sisが目指す、日本と韓国の音楽文化を発信する“トロット”のパイオニア 「日本語の歌を韓国で歌うことが感慨深かった」

sisが目指すトロットのパイオニア

 オーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』から選抜された、かのうみゆ、MAKOTO.、太良理穂子、あさ陽あいの4名からなるガールズグループ sisが、2月5日にシングル『愛のバッテリー』でデビューした。

sis / 愛のバッテリー(Japanese ver.)

 「トロット」は、日本における演歌や歌謡曲とも近い、韓国の伝統的な大衆音楽ジャンル。デビュー曲「愛のバッテリー」もオリジナルはホン・ジニョンによる新世代トロットで、sisバージョンではプロデュースをヒャダインが担当し、日本語やメロディがクセになる一曲に仕上がっている。

 4人それぞれが異なるバックボーンを持ちながら、共通して歌手としてのスキルを磨いてきたキャリアを持つsis。本インタビューでは、デビューシングルの制作秘話とともに、彼女たちがなぜ歌手を目指し、『トロット・ガールズ・ジャパン』に応募したのか、そして今後の展望について話を聞いた。(編集部)

4人それぞれが歩んできた歌手としての人生

sis

ーーリアルサウンド初登場なので、自己紹介代わりに皆さんのバックグラウンドを聞いていきたいと思います。かのうさんはなぜ、歌手を目指したのですか。

かのうみゆ(以下、かのう):私の原点は、6歳のときにディズニー・チャンネルで見たドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』です。マイリー・サイラス演じる普通の女の子マイリー・スチュワートが、実は大人気アイドル"ハンナ・モンタナ"として2つの世界を生きている……という物語なのですが、ハンナ・モンタナのキラキラしてる姿に憧れて、親が帰宅するまでテレビを見ながらずっと彼女のマネをしていました。ハンナ・モンタナのようになりたくて、ボイトレに通って、子役も始めて。そして10歳ごろから歌1本に絞り、オリジナル曲を作るためにギターも始めました。そのころ初めて作った「あきらめないで」という曲を今でも覚えています。

 そこから12歳になると、事務所の方に「そんなにギターが弾けるなら、テイラー・スウィフトのようになれば?」と言われて、彼女のアルバム『Red』を聴いて衝撃を受け、それからのロールモデルはテイラー・スウィフトさんに。彼女のようなアーティストになりたくて、曲を本格的に作るようになりました。

ーー自作曲は、どんな作風なのですか。

かのう:体験を元に書くことが多いかな。特にイヤなことがあると、言えないことを歌詞にしてみたり。

ーーストレスのはけ口であり、日記みたいな感じ?

かのう:そうですね。Instagramで毎日日記を書いているし手紙も書くし、私、書くことが好きみたいです(笑)。

ーーテイラー・スウィフトを目指していたかのうさんが、なぜ『トロット・ガールズ・ジャパン』オーディションを受けることになったのでしょう。

かのう:子どものころから両親がレールを敷いてくれていましたが、中高生になるとやらされている感じがして、自分のやりたいことがわからなくなったんです。その気持ちをリセットするために東京に来たけれど、歌が楽しくなくなってしまって……。それでコロナを機に、音楽から離れたんです。でも離れるとやはり恋しくなって、TikTokで音楽活動を再開したらフォロワーがどんどん増えて、「私の声を好いてくれる人がいるんだ」と自信がつきました。TikTokでは両親の影響で好きになった歌謡曲も歌っていたのですが、それを見た『トロット・ガールズ・ジャパン』の運営さんからDMでオーディションのお誘いをいただきました。

かのうみゆ
かのうみゆ

かのうみゆ

ーーメンバーから見て、かのうさんはどんなシンガーでしょう。

太良理穂子(以下、太良):私はオーディションのエントリーナンバーがかのちゃんと近かったので、ずっと隣で見てきましたが、明るくて、ふわふわしてて可愛いのに、すごく想いが強い人という印象があります。先ほど「書くのが好き」と言っていたのを聞いて、やはりいろいろ考えているんだなと思いました。そんなギャップが歌にも表れています。

