ENHYPENが語る、“アーティスト・ENHYPEN”としての今 『DESIRE : UNLEASH』で向き合う欲望と進化

少しでも見逃すと、また次のフェーズへと進んでしまう――。ENHYPENは常にリスナー/ファンの予想をいい意味で裏切り、より成長した姿を見せてくれる最強のグループだ。そんなことをあらためて認識させてくれたのが、6月5日にリリースされたばかりの6枚目のミニアルバム『DESIRE : UNLEASH』である。
同作は、韓国のHANTEOチャートで発売初日に189万枚以上を売り上げ、デイリー1位に。同チャートでは、すでにダブルミリオンセラーを達成している。日本ではBillboard JAPANの週間アルバムセールスチャート「Top Albums Sales」で首位を獲得。さらに「オリコン週間アルバムランキング」では自己最高初週売上を更新し、通算10作目の1位獲得となった。
直近の彼らの活躍は目覚ましいものがあった。昨年夏にリリースした2ndフルアルバム『ROMANCE : UNTOLD』は、米Billboardのメインチャート「Billboard 200」で自己最高となる2位を獲得。さらに日本でもBillboard JAPANの「Top Albums Sales」や「Hot Albums」、オリコン「週間合算アルバムランキング」でトップに輝き、最終的に初のトリプルミリオンセラーを達成するほどのヒット作となった。
これらの記録は、アルバムのコンセプトを重視するグループゆえの結果とも言えそうだが、彼らの場合は“番外編”的な作品のクオリティも相当高い。最近の例だと、「One and Only」(2023年7月)が挙げられるだろう。『ポケモン』とのコラボレーションで実現した同曲は、ENHYPENの持ち味のひとつであるダークファンタジー路線とは異なり、明るく元気なサウンドとハイトーンボイスで楽しませてくれた。
彼らの好奇心や探求心の旺盛さは楽曲制作だけに限らない。今年4月の『Coachella Valley Music and Arts Festival』(以下、『コーチェラ』)への出演は、「K-POPボーイグループとしてはデビューから最速の出演」とメディアでも大々的に報道されたが、さらに注目すべきなのは、演出効果をできるだけ抑え、自身の歌と踊りにクローズアップしたステージを繰り広げた点だろう。ファン以外の観客も観る大舞台で、あえてシンプルに勝負して自分たちの実力を証明したのだ。ここで得た自信は、7月5日、6日の東京・味の素スタジアム、8月2日、3日の大阪・ヤンマースタジアム長居で行われる『ENHYPEN WORLD TOUR ‘WALK THE LINE’ IN JAPAN -SUMMER EDITION-』にも反映されるだろう。
このような上昇気流に乗るなかでリリースされた今回のミニアルバム『DESIRE : UNLEASH』は、前述の『コーチェラ』と同じく、ENHYPENの魅力をシンプルにわかりやすく提示しているのが、非常に興味深い。前作『ROMANCE : UNTOLD』で表現した“君”と“僕”との純愛を、本作ではよりディープに追求。心のもっと奥深くにある感情を8つのトラックで表現している。
幻想的なフューチャーベース「Flashover」で幕を開けると、続くタイトルトラック「Bad Desire (With or Without You)」へ。このあたりは従来の彼らのイメージに近いが、〈너를 잃은 천국은 지옥인걸〉(君を失った天国は地獄なんだ)、〈너를 안은 지옥은 천국인걸〉(君を抱いた地獄は天国なんだ)といったフレーズでわかるとおり、今まで以上にメッセージの明快さが際立つ。
ほかの収録曲も同様だ。君を僕のような存在にしたいと願う「Outside」は、〈넘치는 욕망 널 데려가지/내 이성의 경계선 너머까지〉(あふれる欲望 君を連れていく/僕の理性の境界線の向こうまで)と単刀直入な誘い方がとても刺激的である。「Loose (Korean Ver.)」は、モータウンミュージック風のサウンドをバックに〈이젠 너도 loose/너와 나의 숨결 말곤 mute〉(もう君もloose/君と僕の息遣い以外はmute)と軽やかに歌う、ENHYPENの“陽”の部分を前面に出したナンバー。この親しみやすい音作りは世代や性別を超えて愛されるに違いない。
「Helium」は誰もが共感できるフレーズが散りばめられているので、こちらも幅広い層に受け入れられるだろう。君への愛がいっぱいになり、空に浮かび上がるような気分を表現した歌詞は、〈너는 나의 숨이자/살아가게 하는 air〉(君は僕の息/生かしてくれる air)〈너를 숨 쉴 때마다/아찔하게 날아가〉(君を吸うたびに/くらくらと飛んでいく)と、ストレートな言葉が目立つ。「Too Close」はピアノをベースにした品のあるサウンドと、〈이성 따윈 멀리/날아가 버리잖아〉(理性など遠くへ/飛んでいってしまうよ)、〈너무 탐이 나 I'm so into you〉(とても欲しい I'm so into you)といった本心を隠さないフレーズとの組み合わせが実にユニークだ。
すべての曲においてギミックや抽象的な伝え方をできる限り排除しているのが、『DESIRE : UNLEASH』において特筆すべきポイントだと思う。K-POPアーティストは大抵の場合、新作を出すたびにより華やかに、よりゴージャスな方向に向かいがちだが、ENHYPENのようにシンプルになっていくのは相当レアなケースではないだろうか。
こうした変化は、やはり『コーチェラ』をはじめとするグローバル規格での成功によるものだと言えよう。自分たちの身体ひとつだけで十分に世界で通用するのだという自信が、よりシンプルかつわかりやすい作風に向かわせたのは想像に難くない。メンバーのJAYがプロデュース、作詞、ギター演奏と持てる力をフルに発揮した収録曲「Helium」が、王道のハードロックに仕上がっているのも、おそらくその流れから生まれた発想なのだと思う。
さてここからは、『DESIRE : UNLEASH』に関するインタビューを掲載する。タイトルトラック「Bad Desire (With or Without You)」を筆頭に、新作に収められた楽曲の魅力を熱く語る彼らを通して、変化し続けるENHYPENの“今”をしっかりと確認してほしい。


















