかったのでコミュニティもなかったんです。そういう時に音楽を始めて夢中になれるものができたから、希望を見つけたというか、明るくなったというか。そういうふうに性格が変わってきたように思います。

――内気なところも変わってきた?

Яu-a:内気なところは、まだ成長段階です(笑)。

――これまでの音楽活動でЯu-aさんを突き動かすパワーになっていたものは何ですか?

Яu-a:活動を始めたばかりの頃は、とにかく自分自身を変えてやるという気持ちが大きな原動力でした。今は2年前の自分からは考えられない自分になってる。私の曲を聴いてくださる方に助けられた毎日でした。

――ハタチを迎えた今、今後はどんなことを原動力にしていきたいですか?

Яu-a:今は、曲を聴いてくださる方に日常のなかで楽しんでもらえるような娯楽的音楽を作っていきたいと思っているんです。その気持ちが主な原動力です。20歳というのは大人として扱われ始める年齢だけど、まだまだ模索や葛藤が多いと思うんです。そんな未完成で子どもっぽい自分の気持ちと、着実に大人への道を進みたい気持ち、どちらも大切にしていきたいです。

■リリース情報
Digital Album『HYPERTEEN.』
配信中

配信URL:https://ru-a.lnk.to/HYPERTEEN

<収録曲>
01. Kill You, Love You
02. SCANDAL
03. BLACK DOLL
04. 花火
05. Ruby Chocolate
06. 最近削除したはずの項目
07. Messy
08. Still 20? Already 20?

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