リアルサウンド連載「From Editors」第102回: 超私的! 寝るときに聴く音楽の最適解
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
第102回は、『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』発売が待ちきれない伊藤が担当します。
人生の3分の1は睡眠
あまり寝るのが得意じゃなくて、目を瞑ってから入眠まで割と時間がかかっちゃうんですよ。でもそのあいだの時間って本当に無駄なので、もう音楽を聴くくらいしか有効に使えないんですね。昔からそんな感じなので、長年試行錯誤を繰り返し、寝るときに最適な音楽とはなにかをひたすら考え続けてきました。
そして最近、ついに私のなかでの最適解が確定しました! そこで、同じ悩みを持つあなたに向けて、2025年5月現在の寝るときに聴くべき音楽をランキング形式で紹介しましょう。
第3位:ピアノ インストゥルメンタル
はい、王道中の王道ですね。まずはね。
まず“眠る”という目的において、歌詞はとても邪魔なんです。どうしても脳が思考モードに突入してしまいますからね。いかに音楽に意識を移管させて、脳を“無”の状態にするのか。これが大事です。となると、インストは鉄板と言えるでしょう。そして、なるべくピアノ単体のインストにしてください。リズム、ビートといったものから解放されましょう。“推進力”があるとダメです。身体を動かしたくなったり、前向きな気持ちになったりしちゃいますからね。ダメです。必要なのは“無”です。「“無”が必要」って哲学みたいですね。
そういった意味では、ピアノのインストとは言っても、ジャズよりはクラシックよりの方が適しているのかもしれません。もちろん多種多様な演奏があるので、一概には言えませんよ。
個人的におすすめなのは、下記の2作です。
第2位:アンビエント・ミュージック
無音は嫌なんだけど、“音楽”だと鬱陶しい。ただ“音”だけが欲しい、みたいな時に大活躍するのがアンビエント・ミュージックです。日本語だと“環境音楽”と言われますが、Aメロ→Bメロ→サビのような明確な構成やビート、メロディなどを持たず、“音は鳴っているけれども何もしていない”とでも言うような音楽です。
1920年に、エリック・サティという作曲家が「家具の音楽」という楽曲を発表したことが起源とされています。家具のようにただそこにあって、意識的に聴かれるものではない音楽という意味だそうです。
文章で説明できるような音楽でもないので、本ジャンルの第一人者であるブライアン・イーノの作品から聴いてみてください。「ただ音が鳴っているだけ」とは言いつつも、彼の作品にはテーマ性があり、確かな美しさを感じられる楽曲が多く存在します。ピアノインストとは異なる“美”を堪能しながら、“無”を目指しましょう。
第1位:ドローン・メタル
栄光の第1位は、聴いているだけでみるみるうちに友達がいなくなっていく、地獄の音楽 ドローン・メタルです。
メタルのなかでも、遅さ/重さを強調したジャンルであるドゥーム・メタルの派生系とされており、遅さ/重さをより過剰に、狂信的なまでに貫き通す、多くの人にとっては罰ゲームにすら感じられる音楽かもしれません。しかし、延々と繰り返される暗黒ノイズの向こう側には、なぜか“癒し”を感じ取ることができるのです。
“無”に至るサポートをしてくれるのではなく、“無”の方から向かってくる感覚。圧倒的な重量で襲いかかる轟音は、もはや“音のお布団”。呻き声のように吐き捨てられるグロウルは、まるで“母の子守唄”。これは眠りに向かっているのか、死に向かっているのか……そんな感覚に身を任せていると気づいたら朝になっているのです。
もちろん、ノイズのなかに隠された甘美なメロディや激重ギターリフなど単純に音楽としてカッコよく、アーティストごとに個性もあるので、睡眠時以外にもぜひ聴いてみてください。
それでは、よい睡眠を⭐︎


























