Kroiが最高到達点を更新していく痛快さ ライブハウスのような感覚で会場を熱狂させた初アリーナワンマン

Kroi、初アリーナツアーワンマンレポ

「夜中、仕事終わりでライブハウスでやってた人たちがアリーナに出れるって、すげえ面白いことが起きてるんですよ」

 この日のライブのなかで内田怜央(Vo)はこう語った。自らのスタイルを貫きながら、まるでライブハウスのような感覚で、アリーナを熱狂させる。内田が言う通り、こんなに面白い出来事にはそうそう出会えるものではない。

Kroiライブ写真(撮影=Daiki Miura)
(撮影=Daiki Miura)

 Kroiにとって初のアリーナ公演『Kroi Live Tour 2024-2025 "Unspoil" at ぴあアリーナMM』。昨年から続く『Unspoil』ツアーのファイナル公演と位置付けられたステージで彼らは、“行けるところまで行く”を掲げたキャリアの最高到達点をさらに更新してみせた。

 Kroiのロゴが浮かび上がるなか、内田、長谷部悠生(Gt)、関将典(Ba)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)がステージに上がると、会場を埋め尽くしたオーディエンスから大きな歓声が沸き起こる。内田のギターから、いつものようにジャムセッションでライブはスタート。軽快なバンドサウンドから1曲目の「HORN」へ。

 ドラムのキックとベースラインでつないだ「Psychokinesis」では抑制の効いたグルーヴが広がり、観客が気持ちよさそうに身体を揺らし始める。さらに内田のラップからはじまった「Network」では長谷部のブルージーなギターソロが炸裂。「Balmy Life」では千葉のボコーダーボーカルで会場を沸かせ、内田がパーカッションを叩きながら歌った「dart」ではベース、キーボード、ギター、ドラムのソロ回しによって高揚感を演出。冒頭5曲の体感時間は数秒。瞬く間にKroiはアリーナ全体を掌握してみせた。

Kroi 内田怜央 ライブ写真(撮影=Daiki Miura)
内田怜央(撮影=Daiki Miura)

 「おーい! 始まったぞ。記念すべきKroiちゃんの初アリーナワンマン。すごい、人が引くほどいる(笑)。ふざけて“アリーナ!”とか言ってたけど、ホントに言えちゃうよ。みなさん来てくれてありがとうございます。ちょっと益田さんの“アリーナ”くださいよ」(内田)といつも通りのユルユルMCの後は、ゆったりしたグルーヴの「Green Flash」。そしてライブ前半のハイライトは、「Finch」のブリッジ部分からの引用であるトライバルなコーラスに導かれた「Monster Play」だった。「特別な日ということで、久々に益田さんにギターソロを弾いてもらおうと思います」(内田)と、なんと益田がギター(自前のファイヤーバード)を持ってステージ中央へ。「今日はみんなにギターを見せるために、人間から鬼になってやってまいりました!」(ヘアスタイルが鬼のツノっぽくなってました)とギターソロを豪快に弾き倒したのだが、これがビックリするほど上手い。お遊び的な演出ではなく、あくまで音楽や演奏で盛り上げ、楽しませる。これがKroiのすごさだよなと思っていたら、益田が「みんな、俺は学生の頃からブルースが好きで。憧れのギタリスト、ジョニー・ウィンターに惚れてからは、ジョニーの愛器、ファイヤーバードを買って、家で弾く日々………」とギターへの想いを感慨深そうに語り始め、会場に笑いが広がる。

Kroi 益田英知 ライブ写真(撮影=Kaito Ono)
益田英知(撮影=Kaito Ono)
Kroiライブ写真(撮影=Kaito Ono)
(撮影=Kaito Ono)

 「明滅」を演奏した後も、「いやあ、ギター弾けたわ」(益田)、「めっちゃ練習してたよね」(内田)、「セトリ決まる前に、益田がギターソロ弾きたいって言い出して」(関)という話題からはじまり、グッズのパーカーが高すぎる、アリーナの空気が掴みづらいなど、あけっぴろげなトークが続く。「すごいよね、俺ら、アリーナでもこのテンションだから(笑)」(内田)というコメント通り、ステージがデカくなってもKroiのナチュラルぶりは変わらない。

 大胆なテンポチェンジが印象的なファンクチューン「sanso」からは、さらにディープなKroiの音楽世界に引きずり込まれた。ギター、ベース、キーボードのユニゾンによるリフ、内田のラップ~メロウなボーカル、長尺&激シブのベースソロが響き合う「Pass Out」、チルな音像のなかで〈触れる肌/ずっとこのままでいたいよ〉という甘いラインが溶け、千葉のジャジーなプレイが色どりを与える「Shincha」。さらに“ぴあアリ”を連呼する短めのセッションを挟み、内田のソウルフルなボーカルが光を放つ「帰路」へ。この日も同期やクリックは一切なし。すべて生音による演奏で、メンバー同士でアイコンタクトを重ねながら多彩なグルーヴを生み出していく様はまさに圧巻だった。アリーナでこれをやれるバンドは、本当に稀だと思う。楽曲のイメージ、演奏のテンションとリンクした照明、映像の独創性も、彼らのライブの大きな武器だろう。

Kroi 千葉大樹 ライブ写真(撮影=Daiki Miura)
千葉大樹(撮影=Daiki Miura)
Kroiライブ写真(撮影=Daiki Miura)
(撮影=Daiki Miura)

 「バンド結成日って2月3日だっけ? もう7年経とうとしております。まさかアリーナでワンマンができるとは……思いたかったんですけど、思ってもみなかった光景です。本当にありがとうございます。夜中、仕事終わりにライブハウスでやってた人たちがアリーナに出れるって、すげえ面白いことが起きてるんですよ。それに加担してくださってる皆さん、最高にオモロイです」(内田)というグッとくる言葉からライブは後半へ。

 エレクトリック・マイルスを想起させるイントロから始まったのは「侵攻」。クールな心地よさをたたえたアンサンブルのなかで、内田の抑制されたボーカルとギターソロが広がり、少しずつ高揚感が増していく。さらに鋭利なギターカッティングから「selva」へ。シャープなグルーヴが渦巻き、関と長谷部が冴えまくったソロ演奏をぶつけ合う。

Kroi 関将典 ライブ写真(撮影=Kaito Ono)
関将典(撮影=Kaito Ono)
Kroi 長谷部悠生 ライブ写真(撮影=Kaito Ono)
長谷部悠生(撮影=Kaito Ono)

 そして、ライブのクライマックスを形作っていたのは、アルバム『Unspoiled』の楽曲だった。中東的エキゾチズムを描き出すセッションに導かれ、サイケデリックな世界観を増幅させた「Sesame」、フュージョン、ロック、ジャズが絡み合う刺激的なアンサンブルで観客の身体を激しく揺らした「Amber」、そして、ヘビィロック的なイントロから一転、切れ味鋭いサウンドと高速のラップ、オーディエンスの合唱がぶつかり合う「Hyper」。新しい楽曲をライブの場で鍛え上げ、アンセムとして定着させたことも今回のツアーの大きな収穫だった。

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