『ユイカ』、素顔を明かした今思うこと 20歳を迎えて芽生えた覚悟と新曲「おくすり」を語る

『ユイカ』はなぜ素顔を明かした?

(新曲「おくすり」は)“お”がついているのがかわいいなって(笑)

『ユイカ』(撮影=はぎひさこ)

――その活動を経て、2月5日には新曲「おくすり」をリリースしました。今回初めてタイトルから曲を作ったそうですが、どうしてタイトルから曲を作ってみようと思われたのでしょうか。

『ユイカ』:今まではいちばん最後にタイトルをつけてたんです。でも、今回は作りたい曲のイメージを思い浮かべるところから始まっていて、「タイトルはかわいい感じがいいな」と思った時に「おくすり」というワードが出てきました。私自身「薬」ではなく「お薬」と言ってしまうし、“お”がついているのがかわいいなって(笑)。漢字ではなくひらがなで書いたほうがよりかわいく感じるし、「おくすり」というタイトルを見たら私だったら聴きたくなると思って。

おくすり / 『ユイカ』【MV】

――そもそも「おくすり」というワードはどうやって生まれたのですか?

『ユイカ』:この曲を書く時にちょうど風邪を引いていて、お薬をもらっていたんです。ギターをポロポロ鳴らしている時に目の前にお薬の袋があって。何気なく処方箋を見ていたら、「“おくすり”ってよくない!?」って(笑)。両親が薬剤師で、私もかつては薬学部に進学しようと思ったこともありましたし、小さい頃から縁があるもので。このタイトルの曲は私にしか書けないと思ったんです。しかも、曲を書こうとしているタイミングでお薬が目の前にあったこともすごい偶然ですし。

――たしかに。タイトルもさることながら、歌詞も素晴らしいですよね。ストーリーはどうやって組み立てたんですか?

『ユイカ』:私、構成を考えずに曲を書き始めることが多いんです。今回も最後に〈貴方も私のおくすり〉と立場が逆転する部分があるのですが、それも狙ったわけじゃないんですよ。書きながら「こういう展開もアリかも」って無計画に書いていきました。普段から「こういう曲にしたい」というよりも、使いたいワードを使うために曲を書くことが多いです。

初ライブ後に訪れた曲作りの変化とリスナーへの想い

『ユイカ』(撮影=はぎひさこ)

――「おくすり」で使いたかったワードとは?

『ユイカ』:いちばん書きたかったのは、〈あの子と私は/非常に飲み合わせが悪いため/併用は絶対禁止!〉。ここを書きたいがために書いた曲と言っても過言ではないくらいです。そのあとに〈え?心拍数の上昇?/それかなり正常だから/大丈夫!〉、〈副作用で依存性がありますが/人体に影響はないので/ご心配ないように〉といったラインを思いついて、いろんなところに散りばめていきました。

――まさにそこのワードが秀逸だなと思ったのですが、どうやって言葉が生まれていったんですか?

『ユイカ』:小さい頃から「こうやって飲むものだよ」「一緒に飲んじゃダメな薬があるよ」「成分が似ているものだから一緒に飲んだらダメだよ」という話を聞いていたのが大きいかもしれません。私の家は家族で話す機会をちゃんと設けている家庭で。両親が仕事から帰ってきて、みんなで晩ごはんを食べている時に、よくお薬の話が挙がっていたんです。そういう意味でも、ここは私だから書けた言葉なんだろうなと思っています。

――なるほど。

『ユイカ』:でも、専門的になりすぎると伝わらないので、誰でもわかるワードに戻す作業を繰り返しましたね。専門的すぎてもよくないし、でも若干専門的なほうが面白いし……そういうバランスを考えながらたどり着きました。

――これまでも伝わりやすさまで考えて曲を書いていたのですか?

『ユイカ』:あまり考えていなかったかもしれません(笑)。最初に書いた曲なんて、好きな人が好きすぎてどうしようもなくて、衝動的に書いた歌でしたし。届けたいたったひとりに向けてブワーッと書く、みたいな。だから、そのほかの人が聴くことは考えていませんでした。でも、初ライブのあとから楽曲を受け取ってくれる皆さんのことを意識するようになって。今までは聴いてくれる人と直接会うこともなかったし、顔を見たこともなかったので「私の曲を聴いてくれている人って、本当にいるのかな?」と思っていたんです。だけど、実際にライブをした時に「本当にいる!」と思って(笑)。曲を書く時に「あの人たちはこの曲はどういうふうに受け取ってくれるんだろう?」「こう書いたら喜んでくれるかな?」と考えるようになりました。

――書き方を変えると、曲自体にも変化がありそうですね。

『ユイカ』:「おくすり」で言うと、「薬」というひとつのテーマをちゃんと決めたことで、(楽曲のメッセージが)伝わりやすくなったなと思います。今までは、いろんなことを詰め合わせて曲を書いていたんです。私としてはストーリーが繋がっていることがわかるけれど、聴いてくれている人たちからすると歌詞もバラバラに感じていたのかもしれないな、って。そこにひとつ大きなテーマがあることで、歌詞の意味もわかりやすくなるなと感じています。それに、テーマがあることで言葉が具体的でなくても伝わるんですよね。あえてぼやけさせることで、ラブソングだけではなく、私とリスナーさんの関係を歌っているようにも聞こえるし、曲の幅が広がった気がします。

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