『次世代pre. NEXT GENERATION LIVE 2025』気鋭の8組が残した爪痕 新たなロックの胎動を予感させるステージ

メとメ

 「ライブハウスは自由な場所だから、私たちもあなたも自分らしく楽しんでください」ーーそんなひと言を一切肩肘張らずに体現する名古屋発の3人組バンド、メとメ。「過去たらし」が鳴った瞬間、シンプルながらもフレーズの一粒一粒がキラキラと跳ねていて、「楽しもう」ではなく「楽しんでいる」ことが手に取るように伝わってくる。パンキッシュな「中華屋さん」はこのタイトルと曲調でまさかの元彼と鉢合わせる気まずさを歌った曲。だけど小林加奈(Vo/Gt)が発するセリフみたいな歌詞や、演奏しながら思わず歌詞を口ずさんでいるみも琴未(Ba/Cho)&くっく(Dr/Cho)の姿に、自然とこちらも楽しくなってきた。さらなる“中華”テイストなラブソング「好想你」はタイトなリズムとギターリフが牽引する1曲だが、彼女たちの手にかかればやっぱり楽しさが前面に出る。ちょっぴり切ない歌詞でも「まあそんな日もあるっしょ!」と笑い飛ばしてくれるようなポジティブさがメとメの魅力だ。「あんたのこと」を歌う際、小林が「音楽が一番素直になれる」と言っていたが、本当にそうなのだろうし、だからこそオーディエンスも肩の荷をスッと下ろして素直に楽しむことができる。自然と合唱の渦が起きたのはそのためだろう。早くこのバイブスが日本中に広がってほしい。

メとメ

インナージャーニー

 そよ風のように温かなカモシタサラ(Vo/Gt)の歌声と、派手さはなくとも確かな技量で楽曲の魅力を引き立てるメロディアスな演奏は、個性派ばかりが集うこの日、むしろ“インナージャーニーらしさ”として観客の心を強く揺らしたのではないだろうか。「夕暮れのシンガー」はすり減らされていく焦燥や怒り、そんな日々の隙間に埋まっている小さな光について歌う決意の曲であり、続く「ステップ」はそんな小さな光や一瞬の輝き“そのもの”なのではないかと聴いていて思った。ゆったりした平メロと、間奏やアウトロで聴かせるドライブ感溢れる演奏の緩急が耳元を捉えて離さない。空を見上げるようなカモシタの眼差しも素敵だ。独創的なイントロで空気を変える「グッバイ来世でまた会おう」でも、歌うようなギターソロやとろけそうなギターフレーズが極上な「すぐに」でも、懸命に生きた証は必ずどこかに残っているのだと安心させるような包容力で会場を満たす。ラストナンバー「きらめき」について、カモシタは「人の気持ちは知ろうとしないとわからないという曲」だと話したが、だからこそ人は自身の足取りを確かめるためにロックンロールを鳴らし、誰かと共鳴し合うのだろう。内側にある無限の可能性をそっと肯定してくれるような美しいライブだった。

インナージャーニー

カラコルムの山々

 予測不能という言葉は彼らのためにある。“キネマポップ”を標榜する4人組 カラコルムの山々のライブに圧倒されてしまった。謎の酩酊感を醸し出すシンセに導かれ「大仏ビーム」が奏でられると、ディストピアっぽいのにどこか平凡で滑稽にも思える、今ではない空想の日本が姿を現す。直立不動で目線を逸らさず眼力を飛ばし続ける石田想太朗(Vo/Gt)、チャイナドレスをまとったぐら(Dr)、愉快なサングラスをかけた小川諒太(Key)、そして唯一“普通”に演奏しているように見える木村優太(Ba)。4人はまるで語り手や役者に徹しているかのようで、各々の表情や空気感から見える“コンセプト”が非現実的な楽曲に強烈な求心力をもたらす。ふわっとした浮遊感を持つ「東京自転車」や「タイムスリップできない」ではファンキーかつテクニカルなリズム隊が地に足のついたグルーヴをキープし、「ブランコスカイライン」ではドリーミーなアウトロでギターソロもしっかり決めるなど、演奏面も申し分ない。「週刊奇抜」では曲始まりで機材トラブルがあったものの、やり直さずそのまま駆け抜けたことでむしろバンドのエネルギーがフルに発揮されたように思えた。優れたカルチャーとの出会いは、現実を生き抜くために必要な“逸脱”を授けてくれるものだが、他ならぬカラコルムの山々との遭遇こそが、令和の時代に刺激と中毒をもたらしてくれるに違いない。

カラコルムの山々

Apes

 8組のトリを飾るのはApes。「Farewell」でゆっくり音を奏で始めると、楽器隊にかけられた淡いリバーブが、そして曲終盤にかけて帯びていく演奏の熱量が、別れの風景や切ない感情の行く先をじんわりと浮かび上がらせる。「全員にロックが最高っていうのをわからせたい」という坂井玲音(Vo/Gt)の言葉通り、細かく刻むギターにスラップベースやタイトなドラミングが絡む“技あり”連発な「ハイライト」から、歪み満載のヘヴィロック的な爆発力を見せた「Reservoir Dogs」への流れは最高だった。低音の効いたダンサブルなグルーヴに乗って、〈君〉を忘れられないやるせなさについて歌った「ネバーエンド」をこの日イチ感傷的に響かせて本編を締めると、アンコールではフラストレーションを爆発させるようなロックンロール「Hesitate」を披露。日々の苦悩や孤独をポップなメロディで歌うのがApesだが、ひと口に“不安”や“不機嫌”と言ってもその程度は日によって様々である。そんな決まりごとのない現実と呼応するかのようにシームレスに変化していくのがApesのロックなのだろう。「尖ったバンドばかりでたくさん刺激を受けました」と1日を振り返った坂井だったが、ロックというジャンルの奥深さを誰よりも体現していたのはApesだったんじゃないかと思う。

Apes

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