地雷系だった日々と音楽に救われた人生――Яu-a、偽りの自分との決別を刻む1stアルバム『HYPERTEEN.』

Яu-a、音楽に救われた人生

 2024年1月にリリースした1stシングル「ネオンサイン」がTikTokを中心に話題を集め、約1カ月後に発表した「お前の彼氏寝取ってやったの。」も続けてバイラルヒットして注目を浴びたЯu-aが、1stアルバム『HYPERTEEN.』を完成させた。アルバムはハイパーポップを基軸にハウス、EDM、R&B、2ステップなどのエッセンスを取り入れたダンサブルな仕上がり。基本、歌声は多彩なボーカルエフェクトで無機質に加工されているが、不思議とスウィートで切ないメロウネスを醸し出す。孤独感の裏返しとも言える攻撃的な歌詞と中毒性のあるキャッチーなメロディで同年代からの共感を誘う彼女は、どのような素顔を持ち、どのように10代を過ごしてきたのか。今年7月15日で20歳を迎えたЯu-aに、地雷系だった日々と音楽に救われた人生を明かしてもらった。(猪又孝)

カーリー・レイ・ジェプセン、ちゃんみな……Яu-aが生まれた源泉

Яu-a(撮影=三橋優美子)

――Яu-aさんの記憶にある最初の音楽体験は何ですか?

Яu-a:幼稚園の頃に習っていたピアノです。課題曲を弾くというより、自分でメロディを作って、自由に弾くことにハマっていた記憶があります。

――自分から「ピアノをやりたい」と言ったんですか?

Яu-a:言ってないです。気づいたら習ってました(笑)。

――家にピアノはあった?

Яu-a:アップライトピアノがありました。母が弾いていたんです。だから、教室に行って習うよりも、自分で勝手に弾いているのが好きでした。ピアノは小学校5年生までやってました。

――その後は、どんな音楽を聴くようになったんですか?

Яu-a:小学校4年生の時に洋楽を好きになったんです。きっかけは、CMでカーリー・レイ・ジェプセンの「Call Me Baby」や「Good Time」がすごく流れていて。母が運転する車のなかでもカーリーの「I Really Like You」を耳にして、「3曲ともカーリーが歌っているんだ!」って気づいたんです。そこから彼女の曲を聴いて、女性アーティストをよく聴くようになりました。アヴリル・ラヴィーンとかアリアナ・グランデとか、あとはテイラー・スウィフトとか。YouTubeで見つけていったんです。

――自分のスマホで?

Яu-a:スマホは持ってなかったんですけど、インターネットを使えるデバイスがひとつだけ家にあったので、親にバレないようにこそこそと探してました(笑)。

――小4で洋楽にのめり込むのはなかなか早熟だと思いますが、洋楽のどんなところに惹かれたんですか?

Яu-a:いまだに洋楽を好きになった理由はわからなくて。ただ、「心地好いな」って。カーリーは、ライブ映像を観て憧れるくらいでした。

――きっかけが「Call Me Baby」や「Good Time」ということは、ダンサブルなところに反応したんでしょうか。それともファッションから?

Яu-a:曲調も好きでしたし、ファッションもカーリーとかを真似たりしてました。

――女の子がお人形をコレクションしていく感覚に近いんでしょうか。かわいいものへの憧れっていう。

Яu-a:バービー人形とかは好きでしたね。その延長というのもあったかもしれません。

――そうやって音楽に触れていくなかで、ガツンとインパクトを受けたアーティストは? 

Яu-a:ちゃんみなさんです。ちゃんみなさんのメジャーデビューが2017年なんで、その時期ですね。「未成年」とか「Princess」とか。

――どんなところに喰らいましたか?

Яu-a:最初は「かっこいい!」というだけで聴いていたんですけど、自分が学校に行かなくなっちゃった時期に「PAIN IS BEAUTY」という曲に出会ったんです。ずっと聴いて、ずっと泣いてました。「PAIN IS BEAUTY」で、ちゃんみなさんの歌詞の深さを感じ取るようになったんです。

――「PAIN IS BEAUTY」が自分の境遇と重なったんですか?

