Mashoeが音楽に向けるピュアな気持ち 『ブルース・ブラザース』との出会い、ブラックミュージックが育んだ表現の核

Mashoe、音楽へのピュアな眼差し

 1998年生まれ、神奈川県出身のシンガーソングライター/トラックメイカーMashoe(マシュー)が、メジャーレーベルからの1stシングルとなる「All I Need」をリリースした。ファンクやヒップホップといったブラックミュージックが根源的に持つパワフルなエネルギーを、この2025年に食らわせる強力な1曲だ。リリックもすごい。〈君〉という存在を猛烈に追い求める〈僕〉の、一方通行気味にも思える愛情を、一切のシニカルさを排し、直情的に書き切っている。「君が欲しい!」という、その愛と欲望と飢餓感が1曲の中で爆走している。〈君が今どこで何してるか 知りたくてたまんない/そのためなら 僕はこの先どうなったって構わない〉ーー最高だ。あまりにも真っ直ぐに、弱さも愚かしさも曝け出して、ひとつの命が燃え上がる姿を描き出している。楽曲にはOvallの関口シンゴとShingo Suzuki、Ovallと同じくorigami PRODUCTIONS所属のHiro-a-keyも参加。楽曲にさらなる重みと深み、そして華やかさを与えている。

Mashoe - All I Need (Official Music Video)

 今回、リアルサウンドではMashoeに初インタビュー。「All I Need」が生まれた背景、そして自身の音楽キャリアやルーツを振り返ってもらった。ブラックミュージックに刺激を受け続けながら、ピュアに音楽に向き合い続けるMashoeという音楽家。その存在が、このインタビューを読めばどうしようもなく愛おしく思えてくるはずだ。

『ブルース・ブラザース』で気付いた音楽の素晴らしさ

ーー今回、Mashoeさんの1stシングル「All I Need」を聴かせていただいて、僕がとても惹かれたのは、そのエモーショナルさや力強さだったんです。たとえばR&Bって、ここ10年くらいの流れで言えばメロウでチルな雰囲気のものを主流なものとして思い浮かべる人も多いかもしれないですけど、この「All I Need」はもっと直情的でエネルギッシュな楽曲で。ご自身としては、どんなイメージや狙いを持って作り上げた楽曲だったのでしょうか?

Mashoe:そもそも僕が音楽を作るにあたって意識していることが、「いかに聴いている人を踊らせられるか?」ということなんです。というのも、僕がブラックミュージックに惹かれるきっかけになったのが、映画の『ブルース・ブラザース』なんですよね。映画の中でジェームス・ブラウンやレイ・チャールズが歌い出した瞬間に、みんなが踊り出す。あれを観た時に、「音楽って、人を動かすパワーを持っているんだ!」と思って。それが音楽の特に素晴らしい部分だなと思ったんです。それ以来自分は、落ち着いて聴いてもらうというよりは、もっと「体を揺らして楽しんでほしい」という目的で作っている部分があって。インディーズの頃は、とりわけゴスペル的なアプローチも多かったんですけど、今回の「All I Need」は、よりダンサブルな曲を作ろうという意識を持って取り組んだ部分はありました。

ーー歌詞も、激しいくらいの愛情や飢餓感が歌われているように感じました。

Mashoe:今までは言葉の響きやリズムだけで歌詞を書くことが多かったんですけど、今回はもっと自分の弱い部分というか、人間的な部分を曝け出して書くのがいいんじゃないかと思って。そもそも僕自身、めちゃめちゃ女々しいんですよ。根本的に打たれ弱いし、メンタルも弱いし、なんか言われたらめっちゃへこむし。「All I Need」は恋愛を題材にした曲ですけど、実際の恋愛も振り回されるタイプなんですよね。そういう部分を今までは隠してきましたけど、これからは逆に自分を曝け出していくことで、「こういうことあるよね」と思ってもらえるのかなと思って。そうやって自分に共感してもらえる喜び、というか……そういうものを最近は感じるんですよね。

ーーなるほど。

Mashoe:「All I Need」は、赤裸々に歌詞を書いていくうちにだんだん自分も熱くなってきて、筆圧も強くなっていく……そんな感じでしたね。思いを吐露するように書いた曲です。僕の内面ですね。

ーーより歌詞を赤裸々に書こうという心境になったのは、きっかけがあったんですか?

