2024.12.30 19:00

戦慄かなの「ちびっこに希望を与える曲を作れてない」　“4つ目の軸＝メジャー”を選んだ心境変化

文・取材＝つやちゃん、写真＝垂水佳菜

「ゴールデンボンバーくらい、みんなから愛されたい」

——これからメジャーで曲をどんどん出されていくと思いますけど、TikTokのヒットと、いわゆる音楽チャートとしてのヒットというのはまた全然違いますよね。そのあたりはどう捉えていますか？

戦慄：全然違いますよね。カラオケで歌われる曲を目指すということなのかどうなのか……やっぱりそれは「Iceblink」じゃ無理ですからね。あんなの私もカラオケで歌わないし（笑）。メジャーとかそういうチャンスって、実力がある人でもそうそう巡ってこない機会じゃないですか。だから私は恵まれていて、いろんな人の期待に応えてみたい。でも逆にね、これで頑張って、自分が思ってるほどうまくいかなかったら、スパッと諦められるとも思うんです。だから、ついにこの時が来たかという感じ。

——なるほど。

戦慄：やれるところまでやってみようかなと。

——メジャーで、自分が目指すのはこういうアーティストの立ち位置が近いのかも？　とイメージしている人はいますか？

戦慄：えぇー！　難しいな……。うーんと……ゴールデンボンバーになりたい（笑）。あの人たちくらい気さくでみんなから愛されたい。ちびっこに人気で。あとは、ジャンルは全然違うけど友達の眉村ちあきちゃんとか。なんか最近、ちびっこが喜ぶ歌っていいなって思うんですよ。この前、竹下☆ぱらだいすのライブに行ったら、ちびっこたちがすっごい踊って隣の人にタッチしたりしてて……私それ見てたら泣いてしまったんです。私はこうやって未来のあるちびっこたちに希望を与えるような曲を作れてない！　と思って病んじゃって……（笑）。

——でも、メジャーのアーティストだからこそ、今後かなのさんもそういった曲を作っていけるのかもしれない。

戦慄：いや、でも世の中の子どもに人気の曲を調べていくと結構親に媚びてる歌詞とかもあって、そういうのはやりたいわけじゃない（笑）。まあ、やりたいようにやって結果的に子どもにも好かれたらいいかな。

——その一方で、EP『hate p.a.r.t.y.(; ; )*.+.』もリリースされましたね。こっちはまたガラッと雰囲気が変わって、戦慄かなの節が全開で。メジャーの流通ではないですよね？

戦慄：そう、あれはインディーズ軸ですね。一応メジャー軸とインディ軸で別々に走らせてる感じです。でも今やらないといけないのはメジャーの仕事なので、今後は余力があれば、という感じですね。とはいえ悪魔のキッスもfemme fataleもあるし、インディ軸とか言ってられないかも……。

——音楽活動だけでも4つの軸があるという。

戦慄：あはは（笑）。どうしよう。

——そのインディ軸であるEP『hate p.a.r.t.y.(; ; )*.+.』は、sooogood!さん改めKohei Shimizuさんがプロデュースされていて、トラックも以前と比べて軽やかになりました。

戦慄：私は知らないトラックメイカーさんの曲をあさるのが趣味なんですけど、それで出会った人です。アルバム『solitary』の最後の「broken」という曲をプロデュースしてもらったのをきっかけに、今回もお願いしました。ケンモチさんとエレクトロなダンスミュージックやジャージークラブをやってきて、それはそれで良かったんですけど、最近はもうちょっと肩の力の抜けた曲をやりたくなってきたんですよ。

——ちょっと儚い感じのムードもありつつ。

戦慄：そうですね。あと私なりの可愛さも残したいんですけど、その「可愛い」のニュアンスが伝わるトラックメイカーさんってあまりいないんですよね。オスすぎると私の理想と外れていくので。Kohei Shimizuさんはぴったりです。1曲目の「wendigo」はヒップホップのちょっと治安悪い感じと可愛い感じを融合したくて、それがうまくできた気がする。

大森靖子からの提供曲に感激「すごい解釈一致！」

——12月6日には復活ライブも開催しました。femme fataleや悪魔のキッスの時と比べて、ソロのステージでは本来の戦慄かなのさんのキャラクターが一番ナチュラルに出ている気がします。ライブを終えて、いかがでしたか？

戦慄：ソロライブのMCは、ナチュラルではなくて間を埋めるために頑張ってやっているんですけど、でも悪魔のキッスとかfemme fataleよりは、言いたいことを伝えられてるかな。いつも暗い感じになっちゃうけど、この前はハッピーなライブになりました。もっと良いライブにできるなら、ソロのライブは続けていきたいと思いますね。

——あと、悪魔のキッスの「めろめろキャンセル♡x♡界隈」は大森靖子さんの作詞作曲ということでファンの皆さんが驚きました。久々に大森さんの曲を歌ってみて、どうでした？

戦慄：今までこんなに高いキーの曲はなかったので、悪魔のキッスの2人を使って実験されてる気分になって緊張しましたね。女2人のアイドルの曲で、オク下／オク上行き来するってあり得ないじゃん？　大森靖子さんの頭の中ではそういうビジョンがあったとしても、実際にやってみるとなんか違ったかも……となった時の申し訳なさがあるので、めっちゃ頑張りました。大森靖子さんの曲はやっぱり歌っていて楽しいし、悪魔のキッスに似合う可愛すぎない曲を作ってくださって、すごい解釈一致！　って感じで嬉しかったです。　