Яu-a:そうです。中3の頃から学校へ行っても教室に居られなくなって。高校には進学したんですけど、3カ月でやめて。そこから通信制の学校に行きました。

――学校に馴染めなかったんですか?

Яu-a:馴染めなかったですね。幼稚園の頃から集団行動が苦手で。

――Яu-aさんはひとりっ子ですか?

Яu-a:ひとりっ子です。幼稚園と小学校はなんとか行けていたんですけど、後半は友達がいなくて。中学時代は友達がいたんですけど、また別のことで学校が嫌いになって。小学校の時に、学校の先生に容姿をイジられたんですよね、「ブサイク」とか言われて。それに加えて、クラスメイトともあまりコミュニケーションがうまく取れなかったので、学校がイヤになって。中学時代は、学校には一応行ったんですけど、休み時間はトイレにこもって。あとは保健室に行くというような感じでした。

――そんなふうに過ごすなかで、自分の居場所を音楽に見つけるようになったんでしょうね。

Яu-a:それはあったと思います。

目立つのは苦手なんです。でも、「歌いたい」という気持ちはある

Яu-a(撮影=三橋優美子)

――当時、音楽以外でハマっていたことはありますか?

Яu-a:美容です。メイクとかダイエットとか、とにかく自分の見た目を変えることに夢中になってました。SNSやYouTubeでいろいろ調べて。

――その経験が、今年5月に出した「BLACK DOLL」という曲に繋がっているんですね。

Яu-a:そうです。

Яu-a 『BLACK DOLL』 Music Video

――自分で音楽を作るようになったきっかけは?

Яu-a:高校3年生の時に、当時付き合っていた方とお別れして。高3だから進路もどうしようと思って、その時に「ずっと音楽は夢だったからやってみよう」って。「とりあえず曲を作って出し続けてみよう」「継続だけはしてみよう」と思って始めたんです。

――いつ頃から、音楽が夢だったんですか?

Яu-a:明確に夢と認識していたかはわからないんですけど、小学校の登下校の時間とか、授業中の暇な時とか、アーティストになっている自分を想像することがよくあったんです。

――どんなビジュアルが浮かんでいたんですか? 日本の女性アイドルのような姿? それともアヴリル・ラヴィーンやテイラーのようにギターを弾きながら歌っているとか?

Яu-a:アイドルじゃないんです。外国人のような金髪で、顔はぼやけていてわからない。ギターは持ってなくて、マイクを持っているだけ。ライブシーンのイメージでした。

――歌うことは好きだったんですか?

Яu-a:歌は全然ダメでした。家でも歌ってないし、カラオケももちろんダメ。

――「ステージに立ってみたい」という欲求があったんでしょうか。それとも「私を見て!」という承認欲求?

Яu-a:自分でもわからないんですけど、目立つのは苦手なんです。見られるのも苦手だし。でも、「歌いたい」という気持ちはあるんです。ダンスを独学でやってたから「踊りたい」もある。表現したい欲求もある。

――美容にハマっていたから、ヘアメイクもしたい?

Яu-a:そう、ヘアメイクもしたい。じゃあ、どうしたらいいんだろう?って(笑)。

――変身願望があったんでしょうか。学校は苦手、性格も内気、「こんな自分を変えたい!」っていう。

Яu-a:ああ、それはめちゃめちゃありました。小学校4年生くらいの時に「どうやったら明るいキャラクターになれるんだろう?」と思って、ノートに明るくなるための方法を書き出して、実践したんですよ。

――ノートに書き出すなんて真面目ですね。ピュアじゃないですか。

Яu-a:それを中学生くらいまで続けたんですけど、諦めちゃって。そんな自分を受け入れるっていう方向にしたんです。

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