AAAMYYY、変化を肯定するポジティブなエネルギー　chelmico、鎮座DOPENESSら参加作『THANKS EP』を聴いて

　ダンスポップへと舵を切っていく3曲目は、おそらくはパートナーや近くにいる大切な人に向けられたものであろう「救世主」だ。2019年にリリースした「DAYZ」以来2度目のコラボとなるMONJOEのプロデュースした緩急の効いたエレクトロニックなビートの上で、AAAMYYYは〈you r my savior最悪な世界で yea ma lifesaver 生きなくちゃだめでも you r my savior 隣があなたなら大丈夫〉と軽快なボーカルを披露。長く続く不況や極端になっていく格差、なくならない偏見や差別、遠い地から日々届く戦争のニュース......。混迷を極める世の中であっても、近くにいる大切な人の存在の大きさを思い出させてくれる、エモーショナルでダンサブルなポップソングとなっている。

　DJとしても活躍するトラックメイカー、Yohji Igarashiのプロデュースする4曲目はヒップホップとダンスポップを掛け合わせたような「そのまさか」。AAAMYYYが、都会の忙しなさや目まぐるしいSNSの動きから距離を取り周囲の人々にフォーカスする様や、2児の母としておそらく子育てや家事などに振り回されている（“まさか”の事態に満ちている）はずの日常を反転させ、楽しんでいる様子をボースティングっぽく歌う痛快な1曲だ。Number_iによるヒット曲「INZM」の作詞も担当するPecori（ODD Foot Works）のラップも切れ味がいい。

　ムードチェンジして、ラストは有元キイチ（ODD Foot Works）とTaishi Satoによるユニット、Zattaをプロデュースに迎えた、アコースティックなテイストの「拝啓生きとし愛おしきあなた」。子どもたちへ宛てて歌っているようにも聴こえる、AAAMYYYの変化が記録された感動的な1曲であり、彼女のボーカルとしてのスキルが冴え渡る1曲でもある。

　とりわけ〈くだらない話で絆を確かめ合うよ〉から始まる、ラップと滑らかな歌が混じり合うパートの素晴らしさたるや！　感情の機微が複雑なまま鮮明に伝わってくるその表現力の凄みに圧倒されてしまう。そして何よりも強調したいのは、この曲の終盤でAAAMYYYが〈答えはもう要らない〉と歌っていることである。それは、きっと彼女が一つの答えにたどり着いた証だろう。つまり、AAAMYYYは変化を恐れていないということだ。彼女の手には、すでに変化する自身を受け入れる覚悟が握り締められている。2021年のアルバム『Annihilation』で自己と深く向き合い、『ECHO CHAMBER』で他者との間に新たな自己を見出そうとしてきたAAAMYYYの見せるその姿は、あまりに力強く、美しいと思う。

　ちなみにAAAMYYYは4月11日にコットンクラブで『Thanks』と題した初のワンマンライブを行う。『THANKS EP』に収録されたこの5曲が、彼女のこれまで残してきた作品とどのように混じり合うのか、とても楽しみにしている。

※1 https://www.billboard-japan.com/special/detail/4341

■リリース情報

デジタルEP『THANKS EP』
配信日：2025年3月26日（水）
配信：https://aaamyyy.lnk.to/THANKSEP

トラックリスト：
1. HAPPY (Feat. chelmico)
作詞・作曲：AAAMYYY, Rachel, Mamiko
 
2. リラックス (Feat. 鎮座DOPENESS, Neetz)
作詞：AAAMYYY, 鎮座DOPENESS
作曲：AAAMYYY, 鎮座DOPENESS, Neetz

3. 救世主 (Feat. MONJOE)
作詞：AAAMYYY
作曲：AAAMYYY, MONJOE

4. そのまさか (Feat. Pecori, Yohji Igarashi)
作詞：AAAMYYY, Pecori
作曲：AAAMYYY, Pecori, Yohji Igarashi

5. 拝啓生きとし愛おしきあなた (Feat. Zatta)
作詞：AAAMYYY
作曲：AAAMYYY, Zatta

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