ENHYPENが手にした「僕たちだけの言語」 メンバーが語る『ROMANCE : UNTOLD -daydream-』とENGENEへの愛
ENHYPENが、新たな記録を打ち立てた。2ndスタジオリパッケージアルバム『ROMANCE : UNTOLD -daydream-』による、K-POPのリパッケージアルバムにおいて歴代最多初動販売量の更新である。その数は、計140万6926枚。リパッケージアルバムでミリオンセラーを達成したK-POPアーティストは、ENHYPENを含めてたった2グループのみ。日本発売日である11月19日には「オリコン デイリー アルバムランキング」(11月19日付)で1位を獲得し、さらに振り返れば、2ndスタジオアルバム『ROMANCE : UNTOLD』は初動販売量234万枚を超え、グループにとって2作目となるダブルミリオンセラーを達成した。これまでENHYPENは、常に最高を更新し続けてきた。
今回リアルサウンドでは『ROMANCE : UNTOLD -daydream-』のリリースを記念して、メンバーにインタビュー。2024年を代表する作品のひとつとなった『ROMANCE : UNTOLD -daydream-』についてから作品の制作過程、そして現在行われている日本3都市ドームツアーまで、幅広く話を聞くことができた。
その前に、前作と『ROMANCE : UNTOLD -daydream-』をめぐるこの「ROMANCE」シリーズが、一体どのようなストーリーを宿しているのか、紐解いていきたい。
前作となる『ROMANCE : UNTOLD』は、正反対の世界にいる“君”と愛を分かち合う少年(=“僕”)の気持ちを歌にした作品だった。そのリパッケージ作品となる今作『ROMANCE : UNTOLD -daydream-』でENHYPENが表現するのは、のちに記すインタビューでもSUNGHOONが語っているように、「ENGENE(ファンの呼称)に向けてのストーリー」が込められたものだ。
互いに違う世界にいる“君”、それはすなわちENGENEであり、その世界にいる“僕”とはメンバー自身のことである。
今作のタイトル曲で、ENHYPENはまた新たなジャンルに飛び込んだ。前作で広げた音楽の領域は、ここにきても広がり続けている。タイトル曲「No Doubt」では、ダンサブルシンセポップに乗って“君”への愛情が歌われる。低音は808ベースで構成され、そこにはレトロな質感がまとう。その不思議な浮遊感をもって歌われる「君は僕の答え」「望むのなら僕の愛はいつでもいくらでも証明できる」という確信は、今作のコンセプトにもある“君”に会えない長い時間と、“僕”が注ぐ“君”への愛の関係性を如実に表している。メンバーのボーカルは、エフェクトなどの装飾はなく、限りなくシンプルな、しかしそれでいて脳内をリフレインさせるメロディをなぞる。それは、アルバム/楽曲のコンセプトにも呼応するような純朴さを感じさせる。引き算の美学によってメンバーの歌唱力が試される楽曲でもある。
もうひとつの新曲「Daydream」は、メンバーのウィスパーラップから始まるアーバンHIPHOPチューン。「No Doubt」が甘さを含んだ楽曲だとすると、この「Daydream」はさらに“君”への恋しさをよりメッセージにした楽曲だと言えるだろう。“君”のいない時間はまるで悪夢のようであり、その会えない時間に募る愛情。その葛藤とある種の切実さが、息成分の多い、まるで吐息がかったようなメンバーの声で表現される。こちらも「No Doubt」同様に構成はミニマルではあるものの、停滞感は一切なく、歌詞に滲む焦りをサウンド面でも補強しているのは、ENHYPENならではの手腕でもある。
今作タイトル曲でもある「No Doubt」と前作タイトル曲「XO (Only If You Say Yes)」は、初めてのJAPAN Editionとしてもリリースされているのも、ENHYPENの新しいメッセージの伝え方でもある。日本語バージョンで紡がれるのは、「No Doubt (Japanese Ver.)」についてNI-KIがインタビューで語るように、ENGENEに向けた歌詞であることがよくわかる。いつも一緒にいることはできないけれど、常に“君”のことを思っている――。オリジナルとはまた違う感触で、しかし変わらぬまっすぐな思いを世界中の“君”へ伝えてくれるのも、彼ららしいラブレターの送り方だと思う。また、「XO (Only If You Say Yes)」は、これで韓国語、英語、日本語のバージョンが用意された。
恋をすると、毎日が楽しくなったり、不安になったり、時々涙がこぼれてしまったりする。でも、それは「相手を信じている」から生まれる感情だ。幸福な時間をたくさん知ると、人は勇敢になる。いつも一緒にいれるわけではないけれど、いつも一緒にいると思える存在。常に忘れられない人がいるのは、寂しくない証拠。それがきっと今のENHYPENとENGENEの関係性であり、それを「ROMANCE」シリーズとして浮かび上がらせたことこそが、今の7人の強さなのだと思う。モチーフとテーマを現実がどんどん超えていく、理想的な作品だ。
インタビューでSUNOOが「ROMANCE」シリーズそのものが「ENGENEの皆さんのためのもの」と語ってくれたのだが、こうして楽曲を紐解き、もしくはMVに触れるだけでも、その言葉が本当のことなのだと理解できると思う。ぜひ、このあとのインタビューとあわせて、今のENHYPENの現在地を感じてほしい。