AAAMYYY、変化を肯定するポジティブなエネルギー chelmico、鎮座DOPENESSら参加作『THANKS EP』を聴いて

Tempalayのメンバーであり、RyohuやTENDREのサポート、楽曲提供など幅広く活動するシンガーソングライター/トラックメイカーのAAAMYYY。2022年12月に産休に入ることを発表し、2023年に第一子を出産、復帰後も様々なライブやフェスに出演しながら、2024年はTempalayの3年ぶり5作目のアルバム『((ika))』をリリースし、Tempalayの活動10周年を祝う武道館でのワンマン公演も成功へと導いた(その間に第二子を妊娠・出産している)彼女が、まとまった作品としてはコラボレーションを軸に置き、“エンパシー”をテーマにしたEP『ECHO CHAMBER』以来、およそ2年8カ月ぶりとなる新作『THANKS EP』をリリースした。
最新作『THANKS EP』は、トラックリストにchelmico、鎮座DOPENESS、Neetz、Pecori(ODD Foot Works)、Yohji Igarashi、MONJOE、Zattaといった名前が並んでいることから、前作EP『ECHO CHAMBER』で切り開いたコラボレーションの可能性をさらに探求した作品でありつつ、同時にこの2年8カ月という歳月でAAAMYYYが手にした変化を反映した作品と呼べるだろう。本稿では、『THANKS EP』を1曲ずつ紐解きながら、そこにある変化、その魅力に迫っていきたいと思う。
さっそく本題に入ろう。chelmicoの2人を招いた「HAPPY」で『THANKS EP』は幕をあける。春の日差しのようなシンセと軽妙なマシンビートの混じり合ったトラックの上で繋がるAAAMYYY、Rachel、Mamikoによるマイクリレー。まず注目すべきは〈書きかけのリリックから 浮き上がるforever young〉〈reminiscing あの頃からすれば 深みが増していくyears チェルもミコもエイミーも〉というAAAMYYYのリリックだろう。ここでは、AAAMYYYがこれまで何度となく綴ってきたリリックについて、そこにはまだ書き始めた頃と変わらない想いがあることと共に、向き合ってきた歳月の分だけの深みが宿っていることを歌っているように聴こえてくる。
続くRachelとMamikoのラップにも言えることだが、重要なのはAAAMYYYがそこにある変化を非常にポジティブに受け止めていることだ。先に書いてしまうと、そのポジティブな姿勢は本作を通して一貫していると言っていい。さらに「HAPPY」のフックでは、そのポジティブさが〈You deserved to be happy(あなたには幸せになる価値がある)〉という力強いメッセージへと昇華されている。前段で『THANKS EP』について「AAAMYYYが手にした“変化を反映した作品”」と書いたが、この曲を踏まえれば「変化を肯定する作品」と言い換えることもできるだろう。
鎮座DOPENESSとNeetzの参加する「リラックス」の〈案外ゆるくいるのもいいね〉というラインもAAAMYYYの変化をわかりやすく反映しているかもしれない。あるインタビューで結婚・妊娠・出産を経て、“理想のミュージシャン像”を持っていた自分、あるいは生活においても「ちょっと完璧主義的な部分があった」という過去の自分自身からの変化を語っていた彼女を象徴する、より等身大な表現である(※1)。ヒップホップとは大雑把に言えば自らの経験をラップする表現だが、スクラッチも交えたNeetzによるヒップホップ色の強いビートは、そんな実存と強く紐付いた表現を後押ししてもいるだろう。〈盆踊りにも行けたらいいね〉〈月が出た出た月が出た あヨイヨイ〉という気の利いた鎮座DOPENESSとの掛け合いも楽しく、ヒップホップであり、極めてポップな1曲だ。






















