日高光啓(SKY-HI)「会社の成長の可能性を閉ざす」 音楽業界の“CDビジネス依存”への危機感とBMSGの改革

日高光啓、旧来型音楽ビジネスへの危機感

 日高光啓(SKY-HI)が代表取締役を務め、BE:FIRSTらが所属するマネジメント/レーベル 株式会社BMSGが、「BMSGから音楽業界を持続不可能にしないための提言」(※1)と題した声明を2月13日に公式サイトに掲出。90年代から現在まで続く“CDビジネスに依存する日本の音楽業界”に対する違和感を綴り、それを踏まえた上でBMSGの今後のCDビジネスに対するスタンスと具体例を提示した。

 日高は同声明の中でCDビジネスにおける“販売の在り方”、“チャートの在り方”、“環境問題”について言及しており、同時に「枚数に対する社会的な依存度とプレゼンスが問題」と問題提起している。日本のみならずアジアのボーイズ/ガールズグループにおいて、内容物を一部変更した複数形態での販売や限度を超えたファンの大量購入と廃棄、チャートハックなどが問題として取り扱われることも多い。その一方で、そういった販売手法やファンの支援からアーティストもといレコード会社、CDショップなどが大きな恩恵を受けてきた事実もある。これまで改革が必要だと捉えながらも、様々な理由から触れられなかった部分に、今最も勢いのあるBMSGが声をあげたことは、音楽業界の関係各所に大きなインパクトを与えたのではないか。

 リアルサウンドでは、本声明を提示した背景やBMSGの今後について話を聞くべく、日高へのメールインタビューを企画。「日本の音楽業界を変えていきたい。今変えないと間に合わない」とBMSG創業当初から語っていた日高が、より強い使命感と覚悟を持って取り組んでいく次世代の音楽ビジネスを見据えた改革とは。(編集部)

CDの販売に依存することは会社の成長の可能性を閉ざす

日高光啓(SKY-HI)
日高光啓(SKY-HI)

ーー「BMSGから音楽業界を持続不可能にしないための提言」を発表しました。日高さんの中で「音楽業界そのものが持続不可能になると危惧している」という危機感はいつ頃から芽生え始めたものだったのでしょうか? 今回の発表に至った背景とともに教えてください。

日高光啓(SKY-HI/以下、日高):正確には“日本の”音楽業界です。2010年半ばになり、インターネットの活用によりアジアから世界に活躍の場を拡げるアーティストが増えてきた頃、MacもCDドライブの搭載をやめました。完全に次の時代に移り変わり、淘汰もあれば開拓もあった新たな時代の中で、日本の音楽シーンはインターネットを無理やり遠ざけたり、すでに一度主舞台から降りたはずのCDというビジネスモデルに固執を続けていたのを内側から眺めていました。

 そしてすでにアーティストとしてのキャリアも若手ではなくなってきた頃でしたので、今後はどうなっていくのか真剣に考えないといけないよな、と「このままだと徐々に小さくなっていくだけですよ」とレコード会社のそこそこ偉い方に尋ねたら、「ね、俺もそう思うけどしょうがないよね」と返ってきたのを聞いたときに、「このままだと音楽業界は終わっていくのだな」と感じました。

 同時に、自分が誰も無視できない圧倒的な影響力を得て時代を変えることに使命感も感じました(笑)。

ーーCD製造工程においてプラスチックの使用を削減、BE:FIRSTの次作コンセプトシングル『Masterplan』は紙ジャケットが採用されているほか、特典の仕様も変えているかと思います。従来の製造と今回の製造において、製造コストや制作物に与える影響などはどの程度違いがありましたか? 

日高:製造コストは上がってしまうという課題があり悩ましいですが、現在レコード会社の販促担当の方は年がら年中特典のことを考えなければいけなかったり、マネジメントはそのための提案やクオリティチェックをしなくてはいけないわけですよね。

 そのヒューマンリソースというコストをプロモーションのためのディスカッションに割けたと言うメリットがあります。

ーー『Masterplan』には、CD+映像(DVDやBlu-ray)のほか、CD+バンドルグッズA,Bなどの形態が発売予定です。「CDの特典を取りやめ、特典に値するグッズを販売する」と記述がありましたが、その「特典」の代わりの第一段階が今回のような「バンドルグッズ」という認識でよろしいでしょうか?

