sayuras、“真のゼロ地点”が刻み込まれた新宿LOFT公演 鎧を脱ぎ捨てた大人たちの衝動

5月11日、新宿LOFTで行われたsayurasの半年ぶりのワンマンライブ。『O -ZERO-』というタイトル、そして大半がsayurasオリジナル曲で埋め尽くされたセットリストが示す通り、三上ちさこ(Vo)を中心としたプロジェクトではなく、“4人のロックバンド sayuras”としての正真正銘の歩みが始まったことを感じさせる、素晴らしいライブだった。
オープニングSEが鳴り、根岸孝旨(Ba)、西川進(Gt)、平里修一(Dr)、そして三上がゆっくりとステージに現れる。不穏なサイケデリアで空を切り裂く西川のギター、どっしりと重心低めな根岸&平里のグルーヴに導かれ、フードを深めに被って歌い出した三上。その姿は、殻を破る目前の静かな衝動が込められた1曲目「惰性」の演出としてこの上なくハマっていた。


ドラム、ベース、ギターが順々に折り重なり、三上のラップと西川のギターが鎬を削るようにぶつかり合うsayuras流ミクスチャー「ウェルカムトゥブレインワールド」、ドライブ感を保ちながら緩急を自在に操り、間奏では根岸のベースライン、火を吹くような西川のギター、タイトな平里のドラミングを存分に味わえる「RTA」、理不尽な世の中への割り切れなさを爆発させるかの如く徐々に熱を帯びていく「悪魔の実」……など、どの楽曲を聴いても、演奏に探りや遠慮と言ったものが一切ない。もともとは三上のサポートとして集ったメンバーだったが、バンド始動から約1年半かけて、徐々にsayurasとしてのライブの在り方が形作られてきたのだろう。三上のみならず、根岸、西川、平里の3人もどこか鎧を脱ぎ捨て、己の衝動をぶつけるかのようにダイナミックに音を鳴らしていく。


そして、その予感は初披露の新曲「Punishment - 狂った女 -」で確信に変わる。MCによれば、この春、男性陣3人で伊豆へ合宿に行き、新曲をいくつか制作したそうだが、そこで西川の作曲により生まれたのが「Punishment - 狂った女 -」だという。この曲には心底驚かされた。グランジやオルタナをリアルに体験してきた猛者ならではの生々しいアンサンブルがsayurasの持ち味だったが、「Punishment - 狂った女 -」はそこをさらに飛び越え、ヘヴィメタルのような猟奇的な激しさを伴った1曲。重くのしかかるイントロからトーンダウンを経て伸びやかなサビへ……何変化もするプログレッシブな展開に興奮が止まらない。三上は渾身のシャウトも披露。独白や決意表明のような楽曲が多かったからこそ、どこか“狂った女”を演じるように歌う同曲は、サウンドのみならずボーカル面でも新境地と言えそうだ。これは音源化が待ち遠しい。その熱量を引き継ぐように、三上がステージ袖にはけたセッションパートでも、根岸、西川、平里によるヘヴィな演奏が繰り広げられた。


3人の個性溢れる演奏でグイグイ引っ張っていった前半に対し、後半は三上が心の奥底の想いをそっと歌い紡ぐような場面が続いた。「フラクタル」は慈しみの眼差しで我が子を抱きしめるようなバラードだが、熱いセッションからの流れで聴くと、メンバーへの素直な感謝を優しく吐露しているようにも思えるから不思議だ。不寛容な世界に対して〈私たちがひとつだったころに、かえろう。〉と投げかける「揺れる」も、3人が三上の音楽に懸ける想いをリスペクトしているからこそ自然に生まれたのだということが、改めて伝わってくる。そうした流れが〈ひとりじゃない/僕らいるのさ〉と歌われる名曲「KYOKAI」に集約していく様はとても美しかった。























