UNFAIR RULE 山本珠羽が語る“20歳の私” 誰かのために歌いたくなった――ソロだから綴れた等身大の音楽

山本珠羽が語る“20歳の私”

「弾き語りのCDを出せるのも、UNFAIR RULEのメンバーがいてこそ」

──2曲目は、割と幸せな曲だという「告白」。この曲の〈君の前ならチークはいらないかしら〉というフレーズは先日Xにも投稿されていましたね。すごく素敵なフレーズですが、このフレーズと曲ができた背景を教えてください。

山本:私が一番女の子でいられる人と出会って、それこそ「幸せでいてもいいな」って思った。私、赤面症なんですけど、その人の言葉でめっちゃ顔が赤くなるんです。それを歌詞にしました。

──一緒にいると嬉しい言葉をたくさんもらうということなんですね。これまで楽曲で描いてきた恋愛と趣が違いますが、もしかして……新しい恋愛をしているのでしょうか?

山本:はい(笑)。

──だから、自然と幸せな曲が生まれてきたんですね。

山本:しかも、前の人たちとは違うタイプの人で。人にあまり言えないネガティブな面もわかってくれる、私と同じような人間というか。「ふたりで幸せになりたいね」って思ったんです。ちょっとずつでいいから、お互いのわかるところを理解しながら、徐々に幸せになれたらいいなって。でも私はストレートには言えないので、遠回しな言葉を詰めて、その曲に「告白」っていうタイトルをつけて自分の気持ちを伝えています。

──今までは「嘘」や「内緒」という曲が並んでいたのに、「告白」というタイトルの曲ができたというところにも変化を感じます。

山本:はい、言おうとはしています(笑)。

──「はんぶんこ」も含めて、幸せな感情を曲にしてみていかがですか?

山本:小っ恥ずかしいですね。「告白」は弾き語りライブでも何回かやったんですけど、ちょっと気持ち悪い(笑)。まだ慣れないです。

──ライブで歌ううちに馴染んでくるといいですね。

山本:私、「そばにいます」とか「一緒にいようね」みたいな歌詞を歌うことが苦手でずっと避けてきたんです。ほかの人が歌うぶんにはいいんですけど、私がそれを歌うのがどうしても気持ち悪くって。だけど、「この人になら歌える」と思って作ったのが「はんぶんこ」。だけど、この曲は、その人にだけじゃなくて、いつも私やUNFAIR RULEの曲を聴いてくれる人、「支えです」って言ってくれる子たちの心の拠り所にもはなれたらいいなと思いました。私は、その人に書いたし、そうやって歌う日もあるけど、お客さんに向けて歌いたいなと思う日がこれからありそうな曲だなって。

──「はんぶんこ」は指弾きで、フォークソングのようなサウンド感も印象的です。

山本:これまではアルペジオかストロークしかしたことがなかったんですけど、弾き語りのCDを作ると決めた時に、弾き語りでは難しいことをやろうと思って。「告白」の跳ねる感じとか、「はんぶんこ」の指弾きなど、ちょっと自分の中での挑戦を入れてみました。

──「生活」は〈捨てきれない今までの気持ち/取り戻せるのは音楽だけ〉と歌う、音楽についての曲です。

山本:この曲は20歳になりたての時に作りました。今では書かないかもなあと思うような、ちょっと暗い部分を出した曲です。頭の中でいろんなことを考えすぎていた時に、対バンで岡山のzooというバンドのライブを見て「これでいいんだ」って思えた瞬間があって。そのzooが、私のことを書いてくれた「希望のうた」という曲があるんですが、その曲が、私の糧になったんです。だから私は同じ言葉をzooに返したいと思った。その時の気持ちを曲にしました。

──〈でもロックスターが教えてくれたんだ/東京の夜にも星は光る〉の“ロックスター”はzooなんですね。

山本:はい、そうです。

──そして「ひとりぐらし」は、タイトル通り一人暮らしの生活を歌った歌ですね。

山本:20歳になって一番大きな出来事は一人暮らしを始めたこと。一人暮らしを始めた頃、パパとママに会えなくて寂しくて泣いていたんです。でも「ひとりで生きていかなきゃ」と思って……パパとママに「珠羽はひとりでも生きていけるな」って思ってもらえるきっかけって何だろうって考えた時に、「料理や!」と思って。思い立って深夜に材料を買いに行ってスープを作ったんですけど、めちゃくちゃマズくてまた泣いて(笑)。泣きながら手紙を書いて、また外に出て、その手紙を出した日がありました。だけど、それ以外はひとりで意外となんでもできちゃったんです。部屋が汚くなりすぎるかと言ったらそうでもないし、なんなら実家の自分の部屋より綺麗だし、洗濯も掃除もできる。そんな事実にもまた寂しくなってしまった。そんなことを曲にしたいなと思って、ノートに「20歳」っていうタイトルを書いて、そこに思いつく言葉をバーっと書いたんです。それがこの曲になりました。

──ギター以外の楽器の音も入っていたり、転調したりと、煌びやかなアレンジになっていますが、アレンジはどのように決めたのでしょうか?

山本:なんとなくピアノは入れたいと思ったのと、言いたいこと詰めすぎて曲が長くなっちゃったので変化が欲しいなと思ったときに転調があるといいなと思ったので。あとは……弾き語りのCDを出せるのも、UNFAIR RULEのメンバーがいてこそ。ひとりになるのが嫌だったので、いてもらいました。

──ということはこのピアノとコーラスは?

山本:はい、メンバーです。レコーディングの1週間くらい前に伝えてやってもらいました。あくまでも“UNFAIR RULEの山本珠羽”としてこのCDを出したかったんです。だからUNFAIR RULEの曲も入れました。

──個人名義で出す作品だけど、あくまでもUNFAIR RULEの名のもとで、なんですね。

山本:はい。UNFAIR RULEでやってきたからできていることなので。

──ちなみにこの曲、ご両親は聴かれたのでしょうか?

山本:聴いてもらいましたが、パパは「運転中に聴いたらダメや。(涙で)目が見えんくなって危ない」って言っていました。ママは「ええ子じゃ」って(笑)。ちなみに歌詞カードにはパパとママの写真も入れています。

──それはファンの方、必見ですね。20歳のタイミングでご両親に楽曲を贈るというのも素敵ですね。

山本:20歳にならないと贈れなかったなと思います。

──というと?

山本:これから返していかなきゃと思ったんですよ。一人暮らしを始めて、気が早いですけど、あと何回会えるかわからないなって思って。ただ、会いに行くことよりも、私が頑張ることのほうがパパとママのためになるような気がした。親の手を離れて、ひとりで生きていかなきゃいけないから、これから返していこうって思えたのは20歳になったから。それも、やはり20歳というのがきっかけになったと思います。

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