日高:そうですね、将来的にはパッケージそのものをグッズとして手元におきたいものにしたいのですが、日本ではその歴史がない分この規模でやろうと思うと大変です。でも、この規模でやることに意味があると思うのでまだまだがんばります。

ーーCDに付加価値をつけないことで、売り上げが低下するのではないかという懸念があると思います。貴社はもちろん、CDショップやレコード会社など他社への影響も多々出てくるかと思いますが、そういった関連会社への配慮やフォローとしてどんなことが考えられるのでしょうか?

日高:レコード会社には、作品のリリースに紐づけたグッズ販売の際に肖像利用のロイヤリティとしてパーセンテージをお支払いします。自分の頭の中の算盤では(笑)、どちらもプラスになるはずです。

 都内大手CDショップさんからは直接メールを頂いたのですが、彼らにとってもこの先に成長がないであろうCDの販売に依存することは会社の成長の可能性を閉ざすこと、ゆっくりと終焉に向かうこととイコールになるわけで、健康的ではないビジネスモデルに対して同じ課題を抱えていた同じ立場の方々です。

 強い同意を頂いただけでなく、オフィスまで足を運んでいただき、今後の音楽業界やビジネスに関しての意見交換会を行いましたが、とても有意義なものになりましたし、改めて善い方向に向かえているのだと勇気をもらいました。

ーーCDの大量投棄は韓国のボーイズ/ガールズグループにおいても問題とされており、CDの代わりにミュージックカードやカード型スマートアルバムなどで代替する動きもあります。BMSGとしても、音源をパッケージでリリースすること自体が今後は減少していくと想定していますか?

日高:模索はし続けますが、タイタニック号の舵を取ることはそう簡単なことではありません。

 ただそれをしないと氷山にぶつかって死んでしまうこともまた明らかなわけですから、あの手この手で新しく楽しいリリースを模索していきます。そういったことのためのトライはとても楽しいですし、勝算は強く感じています。

ーーCDの大量買いのほか、一部のファンがサブスクやYouTubeで過剰に再生数を稼いでランキングに影響を与えるチャートハックも話題になります。そういったファンによる行き過ぎたアーティストの支援に関して、日高さんはどのように捉えていますか? また、それらをアーティスト側はどう対策すべきだと思いますか?

日高:やり方……聴かずに“回す”と言う言葉などには違和感を覚えますが、原則として、一回聴いても素敵だけど100回聴いたらもっと素敵、と言うものを作ることに躍起になっている、ハイハットの鳴っている数まで覚えて欲しいくらい(言い過ぎました)精魂を込めている身としては、単純に回数多く聴くことを制限する対策は取れません。

 チャート側とリレーションシップを取ってよりフラットな換算を模索したり、善性を訴えたり、浮かぶことはたくさんありますが、日本人にもっともっと“音楽”を好きになってもらう活動をすることを心がける、これが唯一にして最大の行為だと思います。そしてだからこそ、ファンが熱狂的になりやすいタイプのアーティストこそ、知識とアウトプット両面で音楽的に面白みと説得力のあるものを出す責任があるとも感じます。

ーー旧来のCDビジネスに違和感を覚える反面、日高さん自身もその環境の中で長年活動されてきたかと思います。CDビジネスの良い面も、悪い面も見てきた日高さんは、それに依存しないマネタイズ方法としてどんなことを考えられているのでしょうか? 

日高:前提として、世界の経済は拡大していくわけですよね。スキームや媒体は変われど、経済活動自体は成長していくわけです。

 その中でアイドル、アーティストといった職業は究極のto Cで、その影響力を正しく使えば、どの時代であってもマネタイズする方法はたくさん浮かびます。

 事実として、BE:FIRSTもBMSG全体も、CDの原盤利用による利益は全体の5〜10%ほどでしょうか。現代でも少なくともファンクラブやグッズの方が利率は良いですし、B-Townというオンラインサロンに有益なビジネスドキュメンタリーをあげている(およびそう努力している……汗)ので、その収益は本当に大きいです。

 絶対に音楽ビジネスの未来にとって必要なコンテンツにするので、皆さん是非B-Town Architectに入ってください(笑)!

 また余談ですが、元々紀元前には経済より先に音楽が生まれていたと思うので、経済活動がなくなっても音楽は残ります。大昔でも、いい歌を歌える人が対価として魚をもらえたりしたんじゃないでしょうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる