「和楽器バンドが消えることはない」10年分の感謝を届けた活動休止前ラストライブ 未来へ続く8人の物語
和楽器バンドが、活動休止前ラストツアー『和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS ~八奏ノ音~』のファイナル公演を、東京ガーデンシアターで12月10日に開催した。
本公演は、デビュー10周年のツアーファイナルという記念すべき日であり、同時に年内で活動休止に入る彼らにとって一つの区切りとなる特別な日でもあった。そんな夜を共に過ごそうと、平日にも関わらず、客席は老若男女さまざまなファンで満員に。中には和服姿の人々も多く見られた。
この日、和楽器バンドは全28曲(SE含む)という超ボリュームのステージを、約3時間半にわたって展開。和とロックを融合させた唯一無二の音楽性と、彼らのエンターテイメント精神の全てを込めた、魂のパフォーマンスを届けた。
ほぼ定刻に暗転。美しい紫色のペンライトの光が客席を埋め尽くす。優美なSEが会場に響く中、メンバーが一人ずつ登場。ポーズを決める度に大きな歓声と拍手が湧き起こる。ライブは「六兆年と一夜物語 (Re-Recording)」から幕を開けた。この曲は、今年10月にリリースされたベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』の一曲目でもあり、映写機の音とスクリーンに映し出されたセピア色のフィルムの映像が、これから表現される彼らの物語の始まりを想起させる。「和楽器バンドのライブへようこそ!」と黒流(和太鼓)が力強く叫ぶのを合図に8人の音が重なり、和楽器の華やかな音色と高揚感溢れるバンドサウンド、そして凛とした美しい歌声が一気に放たれる。これぞ和楽器バンドのライブだと言わんばかりのオープニングだ。
「今日は10周年の集大成! みんなで一つになって盛り上がっていくぞ、ついてこい!」という鈴華ゆう子(Vo)の煽りから、疾走感の中にも優雅な美しさが光る「Valkyrie-戦乙女-」、燃え盛る炎のような情熱的なバラードソング「生命のアリア」、和楽器バンドの1stシングル曲でもある「雨のち感情論(Re-Recording)」、デジタルサウンドも融合させ新境地を開拓した「Starlight(I vs I ver.)」など、多彩且つこれまでの歴史を感じさせる名曲を次々と披露。亜沙(Ba)はクールな表情を見せつつも長い髪を振り乱して熱い思いを音に乗せ、蜷川べに(津軽三味線)は、何度も笑顔で手を振り歌を口ずさみながらファンとのやり取りを楽しむ。
「地球最後の告白を」では、いぶくろ聖志(箏)の雅な音色と鈴華のあたたかい歌声から始まり、神永大輔(尺八)は尺八を振り回すステージングで観客をわかせながら柔らかな音色で楽曲を彩った。続く「月下美人」では、観客がスマホのライトで演出に参加。白い光の海は楽曲の儚く美しい世界観をさらに強め、感動的な光景を作り上げた。
この日のMCでは、“10年で一番○○だったこと”をテーマにトークを展開し、神永は「初武道館に尺八の先生を呼べたことが一番嬉しかった」、蜷川は「ファンクラブ企画でバンジージャンプしたことが一番スリリングだった」など、さまざまな思い出を語ったが、最後に順番が回ってきた黒流は、なんと自身の年齢が52歳であることを初公表。50代には到底見えない若々しさから、会場からはどよめきの声が上がった。
和をメインにしたパフォーマンスパートでは、「遠野物語九四」「遠野物語五五」を続けて披露。ステージで炎が燃え盛る中、町屋(Gt&Vo)のスラップギターと黒流の担ぎ太鼓による軽やかでパワフルな音に合わせ、鈴華が勇ましい剣舞を披露。さらに、いぶくろの白鷺(いぶくろ監修の文化箏)による繊細な音と、アグレッシブなギターサウンドの応酬が始まり、ボルテージがどんどん上がっていく中、鈴華は桜色の布と扇子を使って妖艶に演舞。日本の伝統を担うメンバーが集結した、美しくも鬼気迫るステージに、観客は誰もが目を奪われた。
続くバンドサウンドをメインにしたパートでは、「知恵の果実」を投下。亜沙、山葵(Dr)が激しいサウンドとリズムを刻むと、能面で顔を覆った町屋が切なく歌い上げるようなギターソロを奏でる。会場は、一瞬でロックの高揚に支配された。「焔」になだれ込むと和楽器も加わり、神永はステージ中央で激しく暴れながら尺八を鳴らし、蜷川もステージを自在に行き来しながら楽しそうに津軽三味線を奏でる。和と洋の垣根を鮮やかに飛び越え音楽に没頭し、観客を楽しませる彼らの姿に、改めて胸が熱くなった瞬間だ。