リアルサウンド連載「From Editors」第86回:年末年始の連休に展覧会に行かねば――その前に噛み締める『アレック・ソス』展

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

アレック・ソスが映し出す人の営み

 11月某日、東京都写真美術館の『アレック・ソス 部屋についての部屋』に行ってきました。

 『アレック・ソス』展では、60点ほどの写真を6つの章に分けて紹介。約30年におよぶ彼の作品を“部屋”をテーマに再構成した展覧会です。

 部屋=室内の写真がいちばんその人の在り方を示す。ソスは、「ポートレートや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」と語っています。その言葉に即すようにして、『アレック・ソス』展では、世界各地の人、それも部屋のなかの人をとらえた写真の数々が飾られています。家好き、部屋好き、インテリア好きの自分としては、ときめきパーセンテージは最高潮です。

『アレック・ソス 部屋についての部屋』

 ソスの写真として有名なのは、日本においてはやはり「VOTTEGA VENETA」のキャンペーン写真でしょうか。日本の渋谷周辺の公園で撮られた写真たちは色彩豊かで、アイテム、人間、遊具(それもとても派手目)、空を写したポートレート。『アレック・ソス』展に展示されてるのは、それとは違う写真かもしれません。

 しかし、そのどれもがあるアイテムと人を映した写真であるのは同じです。アパートという部屋を映した写真、ベッドのある部屋映した写真、夜景の浮かぶ部屋を映した写真、日の入る部屋を映した写真、テレビと男女ふたりのいる部屋を映した写真……。すべての写真に人がいて、すべての写真に何かの道具がある。余白とのバランスを見れば、それがソスの写真だとわかる作品ばかりです。20代の頃の作品、30代、40代、そして今。その部屋に暮らす人に焦点が当てられている。それは、そこに人がいなくとも、です。ソスは、人間を限りなく人間として写真に収める人なのだなあと、あらためて思います。

 図録ももちろん売っていて、4つの表紙から選ぶことができます。最新作『Advice for Young Artists』まで出品されていて、図録にも同様に収録されています。表紙を選べるのもおしゃれです。私はメインビジュアルでもある、「Anna, Kentfield, California.」を表紙に選びました(上手く写真が撮れずに載せていないのですが、親しみやすいボール紙調の図録はとても新鮮です)。

 いくつも行きたい展覧会があるので、年始の連休を使って早めに行こう、そして図録コレクションも増やそう――そんなことを考えている年の瀬なのでした。

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