インドネシア、シンガポール、韓国、タイからノミネート 『MUSIC AWARDS JAPAN』最優秀アジア楽曲賞に注目
土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.15
『MUSIC AWARDS JAPAN』(以下、『MAJ』)をご存知でしょうか? 2025年5月に初めて開催される、国内最大規模の国際音楽賞です。日本の音楽業界の主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、コンサートプロモーターズ協会、日本音楽出版社協会)が垣根を超えて設立した団体「CEIPA」が主催しています。めちゃくちゃ大雑把に言うと、日本の音楽業界のほぼみんなで新しい音楽賞を作ったということです。5,000人の音楽アーティスト、音楽業界人による投票でノミネートアーティストが選ばれています。なかなかすごいことだと私は思っています。FM802からも数名選抜された方が投票に参加されたそうです。ちなみに全国の民放ラジオ99局が選ぶ「ラジオ特別賞 Best Radio-Break Song」もあり、こちらには私も投票しました。
『MAJ』のコンセプトは「世界とつながり、音楽の未来を灯す(ともす)。」アワードのWebサイトを見ていただけたらわかるのですが、とにかく賞の数が多い。対象になるジャンルが多岐に渡ります。「音楽を愛する人たちが讃えあい、グローバルな視点で新しい音楽文化を作り出す」というアワードの願いが表れているなと思います。そして、このコラム的に注目したいポイントは、日本以外のアジアエリアへの特別な思いが感じられるという点。「楽曲カテゴリー」の中には、「Top Japanese Song in Asia」という賞があり、やはりCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」やYOASOBI「アイドル」などが選ばれています。ふむふむ、アジアのフェスで体感した人気の通りだなぁと大きく頷きました。
まず、そもそも主要6部門の中に、「最優秀アジア楽曲賞(Best Song Asia)」があるということが、アツイんですよ! やばいぜ『MAJ』! 嬉しくて、主要6部門に「最優秀アジア楽曲賞」が含まれる理由を問い合わせてみました。
その回答は「MAJの目的自体が『音楽を未来へつなぐ、架け橋に。国境を超え、アジアをつなぎ、音楽の可能性を世界と分かち合う。音楽の未来を灯す挑戦的な祭典になろう』というものでした。ですので、自然とアジアの作品にスポットライトをあて、日本の音楽をアジアへ、という考えにシフトしていき、結果この賞が主要6部門になっていきました。これから1年に一度、この賞だけではなく、日本/アジアのヒット曲の素晴らしさを時間をかけてじっくりと聴いていただき、知ってもらえるいいチャンスかと思います」とのこと。感動してしまった。「事務局で働かせてもらえませんか? 私銀行員だったので、事務方できます」という気持ち!
そんなわけで、せっかくなので今回は「最優秀アジア楽曲賞(Best Song Asia)」のノミネート曲を見てみましょう。実際のところ、私も今回初めて知ったアーティストもいらっしゃいました。
「Satu Bulan」Bernadya(インドネシア)

インドネシアのシンガーソングライター。2024年リリースのデビューアルバム『Sialnya, Hidup Harus Tetap Berjalan』が、『Anugerah Musik Indonesia』というインドネシアの音楽アワードで、最優秀アルバム、最優秀ポップアルバム、最優秀ポップソングライターを受賞しました。このアルバムはSpotifyで、「インドネシアで1日に一番聴かれたアルバム」、彼女自身も「インドネシアで1日に一番聴かれたアーティスト」という記録を樹立したそう。「みんなが聴いている」と言っても過言ではないのかも。恋愛の3つのフェーズがコンセプトになっているアルバムとのことで、ノミネート曲「Satu Bulan」のMVも非常に切なくて、みんながこの曲で泣いたんだろうなと想像されます。いい曲です。歌声もピアノの音色も素晴らしい。「男性は誰かが去っても泣かないが、それは彼らが強いからではなく、実際に起こったことを脳が処理するのに時間がかかるからである」とコメントしている男性ファンがいて、こういうコメントをしたくなるパワーのある曲なのだなと感じました。
「the cutest pair」Regina Song(シンガポール)

彼女は、シンガポールのZ世代アーティスト。現在、芸術系の大学生です。ノミネート曲は、昨年6月にリリースされ、3,600万回以上のストリーミングを記録し、Spotify「Viral 50 - Global」プレイリストのトップにもランクイン。月間リスナー数は160万人を超え、Spotifyの2024年度「RADAR」アーティストにも選出された実績を持ちます。クアラルンプール(マレーシア)、バンコク(タイ)、ジャカルタ(インドネシア)、マニラ(フィリピン)といった主要都市を巡る東南アジアツアーは全て完売(※1)。シンガポールで、最もストリーミングされている国内アーティストの一人として、現在急速に頭角を現しているそう。まさに破竹の勢い。生まれた時からずっと聴いているというテイラー・スウィフトに影響を受けているんだとか。SNSのハンドルネーム「@sleepyreggy」は、夜遅くに曲のインスピレーションを感じるというところから。彼女は自分の曲を「眠いバージョン」の自分だと表現しているそうです(※2)。アルバムタイトルが『fangirl』というのもキュートですよね。
「Supernova」aespa(韓国)
「WAY 4 LUV」PLAVE(韓国)


やはり来ましたK-POP勢! 説明の必要もないと思うのですが、aespaは韓国の4人組グループです。そして、異次元の時代が訪れているんですね。何かと言うと。以前、VFX技術により生み出されたnaevisというアーティストがaespaのライブでお披露目されたという、何が何だか私にはさっぱりわからないニュースを見たのですが、さらに上をいくユニークな存在が、今回aespaと並んでノミネートされたPLAVEという5人組のボーイズグループです。アニメのキャラなのかな? と思ったんですが、そういうわけではなくて、作詞作曲振り付けも自分たちでやっちゃう、セルフプロデュースのバーチャルグループなのだそうです。メンバーの動きや表情はモーションキャプチャーで表現されています。楽曲のクオリティもさることながら、他のK-POPのグループと同じく、音楽番組に出演したり、コンサートをしたり、ビデオ通話もするし、YouTube生配信もしています。生配信をアーカイブで見てみたのですが、人間味が溢れてリアルで、これはファンになっちゃう気持ちはわかります。メンバーがテレビゲームをしているところを生配信していたので、ゲーム実況みたいな面白さもあるし、会話はリアルだし、これは簡単に沼入りしちゃうかもな〜。バーチャルな存在であればどんな衣装も着れるし、どんな髪型もメイクもできるし、どこへでもいける。夢があるなぁ。授賞式には出席するんでしょうか? レッドカーペットを歩くのかしら? FM802のスタジオに来てもらうこともできるといえば、できるのかな。すごい時代です。





















