Spotify、2024年度の音楽業界への支払い・還元をまとめたレポート公開 国内アーティストのロイヤリティは250億円以上に

Spotify、2024年度「Loud & Clear」発表

 Spotifyが、アーティストや作詞・作曲家の権利を代行するレーベルやディストリビューター(配信事業者)、音楽出版社などへの支払いや還元についてまとめた年次レポートを専用サイト「Loud & Clear」にて公開した。本レポートは、より健全で多様性に富んだ音楽業界の実現を目的として開設されたもので、2023年版より日本国内のデータも公開されている。

2024年度 国内アーティストレポート

 国内アーティストのレポートによると、2024年に国内アーティストがSpotifyで生み出したロイヤリティは、250億円以上だった。これは昨年から25%の増加、2021年と比較すると2倍以上となる。2024年にSpotifyで500万円以上を生み出した国内アーティストは前年から18%増加し、2019年から5倍以上に成長した。
2024年にSpotifyで1,000万円以上を生み出した国内アーティストは前年比23%増、2021年と比較すると約2倍に拡大している。
2024年にSpotifyで国内アーティストが生み出したロイヤリティの50%以上がインディーズのアーティストやレーベルによるものだった。

 2024年にSpotifyで国内アーティストが生み出したロイヤリティの約50%は海外のリスナーによるもの。日本語でパフォーマンスする国内アーティストが生み出したロイヤリティは、昨年から18%増加し、2020年から2倍以上に成長した。
2024年に国内アーティストがSpotifyで生み出したロイヤリティの約75%は、日本語の楽曲によるものだった。
Spotifyで収益を生み出している国内アーティストのうち、女性アーティストは25%を占めており、2017年から8ポイント増加している。

 2024年に『トップ50 - 日本』にランクインした楽曲の約80%が国内アーティストによるもので、2024年にSpotifyの公式プレイリストに追加された国内アーティストは、1万1,000組を超えた。
また、2024年にSpotify上で国内アーティストが新たにリスナーに発見された回数は、26億回以上にのぼる。


2024年度 グローバルレポート

 一方、グローバルレポートによると、Spotifyは2024年、音楽業界に対して年間100億ドル以上の金額を支払ったという。これは単一の音楽小売業者として史上最高額であり、CDが最も売れていた時代のレコード販売会社が支払っていた年間金額の10倍以上にあたる。また、Spotifyが創業してから現在までに音楽業界へ支払った合計額は約600億ドルに達した。

 Spotifyが音楽業界に支払う年間金額は、過去10年間で約10倍に拡大。10億ドルから100億ドルを超えるまでに成長した。2014年当時、世界の音楽原盤収益は過去最低水準の130億ドルまで落ち込み、Spotifyの年間支払いは約10億ドル、有料会員数も約1,500万人にとどまっていた。その後、Spotifyは「音楽の価値を再び高める」というミッションを掲げ、積極的な取り組みを継続。その結果、世界の音楽原盤収益は回復を遂げ、2023年には280億ドルを超えるまでに成長している。

 Spotifyを通じて年間1,000ドルから1,000万ドルのロイヤリティを得たアーティストの数は、2017年から現在までに3倍以上に増加。また、Spotifyでトップクラスのアーティストが得るロイヤリティは、2014年には最大約500万ドルだったが、2024年には200組以上のアーティストがこの金額を超える収益を得ている。これらはSpotify単体での収益であり、他の音楽収入も合わせると、実際の総収益は4倍以上に及ぶ可能性があるという。

 Spotify上で10万位にランクインしたアーティストの年間ロイヤリティは、2014年の600ドル未満から2024年には約6,000ドルへと過去10年間で10倍以上に増加。同期間、1万位にランクインしたアーティストの年間収益も約4倍増加し、3万4,000ドルから13万1,000ドルに成長した。CD全盛期には、タワーレコードが取り扱うCDタイトルは約5万枚(数千のアーティストによる作品)だったが、現在、Spotifyでは10万組以上のアーティストが年間数千ドル規模のロイヤリティを生み出しているという。

 Spotifyは過去2年間で、ソングライターやプロデューサーを代表する出版権保持者に約45億ドルを支払っている。2024年の出版権保持者への支払額は過去最高を記録し、2023年と比較して2桁の成長率となった。ストリーミングの拡大に伴い、ソングライターたちは音楽出版社やPRO(実演権利団体)、著作権管理団体を通じて、過去最高水準の収益を得ている。

 2024年にSpotify単体で100万ドル以上のロイヤリティを生み出したアーティストは約1,500組にのぼり、音楽原盤収益全体を含めると、その多くが年間400万ドル以上の収益を得ていると推定されるという。注目すべきは、これらのアーティストの8割以上が、2024年にSpotifyの『トップ50 - グローバル』チャートにランクインしていないことである。また、2010年以降にキャリアを開始したアーティストが多数を占めており、その8割以上が2024年にライブを行っている。チャートの1位や長期的なヒット作を生み出すことだけでなく、熱心なファン層を構築し、継続的に支持される関係性を築くことがストリーミング時代の成功の鍵となっている。一般的に、アーティストがSpotifyで年間100万ドルの収益を得るには、月間リスナー数で約400万〜500万人、または月間ストリーム数で約2,000万〜2,500万回が目安とされている。

 現在、多くのアーティストにとって、自国よりも海外リスナーからの再生が主要な収益源となっている。実際、2024年にSpotify上で1,000ドル以上のロイヤリティを獲得したアーティストの半数以上が収益の大半を海外から得ており、そのうち約3分の1のアーティストは収益の75%以上を海外で得ている。また、国境を越えたアーティスト同士のコラボレーションも拡大しており、1,000ドル以上のロイヤリティを生み出したアーティストの3分の2以上が少なくとも1人の海外アーティストとコラボレーションしている。さらに、10万ドル以上のロイヤリティを得たアーティストは約90%に達し、その半数は3カ国以上のアーティストと共同制作を行っている。Spotifyのリスナー層が世界規模で拡大する中、アーティストは国境を超えてファンとつながり、新たな市場での収益機会を広げている。

 2024年にSpotify単体で年間100万ドル以上のロイヤリティを獲得したアーティストがリリースした楽曲は合計17言語にわたり、10万ドル以上のロイヤリティを得たアーティストではその言語数は50を超えた。これらの数値は、2017年と比較してそれぞれ2倍以上に増加している。

 2024年、インディペンデントアーティストとレーベルはSpotify上で合計50億ドル以上の収益を上げ、Spotify全体のロイヤリティの約半分を占めた。世界のストリーミング収益におけるSpotifyのシェアは約3分の1だが、インディーズ作品に限ればその割合は50%以上にのぼる。これにより、Spotifyのビジネスモデルが多くのアーティストに対して持続可能なキャリアを提供する可能性が高まっていることが示されている。

 さらに、2024年にSpotifyで年間10万ドル以上のロイヤリティを獲得したアーティストは12,500組に達し、そのうちの約4分の1は、5年前にはプロとして楽曲をリリースしていなかったか、Spotifyでの年間収益が1,000ドル未満だったアーティストだという。

■関連サイト
Loud & Clear:https://loudandclear.byspotify.com/
Spotifyニュースルーム 「For The Record」:https://spotifynewsroom.jp/

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