UNFAIR RULE 山本珠羽が語る“20歳の私” 誰かのために歌いたくなった――ソロだから綴れた等身大の音楽

山本珠羽が語る“20歳の私”

 UNFAIR RULEのボーカルとして活動する山本珠羽が、ソロ弾き語り作品『20』をリリースした。バンドとは異なるスタンスで、恋愛、孤独、音楽への思いを静かに紡いだ新曲5曲と、既存曲の再録を含む全8曲を収録。ささやかな決意を綴った歌には、バンドでは表現しきれない“今”の珠羽が詰まっている。20歳という節目の1年を通じて見えた、ソロだからこそ語ることのできる、赤裸々で等身大の音楽に迫る。(編集部)

「幸せも悪くないなと思えるようになった」──20歳を迎えた心情の変化

──珠羽さんの弾き語りEPが出るのは『かくしごと』以来。前回は会場限定だったのに対し、今回は全国流通盤となります。今回『20』というEPを作ろうと思ったのはどうしてだったのでしょうか?

山本珠羽(以下、山本):弾き語りライブでしかやらない曲があって、その曲たちを聴いてもらいたいと思ったからですね。特に“20歳になってからの自分”を聴いてほしいなと思ったのと、その曲はバンドの曲にはしたくない曲が多くて。

──UNFAIR RULEでも珠羽さんの実体験を歌詞にしていますが、UNFAIR RULEとソロで曲にする出来事や曲はどのように住み分けているのでしょうか?

山本:うーん、なんとなく、です。アコギで作って、それをメンバーに渡すか、渡さないかの違いなんですけど。あくまでも、なんとなくで判断しています。バンドでアレンジするとよさが消えちゃうこともあるし、弾き語りのほうが歌詞がしっかり聞こえるから、歌詞を聞かせたいなって思ったら弾き語りの曲にする感じです。

──歌詞やサウンド感からなんとなく?

山本:そうですね。『20』の収録曲だと、「告白」と「はんぶんこ」は割と幸せな曲なんですけど、それはバンドだと恥ずかしくて歌えないかもしれないですね。大声で歌えないというか。

──大きな声で張り上げて歌うかどうか、みたいなことも線引きのひとつなんですね。

山本:そうなんだと思います。

──「20歳になってからの自分を聴いてほしかった」とのことですが、20歳になる前と、なった後で、作る曲にどのような変化があるのでしょうか?

山本:人に優しくできるようになる余裕ができたなと思いますね。それまでは自分のことで精いっぱいで……特に『ひとりごと』に入っている「Clone」という曲を今聴くと、いかに自分のことで頭がいっぱいで、人のことも傷つけていたかがわかる。あとは、幸せでいることに居心地の悪さを感じている自分がいて。不幸せなほうが自分らしいというか。

──ああ、なるほど。周りから見ると、もちろん幸せでいてほしいですが……。

山本:お客さんからも言われます、「珠羽ちゃんが幸せでありますように」って(笑)。でも20歳になってから、自然と人に優しくできるようになったし、幸せも悪くないなと思えるようになった。その変化を、今回のEPで出したいという気持ちがありました。

──その変化は、曲にしたことで気づいたんですか? それとも変化に気づいたから曲を作った?

山本:「20」という曲を作ったときに、最初に前半部分ができて、後半をどうするか悩んでいたんですね。結局後半も含めて完成したのは今年の頭。その間に成人式に行って、地元の友達と再会したことで、変化が生まれたことに気づきました。この曲の前半部分は〈期待しないのは/いつからだっけ〉という歌詞もあって内省的なんですけど、後半は「みんなのために歌わなきゃ」っていう気持ちになっていて。私はずっと自分のために歌を歌っていたんですけど、友達と話しているうちに、周りにいる人たちが私の音楽を聴いて頼ってくれたらいいなと思うようになったんです。その変化が顕著に出たのが、この曲ですね。

──「友達に頼ってもらいたい」とか「みんなのために歌わなきゃ」と思うようになったのはどうしてだと思いますか?

山本:私が音楽を始めたのは10代の頃。当時は私より年上のお客さんも多かったし、その人たちからしたら、18、19歳の私に「頑張れ」とか言われても「若いのに何言っているんだ」とか思われるだろうなあと思っていて。でも自分が20歳になって、学生のお客さんも増えた。そう思ったら、あんまりくよくよしてられないし、ちょっとでもみんなの生活の支えにならないとなって思ったんです。そう思ったのは20歳になったことが大きかったと思います。

──ちなみに、10代の頃「20歳の頃にはこうなっていたい」といった理想像は何か描いていましたか?

山本:うーん、ないかもしれない。明確に、たとえば「20歳のときにはめちゃくちゃ売れていて」とか考えていたとして、それができなかった時に、私はくじけてしまうタイプだから。夢は掲げていないけど、今、やりたかったことをやれているから、それが夢が叶っている状態なんじゃないかなと思います。ただ……20歳になるまでに卑屈になりすぎたなとは思いました。「20」の前半の歌詞を読んでいても思うんですけど。「こんなに人に期待せん、とか言う20歳おらんやろうな」って(笑)。

──実際、「20」というタイトルで、EPの1曲なので希望に満ちた曲かと思ったら、〈いつからだっけ/期待しないのは〉という歌詞があって驚きました。

山本:正直、後半の歌詞ができてから、全部をその雰囲気に書き換えるという選択肢はあったんです。だけど前半も私らしいかなと思って残した結果、こういう曲になりました。今は前半部分みたいなことを思わないかもって思う。

──そう思うと、かなり考え方が変わりましたね。

山本:そう。だから本当に20歳という1年は、私にとってものすごく大きかったです。

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