edhiii boi「スーパーヒーローになることが夢です」 歌うべき“歌”に導かれた18歳の今を語る

僕は“大人”という言葉には定義がないと思っている

――そのライブを経て、『大人になんてなりたくない』というアルバムをリリースすることになります。
edhiii boi:一般的なイメージとして、お酒を飲めるようになる20歳から大人というけど、それは身体的な話であって、僕は“大人”という言葉には定義がないと思っているんです。僕が見てきた大人の中には、悪い人もいればいい人もいて、その割合は本当に五分五分くらいだし、社会的には悪い人でも自分にとってはいい人だったりもするんですよね。悪いことをして稼いでる人でも、そのお金で家族を養っている人もいるだろうし、世の中はそんなに単純ではないと感じていて。そう考えると、何にも染まりたくないというか、ずっとこのままでいたいと思ったんです。実際、今の自分の環境は、まわりに日髙さんがいたり、Novel Coreくんがいたり、Aile The Shotaくんがいたり、これまでの人生の中でいちばん恵まれた環境で、やりたいことを好きにできています。だから「こういう大人になりたくない」というより、「大人にならずに今の自分のままでいたい」という意味をタイトルに込めました。
――今作は「高校生活ラストアルバム」と位置付けられていますが、音楽面で意識した変化や挑戦はありましたか?
edhiii boi:今回のアルバムは自分ひとりではなく、実際にスタジオに入ってプロデューサーと音を作るところから一緒にやらせてもらいました。スタジオで直接プロデューサーと音作りする経験は、自分の音楽のレベルを上げることにつながったと思います。高校生活の最後にこういった作品ができて本当によかったです。

――制作の中で、印象に残っていることはありますか?
edhiii boi:KMさんにプロデュースしていただいた「マジだりぃ」のアウトロは特に挑戦的だったと思っていて。この曲はもともと展開的に転調したいと思っていたんですけど、KMさんに曲のラフを送ったら、「めっちゃ変な感じにしてみました。もうひとつはノーマルです」という返事と一緒にふたつのアレンジが返ってきて。その音源を聴いた時に、「僕は絶対にこっちの変な感じのほうの面白いアウトロが好きです」とお返事しました(笑)。
「2025」のフックも、前作の『満身創意』の時の自分には作れなかったと思っています。この曲で歌っていることは大きな話じゃないんですけど、等身大のクール系の曲に思えるけれど、言葉はちょっとクスッと笑えるような、すごく自分らしく歌っています。
――等身大のedhiii boiらしい歌詞というと、ご自身ではどの部分になりますか?
edhiii boi:〈去年髪は金で伸ばし 派手なネイル ブーツがブーム/どこに行っても聴かれた「バンドのボーカル?」〉という歌詞があるんですけど、本当に去年はそういう格好をしていたから、どこに行ってもバンドのボーカルに間違えられました(笑)。
実はこの曲には「2024」バージョンもあって、年末にNovel Coreくんから「これ、リリースしなよ!」と言われたんです。でも、聴くとしたら年末じゃないと面白くないし、リリースするには納期が間に合わないと思って諦めて。それで今年あらためて「2025」バージョンに挑戦して、BMSG POSSEのライブの時にメイクルームでNovel CoreくんとAile The Shotaくんに聴かせたら、絶賛してもらえました(笑)。しかも、その部屋にたまたま入ってきたSALUさんにも褒めてもらえたことで、自信を持ってアルバムに入れることができました。
救えないなら何ができるのか――そう考えた時に“共感を呼ぶこと”だと思った

――以前のインタビュー(※1)でNovel Coreさんとの関係性が変わったというお話がありましたが、その変化は今回コラボした「爆走 feat. Novel Core」の楽曲制作にどのような影響を与えましたか?
edhiii boi:Novel Coreくんにはリスペクトもあるけれど、今はそれ以上に、一緒にいると安心感があるんです。“先輩”という感じから、今は彼と一緒だと素直な自分でいられるというか……唯一“音楽”を忘れられるんですよ。
――いい関係ですね。
edhiii boi:今回のアルバムの新曲の中で、いちばん最初に作ったのが「爆走」でした。去年、Novel Coreくんに「何か一緒にやろうよ」と言ってもらえて、そこからノリで始めたら「曲を出そう」という話になり、今回一緒に曲を作ることになりました。この曲の歌詞に関しては、僕が全部書いたんですけど、結果的に自分の背中を押してくれる曲になりました。今回のコラボでNovel Coreくんのことをより好きになったし、やっとふたりの曲ができた嬉しさもあります。本気で向き合える曲ができたという意味でも、アルバムの中でいちばん印象的な曲になりましたね。

――アルバムのリード曲「マジだりぃ」はユニークなタイトルですよね。
edhiii boi:「いいタイトルができた!」と思ったんですが、テレビとかラジオの時にタイトルコールしていただくのが申し訳なくて(笑)。これは「大人になんてなりたくない」のコンセプトとも似ていて、今って“病む”と同じように日常的にちょっとしたネガティブな気持ちを表現したい時に、“死にたい”というワードを口にするようになったと思うんです。“死にたい”っていう言葉自体は、言ってもいいと思います。僕も使うことがありますし。でも、「大人になんてなりたくない」では「死ぬほど楽しむ」という意味合いで歌詞を書きたかったんですけど、Chaki Zuluさんに「そのワードには敏感な人もいるし、本当にそう思っている人に対して失礼なんじゃないかな」と言われて。その時に、普通にみんなが使っている「死ぬほど楽しむ」というフレーズが、ある人にとってはストレスになることもあるんだなと気づきました。
みんな、思っている以上に悩んでいて、そのワードを聞くだけでストレスになる人もいるんですよね。そういう人は音楽では救えないかもしれない。でも、救えないなら何ができるのか――そう考えた時に“共感を呼ぶこと”だと思ったんです。僕も心の浮き沈みが激しいタイプで、そういう時は誰の言葉も入ってこない。だけど、隣で誰かが「わかるよ」「自分もこうだったからさ」と言ってくれることで救われた時がありました。そのことを思い出して、それなら自分にもできるかもと思って、この曲ではそういったセンシティブなワードのかわりに「マジだりぃ」を選びました。実際、このワードって「死にたい」と比べたら軽く捉えることもできると思いますし、僕と同じ10代の子たちがこの曲を聴いた時に「マジだりぃ」という気分になる状況を想像してくれるんじゃないかなと思っています。

















