Mashoeが音楽に向けるピュアな気持ち 『ブルース・ブラザース』との出会い、ブラックミュージックが育んだ表現の核

Mashoe、音楽へのピュアな眼差し

「お前の音楽はつまらん」先輩に言われた言葉からの影響

ーーずっとマスタリングまでご自身でやられていたのは、ひとりで作り上げることに対して今まではこだわりがあったんですか?

Mashoe:さっき歌詞の話でも言った「弱い人間」という部分もちょっと絡んでくるんですけど、人と制作する時に、「もっとこうしてほしい」って言えないタイプなんです。音楽を始めて間もない頃は人とセッションすることもちょっとあったんですけど、そういう時にも納得いかないことが多くて。「それなら自分でやった方がいいかな」っていうふうに思っていたら段々と、自分でこだわりを持って作り始めて。とにかくサウンドを作るのがめちゃくちゃ好きなんですよね。言ってしまえばミックスもアレンジの延長ですし、そこを人に任せることで、自分が持っていたバランスが崩れてしまった時に、ストレスというか……「ちょっと違うんだけどな」と思ってしまう。そういう部分が数年前までは強かったんです。サウンドへのこだわりは今もあるんですけど、考え方としては最近は変わったなと思います。今は、「新しい風が吹いたらどうなるんだろう?」っていうワクワクがあるので。

ーーここからは、Mashoeさんがどのようにブラックミュージックに興味を持つに至ったのか、あるいは曲作りにのめり込んでいったのかという部分を掘り下げたいなと思うんですけど、そもそも『ブルース・ブラザース』の映画を観たのはいくつぐらいの頃だったんですか?

Mashoe:遡ると、そもそも僕は15歳ぐらいからアコースティックギターで弾き語りをしていたんです。高校一年生、二年生くらいから弾き語りでライブをするようになったんですけど、そこがキャリアのスタートなんですよね。僕は当時、めちゃくちゃフォークや弾き語り系のポップスを歌っていたんですよ。玉置浩二さんや秦 基博さん、ゆず、コブクロ……そういうアーティストの四十番煎じぐらいのことをやっていたんですけど。で、初めて東京でライブした時、初めて対バンした二つ上ぐらいの先輩が、僕のライブを観たあとに急に楽屋に入ってきて、「お前の音楽はつまらん」と。

ーーへえ(笑)!

Mashoe:で、「これを聴きなさい」って、スティービー・ワンダーの「Superstition」が入っているアルバムがあるじゃないですか(『Talking Book』)。あのアルバムを聴かされたんです。そしたら、もうなんか……よくある表現ですけど、「背中に稲妻が走った!」っていう、本当にそういう経験をして。「リズムがある音楽ってこんなにかっこいいんだ!」って、声が出るぐらい感動したんです。そこから、「アコギでファンクする」という目標が生まれて、ハナレグミのようにレゲエにもルーツがあるような方々の音楽も聴きながら、キャリアを進めていったんです。ただ、僕が19歳のときに神経系の難病にかかって、一時的にアコースティックギターが弾けなくなってしまって。三カ月半ぐらい入院していたんですけど、僕の病気は治療という治療がなくて、基本的に経過観察のリハビリだけの生活だったので、とにかくめちゃくちゃ暇だったんですね。

ーーはい。

Mashoe:その時に、どんなきっかけだったのかは忘れたんですけど、ダニー・ハサウェイのライブアルバムを聴いて。最初にスティービーのアルバムと出会った時と同じくらいの稲妻が走ったんです。そこから「ピアノのソウルをやってみたい」という気持ちが芽生えて。当時は指も動かなかったんですけど、退院した2日後くらいにメルカリで88鍵のピアノを買って。で、ピアノのソウルを探っていくうちに、レイ・チャールズと出会うんです。そこからダニーやジェームス・ブラウン、アレサ(・フランクリン)、レイ・チャールズ……そういう方々の音楽を聴いていく中で、ふと『ブルース・ブラザース』と出会うんですよね。人生のターニングポイント的なタイミングで、ブラックミュージックに出会わせてもらえたおかげで、今に至っているのかなという感じがしますね。

ーーそもそも、フォークの弾き語りでライブハウスに出られていた頃も、年齢的にはかなり若かったということですよね。

Mashoe:そうですね。15、16歳の頃からなので。だから、もう丸10年くらいですね、音楽を始めてから。

ーーその年齢でライブハウスのステージに立つのって、勇気がいりそうな行為だなという気もするんですけど、そこには自然と飛び込んで行けました?

Mashoe:そうですね。さっきの話でちょっと割愛したんですけど、厳密に言うと、もっと前には「ネットで歌う」っていう経験もあったんです。ニコニコ動画とか、「歌ってみた」みたいなものに触れていたおかげで、人前で歌うことに対してもストレスがなかったんだと思います。

ーーなるほど。歌うことは元々お好きでしたか?

Mashoe:好きでしたね。親の影響でよくカラオケには連れて行ってもらっていましたし、子どもの頃から歌は一番近いものだったと思います。うちの母親はもともとスナックのチーママだったみたいで、もっと遡ると松田聖子みたいなアイドルにも憧れていた人で、歌がめちゃくちゃうまいんですよ。父親はそのスナックに通っていたみたいで、父親もめちゃくちゃ歌がうまかったんですよね。それで、家でも、車の中でも、ラジオやCDが流れているのは当たり前の家で。静かな環境は許せない、何か鳴っていないと気持ち悪い、みたいな家庭だったんですよね。その中でも、とりわけ歌は一番近い音楽だったのかなと思います。なので、僕はプロデューサーの仕事もいろいろやらせてもらっていますけど、一番ベーシックな部分は「やっぱ歌なのかなあ」というのはあるんですよね。僕は「歌で表現したい」という感覚がそこまで強い人間ではないんですけど、ただ、「歌がある音楽は美しい」と思う人間ではあるので。僕自身、心が動くのは結局、歌なんだなと思います。

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