『イキヅライブ!』が描くのは“剥き出しの自由”? 生き辛さを抱えたスクールアイドルが送り込む新風とは

 5月12日、『ラブライブ!』シリーズの新プロジェクト『イキヅライブ! LOVELIVE! BLUEBIRD』(以下、『イキヅライブ!』)が始動した。“生き辛さ”×『ラブライブ!』の造語と思われる強烈なタイトルを背負った本プロジェクトは、一体シリーズにどんな新風を巻き起こすのか――。現在公開されている情報や、5月19日から先行配信がスタートした1st シングル表題曲「What is my LIFE?」をもとに、期待と想像を膨らませていきたい。

【2025.5.12 START!】イキヅライブ! LOVELIVE! BLUEBIRD ティザームービー

 本プロジェクトは4月28日に公開されたティザームービーで明言された通り、「X(旧Twitter)とYouTubeをメインに展開する」コンテンツだ。X上では10人のメンバーそれぞれが運用するアカウントが確認できる。そして、Xに投稿される少女たちの他愛もない日常の姿や、趣味の話、果ては環境問題を提起するポストを見れば、本プロジェクトが実在性とリアルタイム性を重視したコンテンツだとわかるだろう。たとえば、5月上旬には環境問題に強い関心を持ったメンバー 山田真緑が、「国産SAF燃料の航空機への供給」などタイムリーな話題に言及する様子が確認できた。

 ほかにも、自己紹介動画で『SPY×FAMILY』や大谷翔平の名を挙げるメンバーがいることから、彼女たちが我々と話題を共有できる“ひとりの人間”として存在していると感じさせてくれるのだ。

調布のりこ 自己紹介 - Noriko Chofu -【イキヅライブ! LOVELIVE! BLUEBIRD】
金澤奇跡 自己紹介 - Miracle Kanazawa -【イキヅライブ! LOVELIVE! BLUEBIRD】

 ただ、『イキヅライブ!』はリアルタイムコンテンツではあるものの、同じくリアルタイムで展開している『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』と同様の世界線というわけではないようだ。というのも、『イキヅライブ!』のオフィシャルサイトでは、スクールアイドルや『ラブライブ!大会』が「かつて存在した」「当時開催された」(※1)と紹介されており、文化が衰退してしまったことが仄めかされている。一方『蓮ノ空』では、スクールアイドルがいまだ根強い人気を持ったカルチャーとして支持されており、今年の1月には『ラブライブ!決勝戦』が行われていた。

 このように、スクールアイドル文化の栄枯盛衰は異なる世界ではあるものの、随所に見られるタイムリーな話題と、歴代シリーズとの繋がりを示唆するやり取りから、両作品は“同じ時間に存在しているパラレルワールド”と解釈できるかもしれない。

 そんな本プロジェクトは、タイトルの通り“生き辛さ”という感情が、作品テーマのど真ん中に据えられている。昨今では、不安な社会情勢がアニメトレンドに影響を与えているのか、『ガールズバンドクライ』や『夜のクラゲは泳げない』など、“生き辛さ”を取り入れた作品が多く誕生しているため、そのテーマ自体は珍しいものではない。だが、『ラブライブ!』シリーズにおいては、“生き辛さ”を抱えた少女たちはいたものの、ネガティブな感情をテーマとして大体的に掲げるのは初の試みだと言えるだろう。

「敗けたって次はある。」イキヅライブ! LOVELIVE! BLUEBIRD【PV】

 その歴代シリーズとは一線を画す雰囲気は、メンバーや彼女たちの通う学校のあり方からも感じ取ることができる。まず、本作の中心人物となる高橋ポルカは、数学が大の苦手で高校受験に失敗している。幼い頃から“他人ができることができない”という生き辛さを抱え続けた彼女が、一度は社会に否定されるところから物語は始まるのだ。その後、やっとの思いで入学したネット高校・Love学院高等学校(以下、L高)も、雑居ビルのワンフロアに拠点を構える、塾のロビーのような場所。制服、教室、グラウンド、学食もなく、憧れたキラキラの青春が詰まった学舎とは程遠い。

 だが、逆に何もないからこそ生まれる自由さは、夢を追うのに十分な時間を与えると同時に、それぞれが抱える生き辛さを許容している。それは他者に対する思いやりではなく、システムの無機質さと、関わりの希薄さからくる無関心にも感じられるが、それに救われている人たちがいるのも事実だ。

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