新連載「RAP FOR YOUTH」序文 “本来の姿”を取り戻した日本のラップミュージック
コンテンツ拡充が勢いをさらに後押し SNSと結びつく“Flex”カルチャーにも要因が?
『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』『フリースタイルダンジョン』に並び、シーンに大きな影響を与えたのが、2017年5月より放送開始した人気シリーズ『RAPSTAR』(ABEMA/旧名称:『ラップスタア誕生!』)。次世代スター発掘を目的に、バトルではなく“楽曲制作”に焦点を置く同番組。もはや語る必要もないスーパースターの¥ellow Bucksをはじめ、Tohji、ralph、最近であればKaneeeにKohjiya、MIKADOと、2025年現在のトップランナーを輩出し続けている。
同番組を放送するABEMAでは、ほかにも『THE LYRICS』『my name is』といった、ラップミュージックに焦点を当てたコンテンツを続々と制作。別プラットフォームでは、Red Bull JapanがYouTubeにて2018年6月に『Red Bull 64 Bars』、2019年7月に『Red Bull RASEN』と、人気キュレーション企画を始動したほか、2017年4月にはZeebra主宰により、国内初のヒップホップを専門とするインターネットラジオ局「WREP」が誕生した。
頼もしい後ろ盾によってコンテンツが潤沢となり、新規リスナーがラッパーたちと出会う間口が広がったことも重要な意味を持つ(ちなみに、BAD HOPが初の日本武道館公演を開催したのが2018年11月のこと。やはり、2018年前後にこの国のラップは変動期を迎えたようだ)。
また時代との親和性についても言及したい。T-Pablowがクルーの代表曲「Ocean View (feat. YZERR, Yellow Pato, Bark & T-Pablow)」で被っていた、GUCCIのベースボールキャップのことを思い出してみてほしい。
ヒップホップにおける“Flex”カルチャーは、同時期にSNSの主流となったInstagram、さらに2017年10月に国内版がローンチされたTikTokなどとの親和性が高く、その意味でも多くの若者が持つ現代的な価値観を刺激したのは想像に難くない。特にTikTokにおいては、これまでZOT on the WAVE & Fuji Taito「Crayon」や、直近ではKaneee「Life is Romance」など、若手ラッパーによる数々の楽曲のスマッシュヒットを後押しし、若者たちに浸透させてきた。もちろん、同アプリを代表として、このジャンルがポップス的な扱われ方をされることに、十分な線引き意識を忘れてはならないのも間違いないわけだが。
新連載「RAP FOR YOUTH」始動ーーリアルタイムで活躍するラッパーが数多く登場
こうした背景を踏まえ、リアルサウンドではこのたび連載企画「RAP FOR YOUTH」を始動する。内容は主に、リアルタイムで活躍するラッパーへのインタビューだ。登場するのは、現在のシーンを牽引する、まさにいま注目すべきラッパーたち。
インタビュー内容の軸はふたつ。ひとつは、ユースカルチャーとなっている以上、楽曲制作やライブにおいて、若い世代を取り込む意識や創意工夫をしているか。そしてもうひとつは、彼らの過去について。自身の過去から若い世代にとっての学びとなるようなエピソードを尋ねていく。本連載ではとにかく徹底的に、自分自身とまっすぐ向き合ってもらう予定だ。作詞業を生業とする彼らの言葉だからこそ、胸に響くものがあるに違いない。
本連載が、このユースカルチャーの盛り上がりを象徴する読み物として、ラッパー、ラップミュージック、そして次の世代を担う若者たちを繋ぐ架け橋ーーというより、その道幅をさらに広げてくれれば幸いだ。もちろん読者によっては、ただの〈暇つぶし〉として映ることもあるだろう。だがそれ以上に、ラッパーたちの綴るリリックと同様、彼らへのインタビューが〈時に運命すらねじ曲げ〉てくれることを、心から祈っている。

























