若者のカリスマ・ヤングブラッド、“推し活”全盛の時代に『Idols』で届ける“自分自身”と向き合う重要性

ここまでの話を聞いて、クラシックロック/ポップスからの影響が強いことから「もしかしたら単なるフォロワー的作品で終わってしまうのではないか」と懸念する方もいるかもしれないが、そんな心配はご無用。どの曲も非常に現代的に響くと同時に、どんな時代に聴いたとしても古いとは感じない、むしろ新鮮になり続けるエヴァーグリーンな作品だと断言できる。と同時に、歌詞には2025年という混沌の時代を生きる者へのヤングブラッドからのメッセージもしっかり込められていることから、より同時代性を感じ取ることができるはずだ。
自分ではなく他者にアイデンティティを求めてしまう昨今の風潮において、ヤングブラッドはこのアルバムのなかで“偶像崇拝(=Idols)”というテーマを扱いつつも、「Idols Pt. I」では〈All the girls are boys/All the boys are girls〉(女の子達はみんな 男の子/男の子達はみんな 女の子)、〈Living like idols, if we want to be/Flying through the obstacles of emancipated dreams〉(アイドルのような生き方を もしも僕らが求めるのなら/自由な夢を邪魔する物を跳ね飛ばして羽ばたこう)と歌い「君は君なんだ、君だからこそ素晴らしいんだ」と説く。
また、「Change」のなかでは〈Oh won’t you ever stay the same〉(ああ、いつまでも同じままではいられないだろ?)、〈What have you got to inspire/Ready to go but theres no change/Who do you really admire?〉(君は何からインスピレーションを得ているの?/出て行く準備は出来ていても、何も変わらない/君が本当に憧れているのは誰?)、ラストナンバー「Supermoon」では〈All you are is a self fulfilling prophecy/Product of your own temptation/Live in your imagination〉(君は自己暗示をかけて期待を現実にしてるだけ/自分自身の誘惑の産物/想像の世界で生きている)と問いかけ続ける。
他者に価値を見出すことで生きる希望を得ることは決して悪いことではない。しかし、その世界のなかだけで完結してしまう生き方は危険ではないか……昨今の“推し活”にも通ずるこの風潮に対するヤングブラッドの危機感が、自身がかつて憧れたアイドルたちから影響を受け、自分の血や肉と化し「ヤングブラッド以外の何者でもないオリジナル」へと昇華させた音楽を通じて綴られていくのは、なんとも痛快だ。そういった意味で、彼はこの新作を通して単なる“ティーンの代弁者”から“2020年代のイギリスを象徴する表現者”へと成長するのではないかと、筆者は冒頭で述べたのだ。
サブスクを通じて気軽に彼の音楽に触れるのもいいだろう。しかし、本作においては歌詞や対訳をじっくり読みながら、リスナーそれぞれが自分自身と向き合うことこそ正しい接し方なのかもしれない。日本盤限定で用意された“クロス型スペシャル・ソフトパック”もパッケージ(CD)ならではの仕様であり、日本盤CDのみ『怪獣8号』でお馴染みの「Abyss」がボーナストラックとして追加収録されている。これから初めてヤングブラッドに触れるというビギナーにも嬉しい施策であり、手に取ってこそわかるその特別さをぜひあなたにも感じていただきたい。
そして、ヤングブラッドはこの8月に開催される『SUMMER SONIC 2025』で3度目の来日を果たす。充実の最新作を携え、彼がどんなステージを見せてくれるのか、そして我々にどんなメッセージを届けるのか。ぜひこちらも楽しみにしていてほしい。
<編集部追記>
ヤングブラッドは、『Idols』にて全英アルバムチャート1位を獲得した(※1)。本記録により、イギリスのロック・ソロアーティストとして史上最速でアルバム3作連続全英1位を達成。これを受けてヤングブラッドは、自身の公式Instagramで下記のようにコメント(※2)している。
「このアルバムを買ってくれた人、聴いてくれた人、シェアしてくれた人、話題にしてくれた人、ストリーミングしてくれたすべてのみなさん、本当にありがとう。(中略)音楽を作ることが心から大好きだし、こうして続けていられるのは、みなさんの愛とサポートがあってこそ。本当に感謝してるし、それを決して当たり前だなんて思わないよ。このアルバムは、4年の歳月をかけてようやく完成したもの。ついにここに届けられた。大きくて、大事なことを詰め込んだ作品です。これをライブで届ける日が待ちきれません。音楽が“本来あるべき形”でみんなと一緒に体感できるその瞬間を。」
※1:https://www.officialcharts.com/charts/albums-chart/
※2:https://www.instagram.com/p/DLaW7L3tolH/?img_index=1
■リリース情報
4thアルバム『Idols』
発売中
価格:¥3,630(税込)
仕様:クロス型スペシャル・ソフトパック(歌詞・対訳・解説付)
配信リンク:https://umj.lnk.to/YUNGBLUD_IDOLS
■関連リンク
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