原因は自分にある。アンコールなしの一発勝負 「待ってろよ、東京ドーム!」――120分の物語『序破急』

原因は自分にある。120分の物語『序破急』

 原因は自分にある。が、7月12日、13日に国立代々木競技場 第一体育館にて『ARENA LIVE 2025 序破急』を開催。7月7日に結成6周年を迎えた彼らにとって、過去最大規模のワンマンライブとなった。本稿では、7月13日公演の模様をレポートする。

 ライブタイトルの『序破急』は雅楽の舞楽から出た概念で、受け手を物語の世界に引き込む構成法として知られている。会場に足を踏み入れると、これから始まる物語へと誘うような光景がすでに目の前に広がっていた。前方のスクリーンでは無数の羽根がひらひらと宙を舞い、客席では観測者(ファンの呼称)たちが掲げるペンライトが鮮やかに光っている。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

 次第に、スクリーンに映る羽根の数が減っていき、完全に消えたところでライブがスタート。切り替わった映像には、天使の姿をした大倉空人、小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、武藤潤、杢代和人、吉澤要人が映し出された。そして、その映像から飛び出したように、7人が「無限シニシズム」を歌いながらゴンドラで上空から降りてくる。白いローブをまとい、フードで顔を覆った7人は、まるで天使がひっそりと天空から地上へと舞い降りてきたようだ。「Museum:0」の冒頭、〈Welcome Back! Museum: Zero〉のフレーズを高らかに歌い、一斉にローブを脱ぎ捨てた7人は、羽のようなモチーフがあしらわれたモノトーンの衣装を身に着けている。映像とリンクした、美しくて幻想的な幕開けだった。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)
大倉空人
原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)
小泉光咲
原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)
長野凌大

 「in the Fate」と、4月にリリースされた最新アルバム『核心触発イノベーション』の収録曲を続けて届けたのち、「0to1の幻想」の後半で花道を勢いよく駆け抜けた7人は、センターステージで「嘘から始まる自称系」を披露。それぞれのメンバーカラーの照明が輝くなかでひとりずつダンスパフォーマンスを繰り広げる。メインステージに7人が再び集結して届けたのは、.ENDRECHERI./堂本剛が提供したラブソング「LLL」だ。彼らが「愛してる」と歌ったことがないと知った堂本が、あえてサビに〈君を愛している〉という歌詞を入れた同曲。7人は集まった観測者へまっすぐに愛を伝えた。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)
武藤潤
原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)
杢代和人
原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)
吉澤要人

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

 ここで再び、スクリーンに映像が流れ出す。路上、オフィス、クラブ、飛行機……天使の姿をしたメンバーが、現実の世界に降り立った映像だ。「フィナーレ」が流れ出すとともにステージが明るくなり、透明なボックスに入って登場した7人は、日常に溶け込むかのようなカジュアルな衣装にチェンジしている。ボックスから出て、メインステージに散らばると無数のキャンドルが灯るなかで「蝋燭」、青い光がきらめくなかで「夏の二等辺大三角形」と、切ない歌声を響かせた。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

 そこから7人はトロッコに乗り込み、「方程式は恋模様」、「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」、「推論的に宇宙人」を歌いながら、アリーナ席の奥の奥まで笑顔を振りまいていく。MCでは、昨日誕生日を迎えた吉澤に続き、3日後に誕生日を控えた長野をお祝いする一幕もあった。和やかなムードに包まれるなかで再びトロッコに乗り込んだ7人は「マルチバース・アドベンチャー」、「Go to the Moon」、「多分、僕のソネット」を届けながら、今度はスタンド席へと向かっていく。どんなに会場が広くなっても、誰ひとり置いていかない――そう伝えているようだった。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)
7月12日公演の様子

 メインステージに戻って披露された「原因は君にもある。」でも観測者たちのシンガロングが響きわたり、その光景に笑みを浮かべる7人。感極まった桜木が、「貴方らしく」で涙を見せながら、「みんな最高だぜ!」と熱い想いをぶつける。そんな感動的なムードに包まれるなかで、スタンドマイクで歌われた「『誰も知らない歌』」では、グループの結成6周年を祝うようにキラキラと紙吹雪が舞っていた。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

 しかし、ライブはこれで終わらない。ここまでが物語の“序”、“破”なのだ。

 再び始まる映像。それは、今までのものとは明らかに雰囲気が異なる。オフィスで怒鳴る上司に、レストランで食事を残していく人々。さらには、不思議な姿に好奇の眼差しを向けられ、許可なく写真を撮られる天使たち……。怒りや悲しみを抱えた様子の天使たちは、それぞれ自らの手で背中に生えた羽をむしり取っていく。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)
桜木雅哉

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

 映像が終わると、黒い衣装でセンターステージに倒れ込むメンバーの姿が。立ち上がって「Mania」を歌い出した彼らの背中には、真っ赤に染まった羽の残骸のようなものが見られる。曲の最後に、黒い檻を映したシースルービジョンが降りてきてセンターステージに立つ7人を囲う。ダークな世界観が広がっていくなかで届けられたのが、「Operation Ego」だ。矢継ぎ早に吐き出される言葉と機械的なダンスに目が離せない。さらに、7人は「遊戯的反逆ノススメ」、「Paradox Re:Write」と激しく歌い踊る。そうしてメインステージに戻って横一列に並ぶと、客席に背を向けてステージ下へと消えていった。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

 そこから流れ出した映像は、今までのストーリーを逆再生したもの。7人の天使が地上に降りる場面に戻ったところで吉澤の舌打ちが響き、「因果応報アンチノミー」へと繋がっていく。〈おかえりエンジョイ〉――サビの歌詞が、先ほどの時間が巻き戻っていく映像と重なる。天使たちが目にした、人間の醜さが表れた世界。それらは〈自分次第〉で現実は変わるというメッセージだったのだろうか。その答えは、各自が〈自問自答〉しながら導き出すべきなのかもしれない。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

 曲が終わると同時に7人の姿は消え、スクリーンにはライブ冒頭と同じように無数の羽根が舞っていた。まさに“序破急”で展開された約120分の物語。アンコールはなく、“Next Stage”として10月15日に4thシングル『パラノイドランデブー』がリリースされることが発表されたのみだ。緻密な構成と芸術性の高いステージの余韻に浸りながら、「遊戯的反逆ノススメ」の途中で大倉が放った言葉が反芻される。「待ってろよ、東京ドーム!」――その道は決して遠くないはずだ。そう思った。

原因は自分にある。(撮影=Hanna Takahashi・堀内レイ)

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