『タイプロ』終了から3カ月 オーディション番組特有の“燃え尽き”が起きないのはなぜか
2月15日に最終審査結果が発表された、timeleszの新メンバーを決めるオーディション番組『timelesz project -AUDITION-』(Netflix/以下、『タイプロ』)。プロジェクトを発表した瞬間から大きな話題となり、審査終盤になると多くの芸能人もファンを公言。既存のグループのファンのみならず、多くの人が注目を集めるプロジェクトとなった。
現在、日本でも多くのオーディション番組が放送され、その度に社会現象と言えるような熱狂を巻き起こしてきたが、その一方で、オーディション番組が終了するとファン/視聴者が離れてしまい、せっかくデビューしてもオーディション期間以上の話題性を作り上げることは難しいというのはよく言われている話だ。そんななかでも『タイプロ』は配信終了からちょうど3カ月が経った現在もファンを離さず、新メンバーも様々なフィールドで活躍し、その度に多くの話題を集めている。新体制としてリリースされる初のアルバム『FAM』に収録される楽曲「ワンアンドオンリー」のMVは、彼らへの注目がその再生数にも表れている。では、なぜtimeleszは番組終了後もファンの気持ちを掴み続けているのか。初回配信から追いかけていたライターの池田夏葉氏に話を聞いた。
『タイプロ』、追加メンバーオーディション特有の目線
これまで多くのオーディション番組を見てきたという池田氏だが、そもそも『タイプロ』は“追加メンバーオーディション”という形。それゆえに、視聴者の目線も他の番組と異なっていたのではないかと分析する。
「すでに多くのファンがいるtimeleszに入るというだけでなく、一般公募から参加した合格者は、その後STARTO ENTERTAINMENTに所属して活動することになります。ジュニアを経験せずにタレントが所属する例はこれまで同事務所においてほぼなかったこともあり、timeleszのファンのみならず多くの視聴者は『この候補生はtimelesz/STARTO ENTERTAINMENTに相応しいのか?』という目線を持っていたと思います。それゆえに、放送の序盤は厳しい声も多く上がっていたように感じますが、徐々に彼らの実力を認めるような声も増えていったと感じています」
確かに、番組スタート当初はSNSを中心に様々な議論が交わされていた『タイプロ』。その風向きが変わったのはいつ頃なのだろうか。池田氏は「大きな変化は4次審査だった」として、以下のように振り返る。
「寺西拓人さん、原嘉孝さん、今江大地さんらSTARTO ENTERTAINMENT俳優部の参加でパフォーマンスのレベルがぐっと上がったこともあり、それまでよりも見応えのあるステージを作ることができるようになってから世間の声も変わったと感じました。また、4次審査からは合宿審査になって、候補生一人ひとりのキャラクターが詳細に伝わってきた。彼らの努力やオーディションにかける想いが、以前よりもダイレクトに伝わってきたことも大きいと思います。以前は厳しい目を向けていたとしても、このタイミング前後で『誰も落ちないでほしい』という思いに変わっていったという人も少なくはないのではないでしょうか」
さらに、『タイプロ』が他のオーディション番組と違っていたのは、審査員を務めたオリジナルメンバーの菊池風磨、佐藤勝利、松島聡が一緒に活動していく“仲間”を探していたという点だ。
「『Nizi Project』シリーズのJ.Y. Parkさんをはじめ、『THE FIRST』、『MISSION×2』のSKY-HIさん、『タイプロ』と同時期の開催となった『No No Girls』のちゃんみなさんなど、オーディション番組をきっかけにプロデューサーや審査員側が注目を集めることはこれまでもありました。『タイプロ』における3人のプロデューサーとしての魅力を再発見したというファン/視聴者も多かったのではないでしょうか。これまで知られていなかった3人の魅力がお茶の間も含め広く知られたことで、勢いをつけていったようにも感じます」(池田氏)
オーディション番組、“燃え尽き症候群”はなぜ起きる?
そうして、2月15日の新体制お披露目を経て、8人体制での活動がスタートしたtimelesz。『タイプロ』という大きな渦を作り上げた彼らの勢いは衰えない。そもそも、なぜ多くのオーディション番組は番組終了のタイミングで離れてしまうファン/視聴者が多いのだろうか。池田氏は「いろいろな要因があると思います」とした上で、その状況を「デビューメンバーが決まってから次の活動までの準備が必要で、番組終了から本格的な活動が始まるまである程度の空白の期間が空いてしまうというところだと思います。オーディション期間(番組オンエア期間)中は毎週のように新しいコンテンツや情報が公開されていたのに、しばらくそれがないとなると、他のグループに目移りしたり、オーディション番組以前にハマっていたものに戻っていってしまったり。そういう人が多いのかもしれません」と分析する。
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その点、timeleszはすでに“timelesz”という基盤そのものがあることもあり、オーディション終了後に間を空けることなくバラエティ番組やラジオ番組に出演していった。「もともとSNSアカウントを持っていたオリジナルメンバーの菊池さん、佐藤さん、松島さんや、新メンバーに選ばれた寺西さん、原さんからグループの情報が発信されていくのも良かったのだと思います。メンバーの目線から毎日のように新しい姿が発信されていましたし、橋本将生さん、猪俣周杜さん、篠塚大輝さんのInstagramアカウントも早々に開設。こまめに発信することで、ファン/視聴者が離れることなく飽きることなくずっと見ていたいと思わせるようになっていたと思います」と池田氏は語る。
さらに、最終メンバー発表から2日後の2月17日には『timeleszのQrzone』(文化放送)ラジオ番組へ初出演、その後も21日は『ニノさん』(日本テレビ系)に全員でバラエティ番組初出演を果たした。特に『ニノさん』では、二宮和也と共演という形で地上波にも8人のキャラクターを知らしめた。ラジオ番組は全員での出演以降、新メンバーが中心となって出演しており、『タイプロ』を機に事務所の一員となった橋本、猪俣、篠塚がラジオに段々慣れていき、メンバーと打ち解けていく様子は微笑ましく、“燃え尽き症候群”の阻止に一役買っているのではないだろうか。