あさ陽あい(以下、あさ陽):発声がすごくストレート。歌詞もガッと届くし、ロックなビートがある。私にないものを持っているシンガーです。

MAKOTO.:うん、私にはないものを持っていますよね。何を歌ってもみゆの歌にできる。

かのう:ふふっ、なんか照れますね(笑)。

ーーMAKOTO.さんは、韓国の事務所で練習生をしていた経験もあるそうですが、歌手を目指したきっかけを教えてください。

MAKOTO.:子どものころから父の影響でホイットニー・ヒューストンさん、桂銀淑(ケイ・ウンスク)さん、The Three Degreesなどを聴いて歌手になりたいという夢を抱きました。

ーージャンルがバラバラですね。

MAKOTO.:はい。でも共通点は、歌がめちゃくちゃ上手いということ。歌が上手い人になりたかったんですよね。小学校のころに演技も始めましたがしっくりこなくて、歌のスクールに通うようになって。韓国人は歌が上手いというイメージがあったし、私自身、韓国にルーツがあり韓国語ができることもあって、K-POPアイドルを目指すために韓国の大学に進学しました。6年ほど練習生を続けてもデビューが見えなくて日本に帰国し、その後は日本でオーディションを受けたり、YouTubeでカバー動画を上げたり、ユニットを組んで日本武道館でオープニングアクトをやらせていただいたりしましたが、最終的には上手くいかなくて。下積みはあるけれど経歴がない状態が続いていたときに『トロット・ガールズ・ジャパン』をたまたま見つけたんです。トロットも知っていたし、何より年齢制限がなかったのがオーディションを受けたきっかけでした。

MAKOTO.
MAKOTO.

MAKOTO.

ーーメンバーから見て、MAKOTO.さんはどんなシンガーでしょう。

かのう:さっき初めてホイットニー・ヒューストンさんがルーツだと知りましたが、良い音楽を小さいころから聴いているから、まこちゃんは歌が上手いんだなと思いました。もちろんストイックに重ねてきた鍛錬が、今の彼女の歌を作っていると思うので、そこもすごくリスペクトしています。

あさ陽:うん。経験値もあるし、表現力もある。ストイックに頑張ってきたからテクニックもある。さまざまな曲をそのテクニックを使って歌いこなせるシンガーです。

太良:そう、ストイックでまっすぐでマジメだから、まこちゃんの歌や言葉が刺さるんですよね。「音楽表現が上手い人になりたい」って、目指している通りになってるね。

MAKOTO.:うれしい! でも、もっとたくさんの人に認めてもらいたいなという意欲があります。

ーー太良さんは、18歳からクラブシンガーとしてプロの世界で歌ってきたんですね。

太良:子どものころにテレビの音楽番組を見て音楽が好きになり、高校時代は地元・大阪のバンドで歌っていました。高校を卒業するときに、生バンドが入っている祇園のナイトクラブのオーディションを受けて合格して、友だちが進学する中、私は卒業してすぐキャリアもなく独学で歌の仕事を始めました。1カ月前まで自転車で高校に行っていたのに、いきなり夜の大人の世界に(笑)。有名アーティストのバックバンドをしているバンドマンや、東京でメジャーデビューしたことがあるシンガーなど、大先輩たちの中に入ってR&Bやジャズ、いろいろな音楽を知ることができたのは大きな経験になりました。居心地がいいし、お給料もちゃんともらえたけれど、安定を捨てて4年勤めた後で東京へ。銀座、赤坂、六本木、横浜のクラブで歌いながら、「海外のホテルのラウンジで歌うのもいいな」と海外留学を考えていたときに、歌っているお店のお客様に「韓国の歌謡曲のオーディション、『トロット・ガールズ・ジャパン』があるよ。歌謡曲歌っているなら受けてみたら?」と教えてもらったんです。

太良理穂子
太良理穂子

太良理穂子

ーーメンバーから見て、太良さんはどんなシンガーでしょう。

かのう:予選で見たときに、「魅力的な声だな」と思いました。海外に行こうとしていたんですね。社交性があるし、柔軟性もあるから、海外でも平気そう(笑)。

MAKOTO.:オーディションで「Mr.サマータイム」を歌った姿を見たときに、「この子、完成してる! R&Bシンガーだ」と思いました。最初に会ったときは、海外の人だと思いました(笑)。

太良:よく言われる。苗字も「タイラー?」って(笑)。

あさ陽:ソウルフルな歌声は私にはないので、オーディションのときに衝撃を受けました。sisになっても太良ちゃんの声はすぐにわかる。まこちゃんもだけれど、完成されているシンガーなんですよね。カッコいいです。

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