Mashoe:自分の人生が変わったというよりは、音楽を作っていく中で、自分が一皮剥けるにはどうしたらいいかな? と思って、周りのミュージシャンによく話を聞いたりしたんです。その中で、もっと「自分の素を見せる言葉」が必要なんじゃないの? と言ってもらったりして。僕は普段生きていて、かっこをつけてしまうというか、自分を大きく見せようとすることが多いんです。基本的にいじられキャラですし、それもおいしいと思って生きてはいるんですけど、意外とそこもヴェールを被って生きている感じがして。実は、そもそもの生き様から、自分の内面を見せることができていないのかもしれないって、周りに言われて気づいたんです。

ーーなるほど。

Mashoe:だから、自分で音楽を作る時ぐらいはヴェールを脱いでもいいのかなって。自分の音楽は捌け口であってもいいし、それこそが創作なのかなと思ったんです。そういうことを周りの人間に言われて気づいてきたという感じですね。今までは、何かで悩んだ時も、やり場のない感情を飲み込んで生きてきたんですけど、最近はそうではなくなったかもしれないですね。その熱量をそのまま歌に込めることで、すごく熱量の高いものが生まれてくるということを知りましたし、それが結果的に、共感を生むということにもちょっと気づけた感じがします。

ーー「All I Need」の歌詞には、「弱さ」が「強さ」に反転する瞬間があるというか。「弱い自分を曝け出す」ということ自体に、すごく「強さ」があるっていう、ちょっとアンビバレントな感情かもしれないですけど、そういう感覚がこの曲にあるのはすごく伝わってきます。音楽的にはダンサブルであることを意識されたということですけど、具体的にはどんなふうに踊らせたいという思いがありましたか? 個人的には、オールドスクールのヒップホップとか、80’sのファンクやディスコとか、そういう音楽に通じる野性味を感じました。

Mashoe:全体的にファンキーな方に行きたいとは思っていて。「シンプルに踊ってほしい」ということを目的として作った部分はありました。僕、普段はジャズやフュージョンも好きで聴きますし、今まで作ってきた曲にはそういうルーツも随所にも出ていたんです。コードワークやキーもあっちこっち行ったりするような感じで。でも、今回の「All I Need」に関しては、もっとR&Bやヒップホップの様式美を意識したというか、循環のコードで、すごくシンプルな強いコードで行ってみよう、という感じで。無駄な情報をなるべく取っ払って、とにかくベースとドラムだけで踊らせられるような曲になったらいいなと思いました。ベースとドラムがカッコよければ、めちゃくちゃ踊れる曲になるんだって、最近改めて思うんです。そういう意味では、ある種、原点回帰的な曲という感じもします。

ーー今回、ベースにはOvallのShingo Suzukiさん、ギターには同じくOvallの関口シンゴさんが参加されていますね。

Mashoe:そうなんですよ。そもそも僕はOvallのヘビーリスナーだったこともあって、いつかご一緒したいとは思っていて。今回、英詞の補作でOvallと同じorigami PRODUCTIONSのHiro-a-keyさんにも入っていただいたんですけど、ディレクターと「竿(ギターやベースのような弦楽器)をどうしようか?」と話している中で、せっかくorigamiにお問い合わせすることだし、「どうですかね?」と提案して、ディレクターを通じてお願いしてみたら、快く引き受けてくださって。最初、デモの段階では自分で、MIDIで打ち込んでいたんですけど、実際に生で弾いてくださったテイクが来た瞬間に、本当に両手がハンズアップしましたね。これはもう、本当にお願いしてよかったなと思いました。誰にも負けない音源ができたんじゃないかって、そのくらいテンションが上がりました。

ーーベースもギターも最高ですよね。

Mashoe:本当に。今まで、あまり他の人と自分の楽曲を作るという経験がなかったんですよ。今までずっと、マスタリングまで全部自分で仕上げるスタイルだったので、今回みたいに「どんなものが来るのだろう?」ってワクワクしながら注文した経験もほとんどなく。それが今回、もう本当にバッチバチの好プレーをしていただいて。リモートでのやり取りだったので、まだ直接お会いしておらず、お会いしたら最大級の感謝を述べていきたいですね。最高のテイクをいただきました。

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