『次世代pre. NEXT GENERATION LIVE 2025』気鋭の8組が残した爪痕 新たなロックの胎動を予感させるステージ

『次世代pre. NEXT GENERATION LIVE』レポ

 Creepy Nuts、羊文学、ハンブレッダーズ、Survive Said The Prophet、w.o.d.らが所属する音楽プロダクション 株式会社次世代。同社が主催する新人コンベンションライブ『次世代pre. NEXT GENERATION LIVE 2025』が1月31日に新宿LOFT&BARにて開催された。2022年に配信ライブ形式で行われて以来、約3年ぶりの開催となる今回。登場したのはBlack Leech、板歯目、Chim Chap、Kanna、メとメ、インナージャーニー、カラコルムの山々、Apesという気鋭の8組。1組あたり20分と短いステージながらも、各々の個性がしっかりと炸裂しており、2020年代後半以降のライブシーンを盛り上げる原石が勢揃いしたかのような素晴らしい1日となった。各ステージの模様をレポートしていく。

Black Leech

 BAR STAGEでトップバッターを飾ったのは横浜出身のBlack Leech。サポートベーシストを加えた4人編成でステージに現れると、のっけからギラッギラとフロアを睨むドレッドヘアの小泉玲音(Vo)の目つきに引き込まれる。バラバラな方向にヘンテコなお辞儀を決め、音が鳴る前から只者ではないオーラを放つ4人は、やんちゃさと確かな音楽スキルに裏打ちされた懐かしくも疾走感溢れるアンサンブルで駆け出す。Green DayやSum 41を彷彿とさせるポップパンクにファンキーなフレーズが混ざる最新曲にして名刺代わりの1曲「Don't Call My Name」で一気に加速すると、「Defective」「Go Ahead Without Me」と曲が進むたびに音の中で狂っていき、ステージを自らの遊び場=ストリートへ塗り替えていく。スケールの大きなメロディに身を委ねるように歌われたミドルナンバー「SAKURAGI」はホームタウン 桜木町についての曲だそうで、美しいクリーンボイスやギターソロの奥に見え隠れする彼らのバックグラウンドに胸を掴まれた。ラストは「Meat Sushi」「Make You Sad」を間髪入れずに叩き込み、ニューメタル、パンク、レゲエ、ファンクを自在に使い分けるスキルフルさを惜しみなく発揮。トップバッターとして最高の狼煙を上げた。

Black Leech

板歯目

 ぶっといベースラインとズンズン行進するドラム、〈カマキリ食われる 太刀打ちできない〉と叫ぶ野生と理性がせめぎ合うボーカル。荒ぶるファズギターと庵原大和(Dr)率いるリズム隊がバトンを渡し合いながらジリジリ熱量を高める「ちっちゃいカマキリ」は、板歯目らしさ全開のオープニングナンバーだ。続いて、どこか舌足らずな千乂詞音(Vo/Gt)の声が癖になる「沈む!」で早くもHALL STAGEの空気を塗り替えると、変則的な展開とサビの爆発力で魅せる最新曲「親切」、切り裂くようなイントロから変拍子の沼に引きずり込む「オルゴール」と矢継ぎ早に繋ぎ、3ピースの切れ味を余すところなく詰め込んだセットリストで爆走していく。火花散らして本気(マジ)でぶつかり合うからこそ、血の通った真実に触れることができるのではないかーーカオスで滑稽な世の中に「頭冷やせ」とでも言わんばかりのプリミティブな衝動に、否が応にも体が動く。ラストナンバー「オリジナルスクープ」に至るまで板歯目の芯は一切ブレない。ガレージロックやパンクと呼ぶには上手すぎるし、ポストロックと呼ぶにはロマンティックだけど、強火調理でそれらの旨みがギュッと濃縮された板歯目ならではの濃い味をこれでもかと食らうことができた。

板歯目

Chim Chap(チムチャップ)

 全く異なる音楽ルーツを持つメンバーが集い、華のある佇まいで“バンドの豊かさ”そのものを体現する滋賀県出身の4人組 Chim Chap。たった3曲だけのステージでも、その魅力を存分に体感することができた。1曲目は「Lipstick」。ノリの良いギターロック調の演奏でグルーヴを作りつつ、Jesse(Vo/Gt)の色気をまとった歌声がアクセントとなってユニークな音世界が広がる。続いて「Billie Jean」(マイケル・ジャクソン)の如きベースラインとリズミカルなカッティングギターが重なり合う中、「新宿で、日本で、一番ホットな場所にしましょう」と意気込むJesse。色鮮やかなファンクポップ「スパンコール」が鳴り響いた瞬間、ステージとフロアの隔たりはなくなり、その場にいる全員が自由に体を揺らし始める。アウトロではJesseとRyo Suzuki(Gt)が掛け合いのギターソロを披露。ライブで密度の濃いダンスナンバーに化ける「スパンコール」は、やはりChim Chapの堂々たる代表曲と言えそうだ。幻想的な3曲目「End of the night」ではJesseがハンドマイクを持ってファルセットも交えながらスウィートに歌い上げ、繊細なタッチのギターソロも美しく決めた。この振れ幅をワンマンライブでも体感してみたい。そんな期待に胸が踊るステージとなった。

Chim Chap

Kanna

 名古屋出身、MC+ギタリスト編成の2人組 Kanna。90’s〜00’sのミクスチャーロック直系な懐かしいサウンドを持ちながら、互いの個性をぶつけ合って遊ぶかのように音を紡ぎ、現代的な感性でジャンルを再定義するユニークな存在だ。1曲目「ワンウェイ」から2人が譲らぬ主役としてガンガン前に乗り出しスリルを生み出す。虎視眈々と鎬を削り合う両者だが、不思議と緊張感よりも楽しさが伝わってくるところがいい。Nouchi(MC)の軽快なラップにKoshi(Gt)の鋭いギターリフの応酬が重なる「Boys&Boys」でコールアンドレスポンスを巻き起こすと、ヘヴィなイントロ&高速ラップでアジテートする「空」、そして、無理なき平常心と嘘なき向上心でマイウェイを進む歌「いいんじゃNight!」へ繋がる緩急も楽しく、ライブのテンションをしっかりコントロールするギターの腕にも光るものがある。「Make My Day」では〈意外に意味がない日々が/次第に意味を持ってく〉〈まずは目指せよ平均値/微妙ならそれKeep onしつつ一歩/踏み出してみよう〉というKannaらしいリリックと、言葉を際立たせる緩いグルーヴが気持ちいい(ターンテーブルのように鋭いボイスパーカッションにも聴き惚れた)。あくまで“Take It Easy”、だけどしっかり未来を切り拓く意志が伝わる20分だった。

Kanna

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる