Number_iの音楽を支えるSHUN(FIVE NEW OLD)が語る、「ギリギリのラインを攻めることができる」理由と濃密な一年

SHUNの目に映るNumber_iの姿

Number_iの楽曲プロデュース「意外と僕らが持っているもので海外で勝負ができる」

FIVE NEW OLD・SHUN(撮影=林将平)

――SHUNさん個人の活動にフィーチャーすると、やはり去年はNumber_iでの制作がいちばん比重を占めていたと思いますが、あらためて振り返ってみるといかがですか。

SHUN:Number_iに関しては、ひとまず「GOAT」でデビューして、そこからミニアルバムをリリースして一旦は終了かなと思っていたところ、ありがたいことにまたお話をいただいて、その先も継続してやらせていただけることになって。この一年間は、ずっとNumber_iの制作をやっていたなと思うのが正直なところです(笑)。

Number_i - GOAT (Official Music Video)

 ただ、その裏では今まで通り長く付き合いのあった方たちとお仕事をさせていただきましたし、GReeeeNがGRe4N BOYZと改名した時には、彼らの大事な楽曲である「愛唄」(2007年)をリアレンジさせていただいたり、『いないいないばあっ!』(NHK Eテレ/GRe4N BOYZ「グルグルブンブン」)や『みんなのうた』(NHK総合/NHK Eテレ/ERAIZA「Utopia」)など幅広くやらせていただいて。個人的には、ジャンル関係なく「いいものはいい!」というマインドでやりたいタイプなので、一年かけてジャンルレスに活動することができて、充実していたなと思います。同時進行でいろんな曲をやっているので、「GOAT」を作りながら「グルグルブンブン」のアレンジをやっている時のギャップはすごかったです(笑)。

――でも、裏を返せば両方とも聴かれる世代の射程は広いですよね?

SHUN:たしかに。共通している部分がないとは言えないし、人がどういうところに引っかかって、どういうところで耳が持っていかれるのか、そういうことはどの曲でも意識しますし、幅広くやることで面白さや発見もみたいなものがあったので。僕はやりながら気づく性分だから、面白かったですね。

――Number_iに関しては、きっと「GOAT」以降にこんなに濃密な時間を過ごすとは想起できてなかったと思いますけど、リリース直後から大きなバズを生み、その後、『コーチェラ』(『Coachella Valley Music and Arts Festival 2024』)に繋がっていくことも含めて、SHUNさんの視点としてNumber_iはどういう音楽を提示することが彼らにとってエキサイティングなのか、あるいはプロデューサーの仕事のあり方として何が正解なのか、そのあたりはどう考えていますか?

SHUN:FIVE NEW OLDとして早い段階から海外に出て活動して体感したことは、海外の人たちは英語よりも母国語、日本語で聴かせてくれと思っているんですよね。だから、求められているものって、すでに世のなかにあるものではなく、新しい何かが海外のリスナーには面白がられる。それこそ、英語圏ではない日本だからこそできる何かというか。内側にいると気づきづらいんですけど、意外と僕らが持っているもので海外で勝負ができると思ったんです。一時代を築いてきた彼ら3人がどうやってチャレンジしていくか、どの武器を使ってどう表現していくほうがいいのか、というのはみんなで考えていた部分ではあります。

――それは、MONJOEくんやPecoriとも話し合った?

SHUN:そうです。「Number_iがこれをやったらヤバいよね」という会話も多かったし、彼ら3人がやることのギャップも含めて、何をやったら面白いか、まず国内に対して提示することが直接的に海外に結びついていく。まずは国内でやり切ることが海外へ届く一歩目だと思っていましたね。

――もちろん3人はデビュー前から多くの支持者がいましたけど、「GOAT」というチャレンジングな楽曲は、想定するファン層よりももっと高く広く飛んでいったと思うんです。自分はODD Foot Worksのマネジメントを務めてるので、Pecoriを主語にした場合の視点ではあまり客観的に見れていないところがあるのですが、SHUNさんはこの大きなバズをどう捉えましたか。

SHUN:正直、反応はすごく賛否あるだろうなと思いながら制作してましたけど、思ったよりみんなが面白がってくれましたし、こんなにいい反応のほうが多いんだなと驚きました。注目されているからこそ、賛否の否の部分があって、それがオセロのようにどんどんひっくり返っていくのが面白いんだろうなと最初は思っていたんですけど。

 モンちゃん(MONJOE)もペコちゃん(Pecori)も尖っているけど、空気は読める人というか(笑)。「これくらいにしておこう」とか「もう少しポップに寄せよう」とか、制作の段階では試行錯誤していたんですけど、意外とメンバー3人のほうから「もっといきたいです」と言われて。「やっちゃっていいの?」って感じでしたよ(笑)。だから、僕らはもっと洗練させようと舵を切ることができたし、信頼しているスタッフさんも含めていいチームだなと思いました。賛否の部分ではどうなるかなと思っていたけど、かっこよくて面白いと思うものをやりきったので、「これから先どうなっていくのかな?」と思いながら見てましたね。「始まるな〜!」って。

――Pecoriのリリックやフロウも非常に記名性が高いので、本来であれば彼がラップするからこそ成立する側面が多々あると思うのですが、Number_iの楽曲群はサウンドもラップもレッシュなポピュラリティを切り拓くギリギリのポイントを射ているんだなと思います。

SHUN:もちろん表面上のコーティングされたものだけで判断する人もいるかもしれないですけど、彼らはたくさん噛めば味わい深いし、僕らが狙ってやっているポイントを理解してくれている人はすごく面白がってくれたので。そこが伝わる人に伝わってよかったなと思います。僕らもレコーディングをしていて、楽しくなってくるんですよ。もっともっと色付けしていって、その時はやりすぎたなと思うくらいやっても、彼らにはそれを作品に落とし込める力があるので。悪ふざけにならないで、ギリギリのラインを攻めることができる。そういうことをやれる日本人って意外と少ないと思うし、3人が理解をして表現してくれるというのは、すごいことだなと思います。

Number_i、3人それぞれが持つ飛び抜けた武器

FIVE NEW OLD・SHUN(撮影=林将平)

――SHUNさんから見た、平野紫耀さん、神宮寺勇太さん、岸優太さんのパフォーマーとしての印象や普段の制作面でそれぞれどういうリクエストがあるのかなど含めて、3人について教えてもらえますか?

SHUN:紫耀くんはすごく素直でピュアな人です。これはピュアだからこそなのかもしれないけど、聴いているポイントが僕らとは違って、「そこが気になるんだ」というところを無邪気に伝えてくれるんですよ。最初にセッションした時、「なんかこのあたりの聴こえ方が気持ち悪いんですよね」と言われたことがあって、紐解いていくとスネアの位置がちょっと違っていて、「半拍前がいいです」と言われたり。きっと彼はダンスをやっていたから音楽と体がリンクしているんですよね。当時は、まだ何の音がどうなっているのか言語化できないタイミングでしたけど、「何かがごちゃついている」と彼が言った時は、シーケンスのアルペジエーターの音が邪魔していて踊りに当てづらかったようで。そういう話ができる人なんだなと思います。

――面白いですね。アカデミックには説明できないけど、感覚で気持ちいい、気持ち悪いがはっきりしている。

SHUN:しかも、すごく申し訳なさそうに言うんですよ(笑)。きっとそれは、まだうまく言葉にできないからだと思うんですけど、純粋に「伝えたい」という気持ちが表に出てるんですよね。

――神宮寺さんは、いかがでしょう。

SHUN:ジンくんは、バランス感覚がめちゃくちゃいい人。ふたりの話をちゃんと吸い上げたり、まとめたり、俯瞰で見ている印象もあるんですけど、決して自分の意見がないわけではない。「僕はこう思う」「こうしたい」ということをはっきり言ってくれる印象があります。ピュアがゆえに、「GOAT」から最初のミニアルバムまではスイッチが入った紫耀くんが衝動的言葉を発する時はジンくんは一歩引いていた気がするんですけど、付き合いを重ねていくと「こういうことがやりたい」と話してくれるようになった。彼は、ゴールを見据えながら会話をしてくれる人だと思いますね。音楽的にもふたり(平野と岸)とは違うジャンルを聴いていたりもします。

――たとえば、どんなジャンルですか?

SHUN:「INZM」を作ったのもあると思うんですけど、結構ミクスチャーものやロックを聴いていますね。あとは、彼はTシャツも好きなんで、ヴィンテージのバンドTシャツをずっと着ていたり。ファッションとして好きというのもあると思うけど、きっと勉強も含めてたくさん聴いてると思うんですよね。

Number_i - INZM (Official Music Video)

――なるほど。岸さんは?

SHUN:岸くんは、もちろん出る時は出てくるんですけど、おそらく気を遣っているのか、3人でいる時は言葉数は少ないほうで。でも、彼はめちゃくちゃ意見とアイデアを持っているんですよ。ポロッというひとことが面白いアイデアだったり、たくさんの考えを持っているからこそ、すべてを試してみたいタイプの人。レコーディングでも「もう一度録り直したい」とか「こういう歌い方をしてみたい」というのがいちばん多いですし、細かいところまで試行錯誤するタイプですね。

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